アラスカでのトランプ・プーチン会談が終わった。日本ではアメリカメディアに酷評されているという評価が出ているが、アメリカメディアはそれほど酷評していない。
理由は2つある。そもそも酷評に値する成果はなかった。また会談はまだ終わっていないと理解されている。ゼレンスキー大統領が18日にワシントンDC入りする。トランプ大統領はここでゼレンスキー大統領にドンバス割譲を迫る可能性がある。
確かに今回の会談はプーチン大統領の外交的勝利とみなされる。トランプ大統領は制裁を発動することはなく、プーチン大統領の立場に同情をさえ示した。アメリカとの関係が改善したことでロシアメディアは外交的勝利を大喜びしているそうだ。
トランプ大統領もプーチン大統領もメディアの取材に一切答えず発言に食い違いが見られた。その後「NATOとウクライナに何を語るのか」が注目されたのはそのためである。
読売新聞がThe New York Timesを引用して「ドンバスを割譲するなら侵略は集結する」と主張したと書いている。元の記事も「ヨーロッパ側の高官」の話を引用した短いものだった。
西側が注目しているのは、欧米はウクライナを防衛するがNATOの管轄下には置かないという点だった。まずはウクライナにドンバス地方を諦めさせたうえで戦線を固定する。ただしこの「ドンバス地方」がどこまでを示すかは明らかになっていない。一般的にはドネツクとルハンシクを意味する。
ロシアはドンバス地方をすべて軍事的に掌握しているわけではないのだから「現在軍事的に掌握していない地域を差し出す」事になりかねない。読売新聞によると要塞ベルト地帯と言われロシア軍が「取りあぐねている」地域だそうだ。仮にトランプ大統領(ウクライナを支援していることになっている)が執拗にドネツクの放棄を迫ることになればそれだけでプーチン大統領の勝利と言うことになるだろう。
一方でプーチン大統領はウクライナでロシア語を公用語に戻すようにと働きかけている。そもそもプーチン大統領はウクライナという国はなくウクライナ語などないと考えている。まずは膠着している戦線を「国境線」として固定した上で、内政干渉や軍事的プレッシャーをかけてウクライナを併合してゆくつもりなのだろう。
そもそもウクライナは核兵器放棄と引き換えに得たブダペスト覚書で守られていることになっていたがロシアはこれをものともせずウクライナ侵攻に踏み込んでいる。またその後のミンスク合意も破られている。現在メローニ首相が主導する「NATOのような」枠組みが検討されているそうだが、アメリカのコミットメントは不明確。仮にNATOと同じでいいのならNATOのような枠組みを作る必要はない。
ゼレンスキー大統領は18日にワシントンDC入りしトランプ大統領と会談することになっている。一対一の会談では間違いなくアメリカ側に一方的に攻め込まれることになるためヨーロッパの首脳が付き添うことになっている。
