最近「パワーワード」に凝っている。AIO時代に対応するために必要なスキルなのだそうだ。「衝撃」もパワーワードの一つだが余り引っ張ると怒られそうなので最初に書いておく。
同盟国などに送りつけた書簡は実は全部コピペだったそうだ。
日本に対する通告書はあまりにも失礼な内容だったがそこからトランプ大統領の意図を読み取ろうとする人がいる。だが実際にはあの文書は同盟国にコピペして送りつけられたものだった。更に関税期限についての説明も二転三転している。まとまった考えがないと判断するのが最も妥当なのではないかと思う。
時事通信がトランプ大統領の書簡の全文を掲載している。本文(文面じたいはかなり丁寧だ)はそちらを確認していただくと良いと思うが、思い切って意訳してみた。
いいかよく聞け。アメリカは世界で最も魅力的な市場だ。我々は親切にも外国に広く門戸を開いておりパートナーシップを継続するつもりがある。自分たちはフェアに貿易をしようとしてるがもう我慢の限界だ。お前たちの努力は全く足りていない。今回の関税額はたった25%だがお前たちのしでかしたことに比べればまだまだ低いんだぞ。いいか心得違いをするな。報復など考えようものならわかっているだろうな。関税額がどうなるかはお前らの心がけ次第だ。いい返事を期待しているぞ。
この通告書に対してテレビの評論家の中には「トランプ大統領の真の狙いが隠されている」などと解説している人がいた。
「なるほどそうなのか」と思い、では他の国にはどんな内容が送りつけられていたのだろうか?と調べてみることにした。外国との違いがわかれば日本に対するトランプ大統領の考え方がわかるというものだ。あるいは識者が語るように日本に対する隠れた温情が見いだせるかもしれない。
韓国に対する通告書が見つかった。ところがなにかおかしい。日本と似たようなことが書かれている。というか、全く同じだ。
そう考えて時事通信の記事を読み直してみたのだが「関税率は国ごとに異なるが、他の記述は宛先を除き同じ内容だった」と書かれている。
非常に失礼だと言うのはもちろん主観なのだが「ああ、この失礼な手紙を文面使い回しで送っていたのか」と衝撃を覚えた。
日本側は自動車問題が解決しなければ包括合意はないとしている。ところがトランプ政権は自動車や鉄鋼などを非常に重要な「聖域」とみなしているためおそらく日米交渉はまとまらないだろう。
ただ「雑さ」はこれだけではなかったようだ。AxiosがTrump says August 1 tariff deadline is firm, hours after saying it wasn’tという記事を出している。和訳するとトランプ大統領は関税の期限は8月1日で確定したと言っているが一時間前にはそうではないと言っていたとなる。
おそらく関税の期限は決まっていないと思う。このためトランプ政権が何を考えているのかをまとめるのにとても苦労した。
まずベッセント財務長官は今後72時間で駆け込み合意が増えると示唆した。つまり7月9日で関税税率がフィックスするだろうと仄めかした。ところが別の記事では7月9日に決定するわけではないと示唆している。更に大統領も関税の発効を8月1日に延長する大統領令に署名している。
要するに7月9日までに交渉がまとまらなかったために焦って期限を延長したが、焦ったように見えると国内に対する体裁が良くないために「8月1日から発効する」という表現変えたように思える。
REUTERSによる最新の情報では「8月1日の関税期限に「変更なし」、トランプ氏再表明」となっている。今度こそ変えないぞと言っている。佛の顔も三度までなのか、二度あることは三度あるなのかはよくわからない。
トランプ大統領は支持者たちを落胆させないために同盟国に対して極めて強気の声明を出したことになるが、あまりにも失礼な文面をコピペで送りつけられた国の人々がどう感じるかにまでは頭が回らなかったようだ。もはや同盟国に対する配慮を示す余裕を失っているのかもしれない。
