タイ暫定首相が「このままでは戦争になるかもしれない」と言っている。この戦争はタイ軍部に旨味があるため本当に戦争になるのかもしれない。
タイとカンボジアはある寺院の帰属を巡り長年紛争を繰り返してきたが、カンボジアが寺院を世界遺産登録したところから紛争が激化していた。
しかしタイが今カンボジアに戦争を仕掛ける理由はよくわからない。戦争は金がかかる上に国民生活への犠牲も大きい。現時点でもカンボジアとタイの間の国境が封鎖されており顕在的な打撃は大きいはずだ。
いずれにせよ戦闘が激化しカンボジアがタイのコンビニにロケット弾を打ち込み民間人の死者が出た。タイ側はF16戦闘機を送り込みカンボジア軍の拠点を攻撃している。紛争は2日めに突入した。
どちらがどんな理由で戦争を仕掛けるのかはよくわからないが、結果的にタイの軍部に取っては有利な展開だ。タイの軍部は新しい国王と結託し政権を掌握したが国民からの人気はない。特に地方の人達はタイ中央部とは違ったアイデンティティを持っていてタクシン家を応援している。タクシン家は華僑だがタイ国王に認められた新興富豪でありポピュリスト的な人気がある。
ところが今回の一連のいざこざでタクシン家の首相がカンボジアのフン・セン前首相と近しい関係にありタイ軍部を悪く言っていた電話の内容がリークされた。
この電話の内容は「タクシン家は所詮カンボジアの味方である」と支持基盤に示す狙いがあると考えてよいだろう。Bloombergは「今選挙をやればタクシン家の影響力は削がれ軍にとって有利な展開になるだろう」と予想している。
今回の戦争は外に敵を作り内政を有利に進める狙いがあると考えると意図が読みやすい。
国内状況を打破するために戦争を仕掛けると言う行為はロシア、トルコ、イスラエルが採用している21世紀の流行り病のようなものだがタイもこれに乗ったのかもしれない。
タイの暫定首相は「このままでは戦争になるかもしれない」との見通しを示したそうだ。各国が盛んに仲介に入っているが動機が国内の統制だと考えると本当にインドシナ戦争に発展するかもしれない。
