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ChatGPTといっしょに考える「ベッセント財務長官が日銀に利上げを強要」問題

12〜19分

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さて、今日はエミンVS永濱というプレゼンテーションをご紹介している。

結論が出るわけでもないプレゼンテーションを紹介したのは、ベッセント財務長官の話題に接続したかったからである。ベッセント財務長官が植田総裁に直接注文をつけた。日本政府の頭越しに外国の財務大臣が中央銀行に指図するなどあってはならないことだが、そもそもベッセント財務長官がなぜそんな事を話しそれをテレビで吹聴したのかが全くわからない。

そこでChatGPTに聞いてみた。ChatGTPは推論を交えてその意図を解説してくれている。

ベッセント財務長官が植田総裁と話をして「インフレ対策が後手に回っている」と指摘したという。これは石破総理や加藤財務大臣がパウエル議長に「アメリカの経済をうまくコントロールできていないようだね、なんとかしたまえ」と苦言を呈したというのと同じことだ。

ベッセント財務長官は表向きは日本がインフレを抑制できていないことを問題視しているようだ。だが実際に何が問題になっているのかはよくわからない。日銀の問題とFRBの問題はどこでどうつながっているのか?

市場はベッセント発言に反応し国債の売りにつながった。また金利差が縮小するとの予想から円が上昇し史上最高値だった株価が下落している。

Bloombergの記事を読むと「ベッセント財務長官はドル安を誘導しているのだろう」という見方をする人が多いようだ。しかし、為替誘導のために他国の中央銀行の総裁と話をしたなどとわざわざテレビで吹聴するものなんだろうか?という気もする。

そこでChatGTPにきいてみた。

ChatGPTは断片的な情報と経済情報を組み合わせて「破綻がない」シナリオを提示している。おそらくこのときにかなりの数の推論を回しているはずである。

  1. ベッセント財務長官はFRBに利下げを要求している
  2. アメリカが利下げになると資金が他国に流れることが予想される
  3. 特に日本経済は回復傾向にあるため日本に流れやすい
  4. ベッセント財務長官はこれを防ぎたかったのだろう

ここまでの議論を聞いてもやはり何だかピンとこないが事前にエミンVS永濱の議論を整理していたので「ああ長期金利なのか」と感じた。ChatGTPは推論は得意なのだが直感的な絞り込みは苦手。このあたりはまだ人間が補足してやる必要がある。

アメリカ合衆国政府はFRBに対して短期金利を下げるように要求している。しかし市場の判断次第ではこれが却って長期的な金利の高止まりにつながる可能性がある。長期金利の高止まりはアメリカ合衆国の財政を毀損するため手を打たなければならないと感じたのではないか。

エミンVS永濱の議論では日銀もFRBも市場の流動性を確保することで株高を支えているとされている。これが正しいとすると日銀は「物価上昇」に後追いする形でしか金利を上昇させることはない。賃金上昇は日銀の担当分野ではなく政治の問題だ。

現在、日本の政治の世界では「物価対策」が求められているわけだが、実は日銀こそが物価上昇を作り出している可能性が高い。これが理解できている政治家と理解できていない政治家がいるのではないか。

インフレ=物価高=経済成長は同じこと。単に人間の解釈の違いだ。だが、現在の政治家の多くはこれが理解できていない。アベノミクスで停滞の中の安定が長く続いたため具体的にインフレのある世界が想像できない。

「政治家と話をしても仕方がない」と植田総裁が考えていたとしても不思議ではない。これはベッセント財務長官やパウエル長官も同じことだ。トランプ大統領が経済と金融を理解できるとは期待していないのではないかと思う。

ところが日本が成長軌道に乗ってしまうのはアメリカにとっては非常にまずい。日本はこれからも自分たちの成長を犠牲にしてアメリカの経済成長を支える国であるべきだ。そこで植田総裁と直接話をして「日本が成長軌道に乗るのは好ましくない」と伝えたことになる。これは日本の国益に沿わない。

経済の専門家は「ベッセント財務長官はドル安を誘導しているのだろう」と見ているようだがChatGPTは推論結果「アメリカからの資本逃避の防止」という結論を導き出した。

これが「正しい」かは今後のベッセント財務長官の発言次第である。少なくとも例の81兆円ファンドの話は「市場がアメリカ合衆国に流動性を提供できなくなった場合には政府が流動性をアメリカに差し出せ」と迫ったものと理解できる。つまり関税政策が行き詰まりアメリカに流動性不安が起きたときにアメリカ側が過去の約束を盾に日本に犠牲を迫ってくるのかもしれない。

ChatGPTはどうやってそのような結論にたどり着いたのか。短い記事の断片に経済・金融の知識を組み合わせたそうである。どのようにしてこれを実現したのかはわからないがおそらく多岐にわたるシナリオのうち論理的に破綻しないものを機械的に選んでいるのではないかと思う。ただし直感的なジャンプは起こさないので人間が補ってやる必要がある。

この、将来に検証が必要な推論から得られる知見は多い。

  • アメリカ合衆国の財務長官はアメリカ合衆国の財政の持続可能性をかなり心配している。
  • そのため自国や外国の中央銀行総裁に直接金融政策について意見することも厭わない。
  • 日本はこれまで自国の経済を犠牲にしてアメリカ合衆国に貢いできた。
  • この動きは簡単に逆流する可能性がありベッセント財務長官もそれを理解している可能性がある。
  • 日本の成長とアメリカ合衆国の成長は両立しない可能性が高い。

実際に機関投資家の間では割高感が増すアメリカ株を離れてヨーロッパや日本に投資する動きが広がりつつある。

日本人は「アメリカ人に指図されて当たり前」と考えているようだが、本国ではかなり批判されたようだ。ベッセント財務長官はその後で「財務長官としてFRBに金利引下げを要求したわけではない」と釈明に追われている。

財務長官が中央銀行に「意見する」ことはアメリが合衆国の債務危機がかなり差し迫っていることを意味する。つまりそれだけ必死だということだ。少なくとも市場がそのような受け止めると短期金利の低下と引き換えに長期金利が上昇する状況が生まれかねない。

繰り返しになるが、日本の政界から今回の踏み込んだ発言についての見解は一切聞かれない。日本の政治はおそらく植田・日銀が何を考えているのか理解ができなくなっているのではないかと思う。

現在の日本政治は「物価高対策のバラマキのために財政を拡大する」か「財政再建を優先する」のかの極端な二者択一に陥っている。インフレ=経済成長自体には色がない。これに対応できる企業や個人が増えれば「良い経済成長」になり対応できない人が増えると「悪いインフレ」になる。

日本の政治家は悪いインフレを良い経済成長に変える知恵を発揮できていないようだ。