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チャーリー・カーク事件のその後 案の定分断を煽るトランプ大統領

11〜16分

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トランプ大統領を支持し若者に投票を呼びかけてきたチャーリー・カーク氏が殺された。容疑者の姿が公開されたがまだ捕まっていないそうだ。ABCニュースは政治的分断を恐れておりチャーリー・カーク氏は批判的な政治メディアとの対話も厭わなかったとしていたが、案の定トランプ大統領は全ては極左のせいだとして民主党批判に結びつけようとしている。国務省も問題の拡散を恐れており移民たちにチャーリー・カーク事件に反応すれば法的ステータスに問題が生じる可能性があると脅している。

トランプ大統領はこれまでも国防総省を戦争省にしたのは民主党諸都市からアメリカを取り戻すためだとしてきた。民主党政権が「野放しにしている」犯罪者をベトコンになぞらえたうえで解放のための戦争を煽ってきた。

このように政治家たちがカジュアルに戦争という言葉を使うようになると、当然それが当然だと考える人達も増える。特に若者が影響を受けているようだ。孤立した若者が自分の人生を振り返り「誰かのせいで自分の人生はめちゃくちゃになった」という確信を強めてゆく。そして豊富に手に入る銃火器を使って実際に学校を襲ったりするのである。このときにステートメントやマニフェストを残すのが一般的だ。

政治は「無敵の人」を量産し、銃を手に入れやすい社会は野放しになっている。

当然ABCニュースのようなメディアはメディアがこれ以上分断を放置するのは社会のためにならないと考え「殺されたチャーリー・カーク氏は対話に前向きな人物で民主党も共和党も等しくショックを受けている」とまとめていた。

しかしエンパシー(共感能力)に欠けるトランプ大統領にはこのような感性はない。チャーリー・カーク氏が殺されたのは極左勢力の言動によるものであると指摘したうえで民主党と暗殺を結びつけようとしている。

驚いたことに国務省も移民に対してチャーリー・カーク氏の問題に呼応すれば法的ステータスに影響が出るぞと警告している。MAGAも言動を先鋭化させているそうだ。トランプ政権とそれを支えている人たちの切迫したマインドセットがよく分かる。自分たちのやっていることが反発を受けるであろうということがよくわかっており協力ではなく分断と恐怖でアメリカ合衆国を統治しようとしているのである。

個人的にはこの政治状況がどこに向かうのかに興味がある。合理的に考えれば、とトランプ大統領の政策は結果的にトランプ大統領を支持した中間層を苦しめるだけだったと気がつくことを期待したいのだが、どうも各国の政治状況を見ているとそうはなっていないようだ。

首相が交代したフランスで大規模なデモがおきた。フランスには忘れられた人々が大勢いる。都市の忘れられた人々は左翼を支持する一方で地方では極右が受け皿になっている。彼らは今の政府は自分たちのためにならないと考えるところまでは一致できるがその後でどうするべきかについては一致点が見いだせない。

一方で多くの国民は忘れられた人たちには冷淡で、首相が何人変わろうが自分たちの生活は変わらないと考えているようだ。

結果的に忘れられた人々は「社会がめちゃくちゃになれば自分たちは振り向いてもらえるだろう」と考えるようになり、都市の交通を遮断する作戦に出た。kろえがすべてをブロックせよデモである。

一体このデモを組織したのは誰なのだろうかと思ったのだが、どうやらもとは右派系グループで発案されリーダーを持たないままで左派に引き継がれたようである。

今回の「全封鎖」の運動は、SNSで生まれたリーダー不在の緩やかな連合体。5月に右派系グループの間でSNS上に登場したが、その後は左派や極左に引き継がれた。

フランス各地で反政府デモ 道路封鎖や放火、警官との衝突も(CNN)

フランスの忘れられた人々にはまとまった受け皿がないので社会的不満だけが蓄積してゆく。彼らは次第に破壊衝動を持つようになり社会全体を麻痺させたいと考えるようになるようだ。

そう考えると今アメリカ合衆国で起きていることはフランス化の一歩手前ということになる。トランプ大統領はかろうじてアメリカ合衆国の忘れられた人々の受け皿になっているが、仮にこれがなくなってしまえば、あとに残されるのはまとまりのない運動体だ。すでにアメリカ合衆国には拡大自殺的な思想を持つ若者が大勢いて、銃も豊富に手に入る。

つまりトランプ後にどんな社会が作られるのかはなんとなく想像ができる。その意味ではABCニュースが当初持っていた懸念はおそらく本物ということになるだろう。このまま分断を放置すれば社会に取り返しがつかないダメージが加えられてしまうのである。

ここから先は察しのいい人たちには説明が必要ないだろうが、安倍晋三氏がかろうじて若年層の不満の受け皿になっていたのと同じ現象である。かつての若者の一部は高齢化したが怒りはそのまま受け継がれている。自民党は彼ら(一般的に派保守層と言われるが保守とは別のなにかだろう)の繋ぎ止めに失敗している。忘れられた人々は日本が外国に支配されるという陰謀論に夢中になっておりまとまった政治的主張を持たない。

こうした状況下で「SNSに合理性を取り戻しましょう」などと言ってみてもなんの意味もない。

アメリカ合衆国では新卒の人々が就職氷河期にさらされている。日本が1991年から1992年頃に経験したことが今起こり始めているが、当時の若者も眼の前で一体何が起きているのかがよくわかっておらず「個人の努力が足りないからだ」などと感じていたはずだ。