トランプ大統領の関税政策が行き詰まりつつある。雇用は大きな打撃を受け、同盟国との関係性も悪化する可能性がある。日本にとっては対岸の火事と見られていたが韓国の工場で摘発された「不法移民」の中に日本人が含まれていたことがわかった。
米国の雇用統計が年次改定を迎え、今年はトランプ関税の影響でモデルの誤差が大きくなり、91.1万人の下方修正が予想されている。この修正を巡り、統計局の責任者が解任される政治問題となり科学的良心に従うことが粛清につながる可能性も出ている。その結果、統計関係の上級職員約3分の1が辞職した。
トランプ政権下ではすべての問題が政治問題になる可能性があり現場が混乱している。
今回の工場摘発は韓国で動揺を引き起こしており、スタッフを派遣するとMAGA政治家の反感を買い、不法移民として拘束されるのではないかという懸念が広がっている。
日本人はこの問題に直接関与していると思われていなかったが、今回摘発された中に3人が含まれていることがわかった。トランプ大統領は問題に気づいたようだが、工場立ち上げ人員のビザ拡大などの具体的な対策は検討されていない。
ラトニック商務長官と赤澤経済再生担当大臣の説明の食い違いは解消されていない。ラトニック商務長官によると、日本が出資を拒否すると、過去の投資の回収は不可能になり、アメリカは関税額を自由に設定できるようになる。
当時、退陣要求が高まる中、石破総理は交渉の妥結を急いでいた。石破政権は成果をどうしても必要だったのだ。赤澤大臣は自民党内の状況を把握しておらず、岩屋外務大臣らと共に石破総理に辞任しないように説得していたとされている。追い詰められた状況下で、国益に沿わない不利な取引を結んだ可能性が高い。
しかし実際に日本政府がトランプ大統領退任までに5500億ドルの資金を提供できるとも思えない。出資した金が返ってこなくなる可能性があるのに民間が出資に協力することもないだろう。実際にどのようなディールがあったのかを精査してほしいところだがそもそも国会が10月4日以前に開かれる見通しも立っていない上に自民党は総裁選を通じてすべてをゼロリセットしてしまいたい方針。
次の担当者も「赤澤さんがどのような約束をしたのか」は詳しく説明できないのではないかと思う。
対ハマス交渉でご紹介したようにトランプ政権の交渉術はかなり場当たり的。また成功を過剰に宣伝し失敗を隠蔽したがる傾向がある。結果的に現場は疲弊し同盟国はトランプ大統領に対して不信感を強めてゆく。
