9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


エミンVS永濱 アメリカ経済がハードランディングする可能性について考える

14〜22分

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先日YouTubeでエミンVS永濱という対談形式の番組を見た。なかなか興味深い内容なのでまとめがてらご紹介することにする。なおこのエントリーを読んでも「なにかはっきりした知見が得られる」訳ではないことは最初にお断りしておく。むしろ疑問を洗い出して情報の整理のために利用すべきではないか。

おそらく司会者が入念に準備をしていないからだと思うのだが、トピックがあちこちに広がりとりとめがない。このためメモを取りながら構造を分析する必要がある。ただ内容自体は非常に面白いと感じた。

この番組は実は2つのことを同時に話している。1つはシステムクラッシュの話。もう1つは日本・アメリカ・ヨーロッパの株価が今後どうなるかの話である。これらが整理されないままなので内容が非常にわかりにくい。

世界経済はやがてクラッシュする

世界経済はやがてクラッシュする。その震源地になるのがアメリカ合衆国である。プレゼンテーションを通しで見ていただくとわかるのだが、いたるところにこの話が出てくる。と同時にエミン・ユルマズ氏が「日経平均はやがて5万円台ですよ」などというので「ということはこれはバブルなのではないか?」と考えたくなる。

つまりまず「やがてクラッシュする運命の世界経済」と「今後数年で起きること」を分解しないと話が理解できなくなる。アメリカが中心となってゲームを支えることができているうちは良いがそれができなくなったときにすべてが破綻する。問題は後何回リセットボタンが押せるかである。

実はこの話を理解するためには「長期金利と成長率」の話を理解する必要がある。ところがプレゼンテーションには図解が一切出てこない。

永濱利廣氏はアメリカの潜在成長率よりも長期金利が上回っているためアメリカ合衆国の財政は持続可能性がないと言っている。ChatGPTに聞いたところ、これはr>gとして図式化することができるという。

ChatGPTによると

  1. アメリカ合衆国とイギリスはr > g。格差が拡大し政府財政は持続可能性がない
  2. ヨーロッパはr = gだが均衡は不均衡。
  3. 日本はr < gなので政府財政は持続可能。しかしこれはアベノミクスで日銀が国債を大量保有しているからである。そして日銀が国債を大量保有し続けるためにはインフレが2%以下(つまり日本経済が成長しない)という前提が必要。

ということになるそうだ。特に3番目は「減税」と「財政再建」の議論のためには重要だが、おそらく政治はこれをうまく理解できていないか理解するつもりがない。

日経平均は今後5万円台に突入する

機関投資家はすでに多極分散へ

すでにお伝えしているように機関投資家はアメリカ合衆国の株価を割高と考えており多極分散を行っているようだ。またヨーロッパに「アメリカに頼ってばかりはいられない」と言う空気があり財政拡大余地のあるドイツなどに期待が集まっているという。トランプ大統領就任以降株価が好調だと語られていた。ユルマズ氏は確か3割上昇といっていた。実際には3割には届かないようだが2025年5月9日にDAXが最高値を更新しているという。そんな中で日本の株式にも期待が集まり株高になっている。

この議論は日経平均が予想を超えて大きく上がった理由を必ずしもうまく説明できるわけではない。

想像で補うと、外国人が「順張り」で株を買うと「乗り遅れてはいけない」と考える日本の投資家が追従し株価が大きく動くのかもしれない。外国人は儲けが出ると利益確定のために売ってしまうので今度は「やはり上がりすぎたのでは」として日本の個人投資家が売ってしまうということになる。日本の株式市場はかなりボラティリティが高い状態になっている。

そう考えると「みんなが買っている株を買いたい」と考える人は高値で株を買い安く売っているのだからかなり損をしているのかもしれない。

永濱利廣さんは5万円セオリーには懐疑的

エミン・ユルマズ氏は日経平均が3万円ボックスを短期間で抜けたことから今回の4万円ボックスを抜ける可能性が高いと見ている。一方で永濱利廣氏は為替調整の可能性を考えており5万円にタッチするというエミン・ユルマズ氏の考えには否定的。見解の違いは為替相場の見方に起因する。

司会者は「また答え合わせをやりましょう」などと不敵な笑みを浮かべていた。

日本は景気後退期だがこれは悪い話ではない

日本は現在景気後退の入口だという考えでは一致しているようだ。これは順当な景気後退であり実感が難しいものになるだろうとの見解もほぼ共通しているようである。

日経平均上昇が示すように関税の影響は軽微にとどまっている。実は今のうちに景気調整が行われたほうが後々都合が良いと言うことになるのかもしれない。今の景気の落ち込みは「やや中途半端」ということ。

アメリカの経済が不確実になっているため2026年3月期の企業業績は良くないことがわかっている。しかしながら景気後退が軽くすめばこの後2027年に向けて業績が上がってゆく。トランプ大統領は中間選挙に勝つために思い切った景気刺激策を打つだろうという期待もある。

やはり問題はアメリカ合衆国

やはり問題はアメリカ合衆国のようだ。

現在アメリカ合衆国では政府がFRBに強い利下げ圧力をかけている。ところが短期金利の下降が却って長期金利の上昇を招く可能性がある。中央銀行に依存した放漫財政不安が生じかねないからである。

永濱利廣氏は次のようなシナリオを想定する。これが最初のプレゼンテーションの表題になっているのだがやや煽りすぎという気もする。

  • 関税政策による景気減速が軽微に終わる → 関税はそのままで日本にとってはあまり良い結果にならない。
  • 関税政策がアメリカ経済に打撃を与える → トランプ大統領は関税政策の撤回を余儀なくされる。これは日本にとって良い結果。
  • 関税政策がアメリカ経済に打撃を与えそれが深刻する → リーマンショックのような騒ぎが起き、日本経済は大きな打撃を受ける。

つまりアメリカ合衆国が「適度にハードランディングしたほうが日本には都合が良い」ことになる。

トランプ大統領はアメリカ市民が関税を負担することになるとするゴールドマン・サックスのCEO発言に反発している。現在アメリカ国民は関税の22%を負担しているがこれが67%にまで上昇するだろうと言っている。つまり関税の影響は不可避と言うことになる。市場が信じるのはトランプ大統領ではなくゴールドマン・サックスであり、ベッセント財務長官もおそらくそれがわかっている。

一方でベッセント財務長官はFRBに強い圧力をかけ、日本銀行の金融政策にも口出ししている。市場がこれを警戒すればFRBが調整できない長期金利の高騰なども可能性としては考えられなくはないということだ。つまりシステムクラッシュかそれに準じる何かが起きる可能性はそれなりにある。本来なら日欧米が協調して対応したいところだがトランプ大統領が在職している限りそれは不可能だろう。国際協調が苦手な上に「負け」を認めるような動きは見せないはずだ。

この2つのプレゼンテーションで「決定的に何がわかるか」ことはないわけだが、一通り聞いた後で「わからない」と考えるところを補うと頭の整理ができる。時間のある時に情報を整理してみると良いかもしれない。