日本では赤澤経済再生担当大臣の主張と大統領令が食い違っていたとして話題になった。外交に間違いなどあるはずはないのだからトランプ大統領が土壇場でひっくり返したのではないかなどと囁かれていたが実際に「事務方のミス」である可能性が出てきた。
時事通信がアメリカの当局者が修正に応じたと伝えBloombergも同様の記事を出しているが、どちらも事務方がミスを見つけたという表現になっていない。
信義則を重要視する日本のビジネス界には反発が広がっており、日経新聞はトランプ流詐術に感情的に反発する記事を出している。
こうしたドタバタによって金融市場が大きく反応する事例も出てきているようだ。一時金の先物相場が大幅に上昇し大統領府が修正対応を余儀なくされている。
時事通信とBloombergの記事は対日関税について大統領令に「間違いがあった」と示唆する内容だが事態は我々が想像するよりもずった悪い状況になっているようだ。金に対する政策が報道されると金の先物相場が動揺しホワイトハウスが釈明に追われるという騒ぎになっている。
アメリカの株価は絶好調。投資家たちは将来不安よりも今の企業業績に一喜一憂している。しかしながら内容を細かく分析すると消費を牽引しているのは一部の富裕層だけというかなり歪んだ状況になっているそうだ。
これを裏付けるように資金は米株からMMFなどの金融商品に逃避しつつある。また米株の優位は崩れ国際株に追い風が吹いているとも伝わる。株価を牽引しているのはプロの機関投資家ではなく個人だということになる。
こうなると企業業績やヘッドラインニュースによって株価や金融市場が大きく変動することが予想される。
今回の金の先物相場が大きく動いた。ニューヨーク先物とロンドン現物の価格差が125ドルにまで拡大したそうだ。
アメリカ合衆国はスイスから金の地金を輸入している。スイスの大統領はサッチャー首相をロールモデルにしている強面の女性。トランプ大統領はシュッとした男性政治家(オバマ元大統領やトルドー元首相)などが嫌いだが、自分に意見してくる女性政治家も大嫌いである。このためスイスに対してはいじめに近いような高い関税が課せられている。このような背景があり「トランプ大統領がスイスと国際市場に打撃を与えるような意思決定をしたのではないか」と報道されたのである。
実際にこれが誤情報なのか、金融市場の反応に驚いたホワイトハウスが後付で誤情報と主張したのかはもう誰にもわからない。重要なのはトランプ大統領は思い込みに基づいたメチャクチャな意思決定を下すと市場が理解しているという点なのだろう。いずれにせよ慌てたホワイトハウスは今回の報道は「誤情報だった」と釈明する会見を開くと発表された。
赤澤経済再生担当大臣は「今回の大統領令は事務方のミスによって起きた」と説明しているがこれに対して懐疑的な見方が広がっていた。さすがにラトニック商務長官が大統領令の内容を知らないはずがないという専門家もいた。
合意文書を作らなかったのは「アメリカの官僚システムはそれなりにしっかりしている」という前提のもとに「そうは言っても細かい内容ももれなく最終成果物に反映されるだろう」という見込みがあったからのようである。
だが実際にはそうではなかった。
時事通信は修正を伝えとしている。Bloombergも「重複適用を見直す」としており、修正が行われることは確実になったようだ。ただしどちらの記事にも事務方が赤澤経済再生担当大臣に謝罪したとう言う表現は見られない。むしろクレームに対応してやったという内容。
当局者だけでなく閣僚の間に手柄争いがあり「お互いに騙し合っている」などとも言われている。また大統領は記者会見にしか興味がなく自分がどんな意思決定をしたのかがよくわかっていないのではないかと思えることがよくある。多くの交渉を同時並行的に進めてきたラトちゃんことラトニック商務長官も「いちいち細かい内容は把握できていなかった」のかもしれない。
これまでは「アメリカ合衆国は日本に対して信義に基づいた付き合いをしていない」と表現してきたが、そもそもアメリカ合衆国の内部の意思決定プロセスがめちゃくちゃになっており金融市場はそれをそもまま織り込んでいるということがわかる。
だからこそ日本側は最終合意だけではなく途中成果を書き物として残し内外に正当性をアピールすべきだった。信義則が成り立たない世界で身を守るためには当たり前の処世術である。
一方でトランプ政権の杜撰さに振り回されている日本のビジネス界には反発が広がっているようだ。日本の社会では相手との間に信頼関係があることが重要視される。
日経新聞が「トランプ流の詐術」という強い表現でトランプ大統領の手法を感情的に批判している。
