石破総理の発言が日に日におかしくなっている。国内では石破おろしが加速しているのだが石破総理の頭の中ではなかったことになっており秋の経済政策とトランプ大統領の招待に意欲を見せている。
ところが関税を花道に退陣するのかと聞かれると「一切関係はございません」と即座に否定する。
そんな中メディアは真剣に石破総理が自民党を崩壊に追い込むような解散に踏み込むのではないかと心配し始めた。東洋経済は早くも「無敵総理の死なばもろとも解散」というキャッチーなネーミングを付けている。
もともと憲法原案では議会の不信任案の対抗措置として内閣の解散権のみが規定されていた。しかしこれが次第に拡大解釈され国事行為を代行できる総理大臣が解散権を持つと曲解されるようになる。これが7条解散である。
議会の権限を制限する7条解散が議会から否定されなかったのはこれが与党の選挙戦略として都合が良かったからだ。ただし今回は事情が違う。自民党内の権力闘争の対抗手段として議会解散をほのめかす暴挙に出ている。
産経新聞は石破総理はかつて7条解散反対論者だったとしているが、これまで保守系メディアは散々邪道である7条解散を「総理大臣の伝家の宝刀」と煽ってきた。ご都合主義も甚だしい。
ただし解散の可能性を感じているのは産経新聞だけではない。日経新聞も読売新聞も解散について記事を書いている。
そんな中面白い読み物を見つけた。
東洋経済で安積明子さんが「“無敵の人”になりつつある石破首相、身内のはずの自民党が警戒する「死なばもろとも解散」の現実味」という記事を書いている。もう失うものがない「無敵の人」となった石破総理が死なばもろとも解散を選択するのではないかという。
仮にこの玉砕解散が選択されると推移は次のとおりになる。まず9月8日に前倒し総裁選が決まる。すると突然石破総理が議会を招集すると言い出す。自分たちを引きずり降ろそうとしていた議員たちは全員失職するので総裁選は行えなくなる。自民党内で選挙準備が整わない中で反対する閣僚を石破総理が罷免し内閣で議会の解散を決めてしまうというわけだ。
日本政治は不測の事態を嫌い予定調和を好む傾向にあるので、こんな「面白い」見世物が行われるなら見てみたい気もする。ただしおそらく自民党だけでなく与党も含めて選挙は大混乱に陥るだろう。
言うまでもなく現在野党筆頭の支持を集めるのは参政党だ。
懸念材料は2つある。
1つはガソリン減税の進捗だ。野党は代替財源を与党に求めている。巷では走行距離に応じて課税されるのではないかなどの噂が飛び交っているようだが与党は嫌われることを恐れて代替財源を提出しなかったようだ。現在支持率を最も獲得している野党は参政党なので減税要求が更に盛り上がる可能性もある。細かな内容がよくわからない有権者たちは参政党のメッセージに惹きつけられるかもしれない。
技術的なことがわかっている人は80兆円投資計画に対して「日本の将来をアメリカに売り渡すものだ」と考えるかもしれない。国民民主党の玉木代表は今回のディールを評価している。アメリカのトヨタが日本に対して車を売りやすくなる。日本の労働者などどうでもいいのだろう。
つまりどちらに転んでも石破自民党には有利な選挙にならない上に既存政党対新興政党という対立軸が生まれてしまう可能性もある。
石破総理が解散の名目に何を選ぶのかはよくわからない。
安積氏はアイディアを吹き込むなら山崎拓氏だと言っている。一緒に面会したのは政局にさほど興味を示さなかった小泉純一郎氏だそうだ。郵政民営化の反対勢力をパージし「自民党をぶっ壊す」としたことから政治とカネの問題で安倍派の一層を狙うのではないかとされているのはおそらくそのためだ。
しかし山崎拓氏の動機は麻生太郎最高顧問への嫌がらせである可能性が高い。小泉純一郎氏の息子の小泉進次郎氏には周囲の期待が集まるが本人はまだ態度を明らかにしていない。小泉親子は今回の政変にあまり乗り気ではないのかもしれない。
