自民党の総裁選は小泉進次郎氏と高市早苗氏を軸に進むと考えられている。そんな小泉陣営の選対本部長に加藤勝信氏が就任するのではないかとする報道がある。時事通信は安倍氏に近い加藤氏が協力することで保守層の支持が集まるだろうと書いているが、むしろ財務省のアジェンダから外れないように小泉氏を抑え込むための布陣ではないかと感じた。小泉進次郎氏は言わずと知れた総理大臣の息子だが加藤勝信氏は加藤六月氏の娘婿である。血とイエが重要視されるという意味では解党的出直しどころか自民党の先祖返りが始まっていると言って良い。
時事通信が加藤勝信氏が自民党総裁選出馬を諦めて小泉陣営入りするのではないかと伝えている。曰く安倍総理に近く保守層を取り戻すことが期待されているのだそうだ。
この時事通信の分析には疑問がある。読売新聞が次の総理大臣にふさわしい人を聞いている。高市早苗氏が一歩リードしているが自民党支持者だけを見ると小泉進次郎氏のほうが人気が高い。つまり高市早苗氏に期待するような人はすでに自民党を支持していない可能性がある。石破総理を支援していた人が実は自民党支持者ではなかったというのと同じ現象だ。論理的に考えてすでに自民党にいない人の支持が「戻って」くるはずはない。
財政再建派の麻生太郎氏の小泉進次郎支持が喧伝されたところを見ると、小泉氏が消費税減税などを言い出さないように事前に加藤勝信氏を「お目付け役」に据えたと考えたほうが良さそうだ。加藤勝信財務大臣は石破政権においても消費税減税に極めて後ろ向きの発言を繰り返していた。
総裁選が始まる前から包囲網が敷かれているのだ。
小泉進次郎氏は言わずとしれた小泉純一郎氏の次男。つまり世襲議員だ。伝統的な自民党の考え方によれば政治家の格はその父親の格によって決まる。麻生太郎氏の祖父は吉田茂であり、安倍晋三氏の父親は安倍晋太郎外務大臣。菅義偉氏や二階俊博氏のような地方議員上がりは格の高い政治家の補佐役にしかなれないという身分制度がある。
加藤勝信氏は大蔵官僚だが、加藤六月氏に見出されて娘の婿にならないかと誘われた。伝統的な自民党の考え方では外から入ってきた人はいくら優秀でも信頼されない。政治家の家に婿として入ってこそ信頼が獲得できるのだ。
その意味では、自民党は解党的出直しどころか、血とイエしか信頼できない昔ながらの状況に戻りつつあると考えられる。危機意識が高まれば高まるほど防衛的な先祖返りが進むのである。
現在は自民党内で支持を固めつつある小泉進次郎氏が一歩リードしている状況だが、前回の総裁選では軽すぎる発言によりじわじわと人気を落としていった。今回は加藤氏ら重鎮がしっかり脇を支える必要がある。
同じ失敗は繰り返せない。