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【小さな内戦】アメリカの移民摘発の現在地

11〜16分

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Quoraで移民摘発についての記事を投稿してくれた人がいた。このところ移民摘発について扱っていないのでこの際に参考情報をまとめておこうと考えた。せっかくQuoraでもまとめたのでブログにも転載しておく。多くのニュースはすでにABCニュースまとめとしてお伝えしている。

投稿された記事は「無差別な摘発が行われており接見も制限されていた」というもの。連邦地裁がこれをストップしているがトランプ政権は控訴することにしている。

この「無差別」という表現は実は部分的に正しいが部分的には正しくない。実はスペイン語を話すヒスパニック系の人を選択的に(つまり差別的に)狙っているそうだ。ただ特に審査をするわけではなく「不法移民っぽい」人を無差別に捉えて収容施設に入れている。つまりエスニック・クレンジング(民族浄化)のようなことをやっている。

Axiosでは裁判所が無差別摘発を制限したがトランプ政権が控訴する意向というニュースになっていた。

2024年までは人権擁護の筆頭だったアメリカ合衆国だが今ではエスニッククレンジングまがいのことをやっている。だが、これは「民意」に基づいた選択。TBS問題について触れた中で天賦人権はイデオロギーであり簡単に覆されると書いたが、その根拠はアメリカで起きている変化にある。

連邦最高裁判所は下級裁は行政に介入すべきではないという判断を下しているため今回の控訴においても最高裁の判断に注目が集まる。

トランプ政権の農家急襲はトランプ大統領を支える農業関係者から強い反発を受けた。このためトランプ大統領は農家への摘発はやめると宣言した。しかしこれが面白くない国境管理の責任者のトム・ホーマン氏は「大麻農場なら良いだろう」とカリフォルニアの大麻農場を急襲した。関税問題でも閣僚たちはトランプ大統領と連絡を取らず「これが受けるだろう」と考えて交渉をしているようだが、当然移民問題でも同じようなことが起きている。結果が出ればそれでよいだろうと言う考え方なのだ。

この急襲ではICEに対する発砲事件が起きており懸賞金がかかっている。ICEが強硬に対応すると抵抗運動が激化するといういたちごっこになっている。更に農夫に死者が出ており全米農場労働者組合(UFW)が抗議声明を出している。

テキサス州では独立記念日に収容施設が急襲された。現在11名の逮捕者が出ており12番めの男には懸賞金がかかっている。確かに移民摘発は行き過ぎだがだからといってそれを暴力で解決していいはずはない。一体どちらを批判すればいいのかがよくわからなくなってしまう。

背景には「移民は危険だ」と信じ込んでいる人達がいる。アメリカではテレビ局はもはや信頼されておらず、ラジオやポッドキャストなどの情報を下に政治の意思決定をする人が増えている。

本日のTBSの報道特集批判を読んだ人は「安全なところからテレビ局批判をしている」と感じた方もいらっしゃるかもしれないがアメリカの状況を踏まえるとテレビ局や新聞が有権者の信頼を失うことがいかに危険かおわかりいただけるのではないか。

どうやらトランプ政権は敵を外に作り支持者をまとめるために移民摘発運動を進めているようである。トランプ政権は「ワニのアルカトラズ」と呼ばれる施設を作った。

本格的な収容施設を作るには長期間必要だろうと思いこんでいた。このためこれから建設されると言うニュースだと思ったのだが、今回読んだ記事には記事には8日で作ったと書かれている。環境が劣悪で弁護士の接見も難しいような場所に移民を閉じ込めたい。このときに移民を「アメリカ社会に対する破壊者であり劣悪な環境に留め置かれて当然」と言いたいのだろう。わざと劣悪な環境に粗末な施設を作りゴミを捨てるようにして送り込んでいるのだ。

トランプ政権は富裕層減税を進めるために中低所得者の暮らしを犠牲にしている。だが、移民というわかりやすい敵を置かれるとそれだけで満足する人が出てくる。これもTBS報道特集問題で取り上げたが「左派リベラル運動の失敗」はそのまま国民の権利縮小につながるということがわかる。これは将来起きるであろう問題ではなく実は今ここにある危機なのだ。

さらにトランプ大統領は有名な司会者のロージー・オドネルさんの市民権を剥奪すると脅している。

オドネルさんは現在アイルランドに住んでいる。名前もアイルランド系なのですっかり帰化市民だと思い込んだのだが、コメント欄で「オドネルさん自身はアメリカ生まれ」との指摘をもらった。トランプ大統領は政敵化しつつあるイーロン・マスク氏(南アフリカ出身でアメリカ帰化市民)の追放を仄めかしているがついにアメリカ市民に対しても「国籍を剥奪するぞ」と脅し始めたことになる。

実はこうした常識を遥かに超えるような不合理なことが毎日のように起きているため、もはや一つひとつの問題が「どうでもいい些末なこと」に見えてしまうのだ。

と同時に今回まとめていて「おそらく日本ではこうした問題はほとんど認知されていないのだろうなあ」とも感じた。既存メディアが信頼を失った社会がどんな悲惨なことになるのか。その危機感はおそらく共有されていないのだろう。

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