ネタニヤフ首相のガザ完全占領計画が承認された。これまで後がないネタニヤフ首相が極右と組んで暴走し始めたというような書き方をしていたのだが、これは必ずしも正しくないということがわかった。
内容を読めば読むほど曖昧さが残る。結果的にイスラエル軍が実際に何を行うかを見なければどんな決定がなされたのかよくわからないという状況になっている。
AxiosがIsrael’s Cabinet approves new plan to occupy Gaza Cityという記事を書いている。この中に「戦闘地域外の民間人に人道支援を提供する」という項目がある。また計画は「ハマスを掃討した後でアラブにガザの統治を引き渡す」という一文が含まれる。
極右閣僚たちはガザの人々に人道支援など与える必要はないとして閣議決定に反対票を投じたようだ。
Axiosはアメリカ人や西側社会などに向けてイスラエル政府の考え方を紹介する「広報」のような役割を担うことが多い。今回の報道も「イスラエルは世紀の人道犯罪に向けて暴走しているわけではない」と示す狙いがあるのかもしれない。
またREUTERSはAxiosの記事を引用して「完全占領には触れず主張が後退したようだ」と評価している。
一方でBBCはネタニヤフ首相は、最終的には極右閣僚たちの言いなりになってしまうのではないかと懸念を示している。ネタニヤフ首相の動機がイスラエルの救済ではなく自身の政治的延命にあるとすればこの見方には一定の合理性がある。
極右政党「ユダヤの力」のイタマル・ベン・グヴィル国家安全保障相と、「宗教シオニズム党」のベザレル・スモトリッチ財務相は、ガザ地区からのパレスチナ人追放を公然と擁護しているが、これは民間人の強制移動に該当し、戦争犯罪にあたる可能性がある。また、両氏はガザ地区へのユダヤ人の再定住を主張している。
【解説】ネタニヤフ氏のガザ完全占領計画、イスラエル国民や友好国を分断(BBC)
当初、イスラエルはガザ地区の75%占領を目標としていたが、BBCによると現在の占領地は2/3(66.6%程度)だそうだ。この残った地域を占領するためには数万人規模の兵士の追加投入が必要になる。国際社会に一定の配慮し南部に住人を移動させるという難しい計画になっているため軍部は根強い反対論がある。
トランプ大統領は今回の作戦を黙認するようだがヨーロッパもこの計画に納得しておらず、ドイツは武器の輸出停止に踏み切ったと伝わる。
今回のイスラエルの計画はガザ地区をパレスチナ政府(日本などのG7加盟国を除いていて国家承認されている)から引き剥がすという内容。当然パレスチナ政府は激しく反発しアラブ諸国に対して対処を呼びかけているとAl Jazeeraは伝えている。
