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トランプ大統領が「アメリカ例外主義」をスミソニアン博物館に指示

11〜16分

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当ブログの保守批判は要するに「自己補償のために誇大な国家に依存することの危険性」を訴えている。しかしながら日本人はおそらく「しょせんはアメリカに負けた国」という自意識を持っておりどこか屈折も感じさせる。ではそうした屈折がない国はどうなるのかということが気になる。それぞれが「われこそは特別だ」と口々に叫んでいる人間動物園のような混乱が生じることになる。

トランプ大統領は「バイデン大統領はバカであり自分が大統領になればウクライナの戦争をすぐに止めることができる」と考えていた。彼にとって問題の解決は極めて簡単。

ウクライナが領土を諦めればいい。

ところがトランプ大統領の提案は「力による現状変更の是認」につながる。ヨーロッパ首脳たちはベルリンにベルリンに集まりゼレンスキー大統領とともにロシアに絶対に譲歩しないようにと働きかけた。

誇大な自己愛を和平によって満たせないと考えたトランプ大統領の関心は国内に向かう。

まずは全都市のホームレスの追放だということになった。特に民主党都市が諸悪の根源だと考えられておりお膝元のワシントンDCを皮切りに全国展開を目指しているのもと考えられる。

現在のホームレスはアメリカ合衆国の行き過ぎた格差の結果である。しかしトランプ大統領は軍隊を差し向けて追放すればいいと極めて単純に考えている。

この偏った考え方はリベラルの反発を招き「その次は政敵に銃口が向かうのではないか」という強い警戒心を呼び起こしている。実際に国防総省は「市民騒乱」対応部隊を検討しているのではないかと言われている。

次に彼は歴史に着目した。スミソニアン博物館に展示物の改造を求めている。「アメリカ例外主義を称賛せよ」と言っている。アメリカ合衆国は神に選ばれた例外的な国であって自分の価値観に合わせて一枚岩であるべきだというわけだ。

トランプ政権高官はスミソニアン協会のロニー・バンチ事務局長に宛てた12日の書簡の中で、調査の目的について「米国の例外主義をたたえ、分断的あるいは党派の偏る表現を排除し、我々が共有する文化機関への信頼を回復させる」とした。

トランプ米政権、スミソニアン博物館に見直し通告 大統領の見解に沿った展示の徹底へ(CNN)

昨日のABCニュースに2つの銃撃事件に関する報道があった。

1つは新学期の準備に忙しい家族で賑わうショッピングセンターでおきた銃撃事件。3名が亡くなり無差別殺傷事件と見られている。容疑者は自分はキリストであると主張していて聖書を抱いて全裸で発見されたそうである。警察は「容疑者は自分はキリストだと意味不明な事を言っていて動機については語っていない」としている。

もう一つはCDCで起きた。容疑者は自分が鬱病で自殺傾向があるのはコロナワクチンの影響だと主張しているそうである。長官がワクチン陰謀論を振りかざす中で職員たちは次は自分たちが狙われるのではないかと怯えている。

特に最初の事件は困窮し孤立化した若者が「自分だけは特別な存在である」と自己妄想を膨らませ「自分は何をしてもいいのだ」と考えるようになったものと見られる。CDCのケースは社会的な助けが得られない若者が混乱した頭で自己探索を行いついに「真実にたどり着いた」ものと考えてよいだろう。

CDCの事件は非常に痛ましい。容疑者は父親の銃を盗んで犯行に及んだものと見られているのだが、父親は弱々しい声で3回も警察に助けを求めているという。しかしながら警察が懇願する父親の願いを聞き入れることはなかった。

そもそも本当にアメリカが特別な国であればわざわざ博物館まで作ってアメリカ例外主義を逍遥する必要などない。本当に自分がかけがえのない存在だと考えるならば「自分はキリストのような例外的な存在であって何をしてもいい」ということにはならないだろう。

だが、銃火器が蔓延し、混乱した個人が公衆衛生の助けを得られない状況が定着したアメリカ合衆国の市民たちはもうどうすればこのような痛ましい問題を解決できるのかがよくわからなくなっている。アメリカの医療制度はおそらく世界一の水準だが公的医療保険制度が貧弱であり誰でも平等に医療にアクセスできるわけではない。

問題の複雑化は長い間二蓄積したものなので中にはトランプ大統領のような強い大統領が強力な権限を発揮して魔法のように問題を解決してくれると期待する人も出てくるのかもしれない。

誇張された「自分は特別だ」という認識は個人の危機感の補償であると考えるべきだろう。しかし誇張された自己が問題を解決することはない。日本の保守と呼ばれる人たちが「日本の誇り」を強調すればするほどその裏にある「落ち込み」が影として浮かび上がる。欠落感を解決するためには影と実直に向き合う必要がある。自分自身の問題に向き合うのは難しいのだが、アメリカを鏡とするとその事がよく分かる。

とはいえ、トランプ大統領の例外主義と極端な殺人事件を比べるべきではないという人も少なからずいるのではないか。これはトランプ大統領個人の資質の問題であってアメリカ合衆国全体の問題ではないというわけだ。

カリフォルニア州のニューサム知事がトランプ大統領の投稿を真似した投稿を行っている。トランプ大統領はテキサス州知事に区割りを変更して下院の議席を5つ増やすように働きかけている。これに抵抗するためにニューサム知事はトランプ大統領のスタイルを真似した投稿を出しているのだ。アメリカを守る戦いが始まった!と主張することで、極端な共和党に対抗できる自分を売り込もうとしているのだ。

トランプ大統領は自分こそが分断主義を是正できると主張しているが、実際には自分が分断主義の結果であり、分断を助長しているとは気がついていない。そして民主党も頭に血が上っており「そっちがその気ならこっちにも考えがある」と主張している。どちらも自分たちこそ正しいと考えておりそれを仲介する人もいない。

危機感を背景にした「補償」としての誇張された自己像の結果は混乱と破壊なのである。膨らみ続ける自己像には落とし所などないと我々は知るべきだ。

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Comments

“トランプ大統領が「アメリカ例外主義」をスミソニアン博物館に指示” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    Youtubeとかに存在する日本礼賛動画も、日本が弱くなっている裏返しですが、初期は日本を褒めたたえるだけの内容が、だんだんと過激になって他の国(アメリカ・中国・韓国など)を貶めながら日本を褒めたたえる動画が増えているので、満たされていない日本人が増えたんだなと思いました。
    そういえば、昔は自国の自画自賛系の記事は所謂「ホルホル」とネットでは言われて嘲笑されていたなと思い出しました。あの頃は、未来がこうなると思っていませんでした。

    1. バブルが弾けた後にSAPIOなんかが右傾化し、更にリーマンショックのあとで雑誌保守が盛り上がった印象です。昭和の日本人論の時代には「日本人はもっとうまく合理的にできるはずだ!」みたいな論調だったので、やはり自信をなくしたことの裏返しなんでしょうね。