このところトランプ大統領の不規則発言が減ったと感じている方も多いのではないか。実際にはSNSでの発言は続いているがいくつかの理由で露出が減っているのだ。
第一に内外の諸政策が行き詰まっている。多くのトランプ発言は記者会見の席で行われる。トランプ大統領は何らかの成果を示すために記者会見をやることが多い。つまり成果が出なければ記者会見そのものが行われない。
次に報道側が飽きてきている。ABCニュースはライブアップデートと称してトランプ大統領関連の発言をまとめて伝えることが増えた。
最後にそもそも意味がよくわからなくなってきている。当初から意味のわからない発言は多かったが更に最近ひどくなってきている。まずは英文を読んでみていただきたい。
“It is very important that the Drug Companies justify the success of their various Covid Drugs. Many people think they are a miracle that saved Millions of lives. Others disagree! With CDC being ripped apart over this question, I want the answer, and I want it NOW,” Trump wrote on his social media platform.
Trump admin live updates: Trump urges companies to ‘justify’ success of COVID drugs(ABCニュース)
英語を読んで「意味がわからない」という人のために和訳した。和訳しても意味がわからない。
製薬会社が新型コロナの薬を正当化するのは大切。多くの人が多くの人の命を救った事は奇跡だと考えている。他の人達は賛同しない!CDCはこの疑問に引き裂かれている。私は答えが欲しい、今すぐ欲しい。
このところロバート・ケネディJr長官とCDC幹部たちの間で泥沼の争いが繰り返されている。陰謀論を振りかざす長官に疲れた幹部たちが「科学的知見に基づかない決定には賛同できない」として辞任を表明した。トランプ大統領はこれをどう収めていいかわからないため「問題そのものを今すぐなかったことにしたい」のだろう。
ロバート・ケネディJr長官の主張は極めて単純なものだ。
ワクチンは嫌だ。公衆衛生にお金がかかるのも嫌だ。人々が健康な暮らしをすればコロナやその他の面倒な病気には罹らなくなる。だから合成着色料などを禁止しよう。
おそらく一般の人達には理解しやすい内容だろう。
アメリカ合衆国は詰め込み型の教育を嫌うプレゼンテーション文化なので「自分で調べて発表する」ことが重んじられる。しかしこうした教育が成り立つためには生徒が調べてきたものを適切に評価する教師が必要。教師のレベルは必ずしも高くないため「中途半端な自己学習」が増える。
給食などを通じた食育教育を重視しなかったせいでアメリカ人の栄養に関する知識レベルは非常に低かった。ミシェル・オバマ氏などは給食の啓発運動を行っていたがあまり広まらなかった。ミシェル・オバマ氏の活動が気に入らない食料品会社は「ピザは野菜であり健康に良い」という運動を展開した。オバマ政権に反発する議会は「ピザは野菜である」との判断を維持するように決定した。
現在その揺り戻しが来ており「栄養学の知識さえあればすべての病気はたちどころになくなる」という極端な考え方が広まっているそうだ。この運動は予算を削減したいトランプ政権にとっては「渡りに船」になる。
トランプ政権に批判的なAxiosはこうした人たちをMAHA(アメリカを再び健康に)と呼んでいる。
トランプ政権は良くも悪くも民意を非常に重要視する政権だ。しかし民意が不確かになると誰におもねっていいかわからなくなり結果的に混乱したメッセージしか残らなくなってしまうのである。
おそらくトランプ大統領自信も正しい栄養の知識は持っていないのではないかと思う。マクドナルドのハンバーガーが大好きでダイエットコークをがぶ飲みしている。クーリエは「トランプの食生活を実践した記者が唖然「彼が生きているのは不思議だ」」という記事を書いている。
読売新聞にもこんな記述がある。
トランプ氏は同社の炭酸飲料「ダイエット・コーク」の愛飲家として知られる。米メディアによると、大統領執務室に設置された赤いボタンを押すと、執事がダイエット・コークを運んでくるという。
ダイエット・コーク愛飲家のトランプ氏「介入」の結果…米国産サトウキビ使用のコーラ、今秋発売へ(読売新聞)
