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【ようやく気がついた】アメリカは日本と信頼関係を構築するつもりなどない

10〜15分

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関税交渉の内容が次第に明らかになった。日本政府の説明は結果的には虚偽であって一部の品目には高い関税がかけられることになりそうだ。自動車関税の協議も全くうまくいっておらずこのままでは2.6兆円の利益が吹っ飛ぶ試算が出ている。国税にも大きな穴があき国民負担は増える。また自動車産業に依存する地方自治体の税収も大幅に落ち込むだろう。

ただこれは必ずしも悪いことではないのではないかとも感じる。

まずトランプ政権の考え方を見てゆこう。半導体に100%の関税がかけられることになった。ただし……と条件がつく。Appleはホワイトハウスで大型投資を発表しトランプ大統領に手柄を差し出した。このようにトランプ大統領に手柄を差し出した企業は関税が減免される事になっている。

トランプ大統領は関税という懲罰をほのめかすことで相手を動かそうとしている。共感によって人と結びつくことができないため恫喝と取引を用いるのである。

同時に相手が騙すと考えている人は当然自分も騙すつもりがあると言うことになる。

このためトランプ大統領は何度プーチン大統領に騙されても気にしない。一度はプーチン大統領に対して強い嫌悪感を示す発言を行っていた。しかし、関税による恫喝によってプーチン大統領が取引に応じたことでいそいそとアメリカとロシアの間の会談に傾斜している。プーチン大統領は民主主義に強い嫌悪感を持っており相手を騙すことしか考えていない。おそらくトランプ大統領はこの先何度もプーチン大統領に騙されることになるだろうがそんなプーチン氏との取引に強い興奮を感じているように見える。信頼よりも「騙す騙される」の関係のほうを好ましいと考える人なのだろう。

この基本構造を理解しなければ新しいアメリカ合衆国と付き合うことはできない。

アメリカ合衆国は日本と信頼関係を結ぶつもりがないと聞くととても悪いことだと感じる人が多いはずだ。だがそうではない。そもそもトランプ大統領はそういう関係しか結べない人だ。日本人はそんな国と取引をしていると知る必要がある。ありもしない希望は毒にしかならない。

そしてテレビで関税交渉の内幕が明らかになるにつれて日本人全体が新しいアメリカ像を認識しつつある。

今回の石破政権の関税交渉は結果的に大失敗だった。赤澤経済再生担当大臣は「ラトちゃん」との信頼関係の構築を優先した。それ以前にも安倍総理がやったようにトランプ大統領と石破総理が個人的な信頼関係を構築すべきであるという意見があった。これらはすべて幻想だった。確かにラトちゃんはいい人かもしれないが意思決定には関与していない。赤澤経済再生担当大臣はベッセント財務長官にも会おうとしているがベッセント財務長官も意思決定には携わらない。

ただし仮に石破総理が交渉をしなければ日本人は「そもそもアメリカ合衆国は日本との信頼関係構築など望んでいない」と気が付かなかっただろう。その意味では我々は重要な気づきを得たと言える。

今後はこれを「良いこと」にしなければならない。

日本政府は合意内容が違っており官報は間違っていると主張している。小泉農林水産大臣は牛肉関税は41.4%にはならないとしているそうだ。しかし書かれた合意文書はないのだからこんなことを言ってみても仕方ない。今のアメリカ合衆国はトランプ大統領の思い込みが憲法秩序さえ凌駕している。トランプワールドはトランプ氏の思い込みを中心に回っており「事実」とやらにはなんの価値もない。

共同通信によるとすでにトヨタは4-6月期の利益が36%減っている。また2026年3月期の予想では純利益を44%失うという。自動車メーカー7社の2.6兆円の利益が消失する見込みとなっている。国家税収にも影響は出るだろうし、自動車メーカーに税収を依存している企業には壊滅的な影響が出るだろう。

しかしながらトランプ政権はおそらく自動車関税を容易に引き下げないのではないか。現在日本の自動車メーカーは関税分を負担している。アメリカ合衆国の市民ではなく外国の企業が関税を支払うというトランプ大統領の主張は日本の自動車産業については正しかった。

合理的に考えるならば自動車の価格を上げて市民の反発を喚起すべきなのだろうが、日本の自動車メーカーにはそのような戦略的思考はなさそうだ。アメリカの小売はトランプ大統領を刺激しないようにしつつ関税分を価格に上乗せすると言っている。こうすることで有権者にトランプ政権はあなたの財布に優しくないというメッセージを送っている。

トランプ大統領は逆に選挙区の区割りを変更し共和党州に工場を持ってくることができるように日本をATM化しようとしている。このATM化計画はヨーロッパでも反発されているようだ。トランプ大統領が電話を一本かければ石破政権はトランプ大統領にお金を差し出さなければならない。契約はないがトランプワールドではとにかくそういうことになっており、これこそがアメリカの「事実」である。

なお赤澤経済再生担当大臣は今回の事態をそれほど重要には受け止めていないようだ。これくらいの極楽トンボでなければどのみち失敗することがわかっていた交渉は担当できなかったのかもしれない。ご本人としてはおそらく洒落たジョークをかましたつもりだったのだろうが、冷静に考えて滑っているようにしか見えない。

さて、最後に「これで石破総理の失敗が浮き彫りになるだろうか」と考えた。

Quoraで聞く限り「石破総理は事故に巻き込まれただけ」という同情論が根強い。このあたりの世論の動向は今後の政局にも大きな影響を与えるのだろうが、石破おろしの風は思ったより小さなものになるのではないかと感じる。

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