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【誤算】インド嫌いのトランプ大統領が狂わせるインド太平洋戦略

6〜10分

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トランプ政権下でアメリカ主導のインド太平洋戦略が大きく乱れている。

アメリカからの圧力の高まりを受けてインドが中国に接近している。トランプ大統領はインドが主催するクアッドに出席しないと考えられており中国囲い込み政策は破綻寸前だ。

習近平国家主席はこの機会を最大限に活かし世界の外交を主導する中国を世界に印象付けたい。経済協力会議が終わると対日戦勝パレードで「ファシズムとの戦い」の継続が宣言されることになるだろう。

ではトランプ大統領はどんな戦略的な狙いからインドを敵視しているのか。The New York Timesが理由を解説している。

キューバ移民の息子であるルビオ国務長官は個人的な背景からキューバ政府を敵視。キューバと関係が深いベネズエラに軍事的圧力をかけている。このようにルビオ国務長官の戦略の動機はアメリカの国際的地位の向上ではなく個人的なルサンチマンに根ざすものである可能性が高い。

そんなルビオ長官がパキスタンとインドの軍隊に直接呼びかけて和平を実現したことがあった。両国政府の頭越しだった。The New York Timesによるとトランプ大統領は「自分が問題を解決した」と吹聴。この後モディ首相に連絡を取り「パキスタンは今回の件でアメリカ合衆国に感謝しておりノーベル平和賞に推薦してもいいと言っている」と暗にノーベル平和賞をねだったそうだ。これに怒ったモディ首相が「自分はトランプ大統領を推薦しない」と要求を突っぱねたために関係が悪化したというのがThe New York Timesの記事の内容である。

余計なおせっかいを押し売りしたところ相手が怒り出し結果的に米印関係が冷え込んだことになる。

日本では時事通信が報道しているがインドでも盛んに報道されている。

腹を立てたトランプ大統領はロシアから石油を買っていると言いがかりをつけてインドに高い関税を課した。一連の関税の大半は法廷闘争に突入。現在第二審を通過し下級審に差し戻しになっている。トランプ政権は最高裁に上訴するオプションがあるが仮に認められなければ関税は違法となり徴収されていた関税は払い戻しになる可能性がある。手続きは膨大なものとなり貿易も混乱するかもしれない。すでに個人扱いの小包の受け入れが停止されており市民生活に影響が出ているそうだ。

トランプ大統領のご乱心は中国にとっては外交的指導力を示す絶好の機会となった。ロシアのプーチン大統領などが中国主導の経済フォーラムに参加。未来志向の対話で盛り上がったところで「日本のファシズムに勝った」ことを祝う対日戦勝80周年パレードに臨む。

一方でトランプ大統領はインドに腹を立てておりインドで開かれるクアッドには参加しない意向だ。安倍総理の構想が元になっているとされるクアッドも存亡の危機に立っているが、これらの一連の流れはアメリカの国際戦略に沿ったものではない。ノーベル平和賞を欲しがるトランプ大統領の個人的な欲望が現在のインド・太平洋戦略を動かしている。

ただしもとをただせば東西冷戦が終わり日米同盟の存在意義が希薄化する中で変われない日本がアメリカを引き留めようとしたのが安倍総理のダイヤモンド構想だった。この時に対中強硬派の中国憎悪を利用しただけだったとも言える。つまりすでに日米同盟の賞味期限は切れており安倍総理はつかの間の時間稼ぎに成功しただけとも言えるのだ。

本来ならば日本の政治家たちは、今度こそこの新しい状況にどう対応するかを話し合うべきだが、自民党では未だに石破総理辞める辞めないというくだらない争いが続いている。

保守も自民党も事あるごとに骨太の国家観を語りたがる。しかし、現実は単に変化に震えているだけということがよくわかる。