先日トランプ大統領が就任後も債権を買い進めているというニュースがあった。利益相反に当たる可能性が高いそうだがトランプ支持者は問題視していない。
一方で利下げに応じないパウエル議長に圧力をかけるために理事の一人を「詐欺容疑」で告発しようとしている。先日連邦法執行機関の要因にサンドウィッチを投げて重罪で起訴された男もいた。トランプ大統領は議会襲撃をそそのかしても無罪放免だが市民はサンドウィッチを投げただけで重罪になる。
こうしたダブルスタンダードは様々な意味で大変危険だ。何が正しくて何が間違っているのか誰も明確に主張できなくなると政治的な万人闘争に発展する可能性が高い。
トランプ大統領がクックFRB理事の辞任を要求している。住宅ローンで不正があったという。FRBはこれに反論し「この手のことはみんなやっていますよ」と言っている。クック理事も辞任には応じない考え。
ただし、トランプ政権はクック理事をやめさせたいというよりもパウエル議長を屈服させたいという気持ちのほうが強いようだ。パウエル議長はジャクソンホールでスピーチを行うことになっている。その直前に圧力を加えてトランプ大統領に都合がいいスピーチを誘導したいのだろう。司法省がパウエル議長に書簡を送り「お前がやめさせろ」と迫っている。
トランプ大統領の蓄財はいいが「敵陣営」がローン申請を有利に進めようとするのは良くないというのは明らかなダブルスタンダードだ。世の中の善悪の基準が曖昧になれば社会不安につながりかねない。しかしトランプ支持者は自己正当化に忙しくダブルスタンダードは気にしない。
しかしながらこの辞任圧力はおそらくトランプ大統領の願いとは真逆の方向に進む可能性が高い。FRBがトランプ大統領に屈服し景気を過度に刺激する方向に流れるとアメリカのインフレ予想が高まる。するとそれにつられて長期金利が上昇し結果的にアメリカの財政を破綻させてしまうのである。
おそらくベッセント財務長官はそれがわかっており表向きはパウエル議長に圧力を加えながら議長が防波堤の役割を示してくれることを期待しているのではないか。
ベッセント財務長官がトランプ大統領の機嫌を取っているのは次の議長人事に介入してほしくないからだろう。仮にトランプ大統領に屈してしまう人が議長になってしまうとおそらくアメリカ合衆国の長期金利は上昇を始め「終わりの始まり」になってしまう。
ベッセント財務長官もパウエル議長もトランプ大統領に経済政策の基礎を教えることに失敗している。そしてこのことがアメリカ合衆国の財政の持続性にとっては極めて危険なのである。
