悪い夢を見ているような一日だった。毎日新聞とTBS系列が石破総理は関税を花道に退陣するようだと報道。これを受けて総理大臣と総理経験者たちの会合に注目が集まる。ところが石破総理の口から出てきたのは「そんな話は出ていません」という否定だった。
一部週刊誌では世紀の大誤報ということになっているようだが毎日新聞は当初の姿勢を維持している。週刊誌によると読売の号外はメルカリで高値で取引されているそうだ。
TBSも「自民幹部」の話として関税合意を受けて退陣するとしていた。
関税の話題で触れたように、現在日本が話し合う問題は2つある。まずアメリカ合衆国が同盟国を保護する意思を失っている。さらに日本は将来成長のための原資をアメリカに売り渡してしまった可能性がある。この2つの事実を前提に緩やかな衰退の道を選択するかあるいは成長路線を取るのかを決めなければならない。成長路線を取るならば日本が売り渡した種籾の代わりをどこから持ってくるのかも決める必要がある。
アメリカ合衆国では貧富の差が開きつつある。低所得者転落を恐れる中下層の人々のために仕事を斡旋しなければ、アメリカ合衆国の政治基盤はこのまま破壊されてしまうだろう。このためアメリカ合衆国は同盟国との共存共栄路線を捨て海外に流出した製造業をアメリカに引き上げることを選択した。
アメリカ合衆国がこれまでが日本を支援してきたのは中国やソ連のような共産主義と対峙するために自由主義社会の成功例が欲しかったからだ。日本はこれにフリー・ライドしていたがアメリカ合衆国にはもはや日本を支える余裕はない。
だから日本は自活する道を選ばなければならない。だが、石破政権は次世代の原資である種籾を売りわたしてしまったのではないかと思う。少数与党状態の国会はぜひこの問題をきちんと審査する必要がある。野党は止めようと思えば問題があるディールを止めることができるのだから仮に将来に禍根を残す問題を見過ごせば共犯ということになる。
自民党政権はそもそもアベノミクスを通じて問題の先延ばしを図ってきた。氷河が溶けるようにインフレが始まると氷漬けになった問題が次々と明らかになってきているのだが、自民党は単に時間稼ぎをしていただけで出口についてはなんら決めていないことが明らかになっている。
有効な議論構造を提示されない有権者は参政党やれいわ新選組ような「お気持ち政党」に引っ張られマントラのように税は財源ではないと大合唱を始めた。
局面打開を図った自民党幹部は「石破総理が関税を花道にして辞めるってよ」と噂を流した。これに危機感を持った石破総理は総理大臣経験者の長老たちと会合を開く。長老たちは厳しい表情でシェークスピアの悲劇役者のように退場し、石破総理は「退陣論など話し合われたことはない」と宣言している。ただデイリーは麻生氏はギャングファッションだったと言っている。
もはや自民党幹部には将来的なビジョンについて考える余裕はない。自分たちの権力を維持するためにはどう立ち回ればいいかで頭の中がいっぱいになっている。そしてそれを決めるのは長老たちだ。
この極めて安手のシェークスピア悲劇は「自民党は選挙結果などどうでもいいと思っているのです」という宣言になっている。青年局には「石破退陣コール」が渦巻いているが執行部は懇談会でお茶を濁したい考え。議決権はなくガス抜きだと受け止められている。
ただし野党の党首たちも「15%関税とは上出来だ」とか「いやいや0ではなかったらかがっかりだ」などと言い合っている。戦略的視点を持たないと言う意味では石破総理と五十歩百歩。25日に関税について協議する予定にしているようだが石破総理は「色々込み入った問題が多く説明できない」としている。本当に理解していない可能性もあるが、ジタバタと嘘を重ねて状況を誤魔化してきたこれまでの経緯からなにか重大なことを隠しているのかもしれない。
今回のファンドについて国会が議決権と監査権を持っているのかが気になるところだが、仮にそれがないとすると「報復関税を覚悟で将来の種籾を守るのか」という問題が出てくる。石破総理以外のリーダーたちはおそらく意思決定はできないのではないかという気もする。今のメンツを見ているとそこまでのガッツがある人がいそうには思えない。
毎日新聞がだめでも他の新聞がなんとかしてくれるのではないか思ったのだが読売新聞はとにかく保守票を取り戻せと言っている。保守の票さえ取り戻せれば後はともに貧しくなってゆけばいいということなのかもしれない。
