敬老の日が明け高市早苗氏を除く4人の候補者が出揃った。今回の総裁選挙は小泉・高市を軸に進むと考えられている。小泉陣営が先行したことで日銀が金利を引き上げやすくなったのではないかとの評価が出ているそうだ。そんな中で小泉進次郎氏の融和の内容が判明した。前回の反省を踏まえてリベラルよりと見られる政策を封印するのではないかとされている。
Bloombergによるとすでに名乗りを上げたのは高市早苗氏を除く4名。
小泉進次郎農相と林芳正官房長官は16日、自民党総裁選(22日告示、10月4日投開票)に立候補する意向を相次いで表明した。茂木敏充前幹事長、小林鷹之元経済安全保障担当相に続き、4人が名乗りを上げた。
自民総裁選、小泉農相が立候補の意向を表明-「党まとまる環境作る」(Bloomberg)
個人的には「加藤勝信氏が入るとなぜ保守になるのか」が疑問だった。さまざまな報道を読むと要するに小泉進次郎氏にはリベラル臭さがついているためそれを薄める役割が期待されているようだ。
Bloombergははっきりとリベラル色を薄めると書いているが、毎日新聞の佐藤千矢子氏も「夫婦別姓のような党内議論が分かれる論争からは距離を置くのではないか」としている。
石破総理の失敗とは何だったのか。それは総理・総裁になった途端に石破らしさが失われてしまった点にある。にも関わらずまたしても同じことが行われようとしている。
おそらく小泉進次郎氏に期待されているのは表紙の差し替えである。表紙を若返らせることで自民党は変わった・新しくなったと思わせたい。結果的に「小泉さんは古い自民党に早くも絡め取られてしまった」と思われかねないが、こうしないと党内競争に勝ち抜けないのだろう。
一方で小林鷹之氏は若者・現役世代への減税を訴え消費税減税について野党と話し合う姿勢を見せた。小泉進次郎氏は維新に接近すると言われているが、小林鷹之氏は国民民主党と協働したいのかもしれない。
この「若い二人」の路線の違いは次のようにまとめることができる。
- 小泉進次郎氏は自民党を支える高齢のおじさん・おじいさんたちが考える「若者像」を代表している。党員票の獲得には有利だが選挙には必ずしも有利ではない。
- 小林鷹之氏は自民党に期待しなくなった若者を引きつけようとしている。しかし減税が地方と高齢者への分配制限になると心配する高齢のおじさん・おじいさんには受けが悪いだろう。
個人的には林芳正氏の政策に期待している。結局のところ自民党を中心とした分配構造を再構築しない限り自民党に未来はない。林芳正氏は「林プラン」として物価高を上回る賃金上昇を目指す政策を提示するとしているそうだ。難点はこの政策は結局のところ岸田文雄氏と全く変わらない可能性が高いという点。いわゆる「林プラン」は後日発表になるそうだが要するに「岸田路線は失敗しておらず単に時間が足りなかっただけ」という結論になってしまうのかもしれない。
岸田総理の新しい資本主義も林プランも要するに宏池会路線の復活なのだと思う。これがなぜ現在では有効でないのかについて政策議論が深まれば良いとは思うのだが、おそらくそうはならないだろう。
お気付きの通り高市早苗氏がまだ出馬表明をしていない。推薦人集めに苦労しているという説を払拭しつつ、自民党からすでにこぼれ落ちてしまった保守の人々から高市コールが起きるのを待っているのかもしれない。
小泉進次郎・小林鷹之氏の政策を見ると自民党の支持者の期待と有権者の期待がズレていることがわかる。自民党内の融和を優先すると有権者の気持ちを引き付けることができない。一方で有権者の気持ちを優先させると自民党の党内政治を勝ち抜けない。石破総理は党の外にいたリベラル・左派の期待が大きかったが党内をまとめることができなかった。また高市早苗氏を支援する人たちもすでに自民党から流出してしまっている。
結局のところ、これまで自民党の私的なリーダー争いが次の日本のリーダーを決める選挙だと考えられてきたのは、自民党がある程度日本の世論を代表しているという了解があったからなのだろうが今はその前提が崩れてしまっている。自民党はもはや国民政党ではない。
