TVタックルで「小泉進次郎氏が次の総理大臣になれば維新と連立する」という説が出たそうだ。一方で高市早苗氏を総理大臣にしたい産経新聞は「橋下徹フィクサー説」を振りまいている。
誰もがムラの政治に夢中になっている。国際情勢が大きく変化する中でも日本人は「誰と誰が仲良しで」「誰が誰の後ろ盾だ」という旧態依然とした議論が大好きだ。
急速に変化する国際情勢に対応できないことはもちろんだが、分配に預かれず現在の政治が理解できない若年層が参政党などより過激な政党に流れる危険性をはらんでいる。
Yahooニュースで「東国原英夫氏「首相が小泉さんになったら維新とくっつく。高市さんは…」 ポスト石破の連立相手を推測」という記事を見かけた。なんだまだこんなどうでもいいことをやっているのか?と思った。そもそもTVタックルがまだ続いていたというのが驚きである。
記事の内容は小泉進次郎氏が総理大臣になれば維新と連携するであろうという予測になっている。理屈の軸は「どちらが安上がりか」である。国民民主党が提唱する減税議論よりも維新の要求のほうがコストが少ないのだそうだ。
イデオロギーよりも政治家同士の人間関係ばかりが注目されている。理屈は示されていないが遠藤敬さんが国対委員長になったのは維新が連立に意欲を見せたサインだろうと見られているようだ。
確かに吉村洋文大阪府知事は「石破政権とは組めない」と言っているだけで自民党と組めないとは言っていない。ただし今連立を組めば「ポスト欲しさに自民党にすり寄った」と言われかねない。そこで大阪の有権者の東京に対するうっすらとした劣等感を慰撫するために「これからは大阪も東京みたいな首都になれるんですよ」と言いたい。それが副首都構想だ。
ただこの遠藤敬さんの議論をバックアップする記事が見つかった。数日前の時事通信が「菅氏、秋政局へ両にらみ 「維新と連立」「小泉氏支援」」を出している。
表に出たことで心が大変傷ついたと見られる菅義偉元総理はかつて公明党(正確には創価学会にパイプがあったとされる)との個人的なパイプを武器に政権内で大きな力を持っていた時代を懐かしんでいる。安倍政権では何をやるにしても公明党の了解を取らなければ前に進めなかった。そして、菅官房長官はこのパイプを握ることで党内で影響力を維持していたのである。
そんな菅義偉氏が維新に接近しているという。菅義偉氏の新しいパイプは松井一郎氏のようだ。すでに森山幹事長に働きかけて遠藤敬さんとの連携を作っているそうだ。そして、この期待に応える形で遠藤敬氏は選挙対策委員長になった。つまり選挙区調整の責任者である。
党内の政権基盤が脆弱な石破総理は森山幹事長に離反された瞬間に「ゲームオーバー」になる。
なるほど「菅義偉・小泉進次郎・維新」と置くと様々なパズルのピースが組み上がるものだなあと感心させられた。
大阪維新としても「外様」である前原誠司氏を介して国会対策をやるよりも直接菅義偉氏とやり取りができたほうが何かと好都合だろう。
パズルのピースが埋まると、保守を再び取り戻したい産経新聞の記事の意味も見えてくる。産経新聞はメインの読者である保守を再び自民党に迎え入れたい。そのために彼らが押しているのが高市早苗氏である。今まではリベラルな石破総理を盛んに攻撃していたが小泉進次郎氏が躍進するのも困る。
そこで「維新の連立入りを画策しているのは橋下徹氏である」という説を出してきた。旧態依然とした「長老」の「院政」により新しい政治の枠組みが作られようとしているぞというわけ。
「いい加減にしてくれ」…維新で反発強まる「橋下院政」 新体制での挙党一致にリスクというタイトルで、吉村代表が橋下徹氏に操られて自民党と接近するのではないかと読み取れる内容になっている。
自民党の一部では明確な国家像を示すための総裁選挙をやるべきだという声があるようだが、そもそも大きな流れに興味がない日本人が「自分たちが稼げる枠組みをどう作り上げるか」という議論などできるはずもない。
日本人が個別の人間関係に興味を持つのは誰とお近づきになっておけば分配に関与できるかを知りたいからだろう。そのために背景にある人間関係を把握しておきたいのだ。
ところが冷静に考えてみるとそもそも現役世代はこの分配構造からは除外されており何にシルバー民主主義を支える「おサイフ」のような扱いを受けている。そんな彼らが魅力を感じているのが参政党である。
少なくとも今の政治議論を見ていると「おサイフ」が暴れ出さないように最低限のアメを与えて政治に興味を持たないでほしいというのが政治家の本音なのかもしれないと感じる。
