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鏡の国の大統領 なぜわたしたちはトランプ大統領が理解できないのか?

10〜15分

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このエントリーはトランプ大統領の言動が理解できない理由を考える。逆に言えばこれが理解できればトランプ大統領は理解しやすくなる。鍵になるのが「鏡の国」である。

我々は現実の世界を忠実に再現するのがリアリティショーだと思っている。しかし実際にはシナリオに沿って事実が組み立てられるのがリアリティショーだ。

Quoraでトランプ大統領が一転してゼレンスキー大統領の服装を褒めそやしたことが話題になっていた。ゼレンスキー大統領が何かを差し出したのだろうか?と指摘する人がいたので「原因はプーチン大統領ではないですか?」と返信した。2月に「ゼレンスキー大統領にはカードがない」と発言しておりその状況は変わっていない。変わったとしたら原因はゼレンスキー大統領以外のところにあると考えるのが自然だろう。

プーチン大統領はもともとオリガルヒを懐柔し今の地位を築いている。またウクライナの政治家たちに天然ガス利権をちらつかせて介入している。ティモシェンコ氏が政治的信頼を失うとライバルのヤヌコービッチ大統領に接近。結果的にヤヌコービッチ氏はロシアに亡命している。

その意味ではトランプ大統領もウィトコフ特使も不動産業のオリガルヒに過ぎない。アメリカのメインストリームに入れないが経済力を持っているというような人たちだ。

さてこれについて調べていて面白い記事を見つけた。今回、ゼレンスキー大統領の服装についてあるジャーナリストが「謝罪」をしている。この人は陰謀論を交えたトランプ大統領擁護論を振りかざすマジョリー・テイラー・グリーン議員のボーイフレンドなのだそうだ。

これについて更に調べるとCNNが「ホワイトハウスが親トランプ派の記者たちを仕込んでいた」と指摘する記事が見つかった。CNNは既存メディアとして既得権が脅かされることを懸念しているのだろう。このボーイフレンドも「仕込み記者」の一人だというのがCNNの指摘。トランプ大統領はこの謝罪に呼応する形でゼレンスキー大統領を褒めている。

Zelensky meeting shows how the White House has remade the press corps to Trump’s liking | CNN Business

我々の常識では政治家が意思決定しジャーナリストがそれについて質問すると言うことになっている。ところがトランプワールドではこれが逆転しており「トランプ大統領が書いたシナリオ」を正当化するためにジャーナリストが使われる。わかりやすく言えば政治そのものがリアリティショーであってトランプ大統領がシナリオを書いていると言うことになる。

そんなことを考えていて2月の会談で「大惨事」になった対ゼレンスキー大統領の会談でトランプ大統領が記者団に腹を立てて「面白いTVショーになっただろう!」と腹を立てていたシーンが思い浮かんだ。あれはトランプ大統領の仕込んだシナリオどおりに事が進まずトランプ大統領が立腹したのだと捉えることができる。トランプ大統領が本当に言いたかったのは「俺の準備したショーがめちゃくちゃになってさぞかし愉快なことだろうよ」だ。

トランプ大統領は「トランプ氏ノーベル平和賞への道」というリアリティショーを撮影中。これを理解しているプーチン大統領はトランプ・プロデューサの心をガッチリ捉えている。トランプ大統領がマクロン大統領に「クレイジーに聞こえるだろうが、彼(プーチン大統領は私とディールしたがっているんだ)」と説得した音声が残っている。「今、このタレントを抑えているんだ、今だったら視聴率が稼げる番組が撮れるぞ」ということ。

“I think he wants to make a deal. I think he wants to make a deal for me. You understand that? As crazy as that sounds,” Trump told Macron, appearing to refer to Putin.

Four key takeaways from Ukraine talks in Washington(BBC)

欧州首脳たちも状況を理解しており「アメリカが安全保障にコミットするならば和平会談は近いですよ」とのメッセージを送っている。そしてウクライナの和平にアメリカ合衆国が関与するという既成事実を作り始めた。ルビオ国務長官をトップにした会合がスタートする。ロシアはおそらくそもそも和平合意に応じるつもりはないだろう。ラブロフ外務大臣が「実務者会合が先だ」として三者会談には応じない意向だ。

一方でこれがショーだと考えると理解できることがもう一つある。ロシアは今もウクライナを攻撃し続けている。まともな人間であれば「プーチン大統領に和平の準備などない」とわかるはずだ。

しかしこれは単なるショーなのでトランプ大統領は現地の戦況には全く興味がない。つまりロシアは外交的に領土が奪還できないのであれば軍事的に奪還する道を選べばいいのである。

トランプ大統領は「いつかものすごい番組が作れるぞ!」と考えながらその道程を淡々とこなそうとするはずだ。