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プロレスか政治内戦か ロスアンゼルス暴動が泥沼化


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ICEに抗議する移民のデモが泥沼化している。ついに政治内戦状態に発展しカリフォルニア州のニューサム知事が「逮捕できると言うならとっとと逮捕してみろ」とトランプ大統領に挑戦状を叩きつける状態になっている。

今回の「暴動」はホーム・デポ(アメリカの有名なホームセンター)の噂がきっかけになっている。実際に摘発はなかったため自然に出てきた噂なのか誰かが何らかの目的で焚き付けたのかはよくわからない。

結果的にトランプ政権の思惑通りに物事が進んでいる。ニューサム知事ら民主党は何もしていないばかりか「反アメリカ」的であると批判された。ついにはニューサム知事を逮捕すべきだという声も上がっている。ニューサム知事は次の大統領選挙において民主党のスターになる可能性があるため共和党としては早めに潰しておきたい。

ニューサム知事はやるならやってみろと挑発し返している。

さらにトランプ政権が掲げる「一つの大きくて美しい法案」こそがアメリカを「犯罪集団である移民」から守り抜く唯一の手段であると宣伝されている。

敵と味方というわかりやすい構造を作り大衆を引き付ける。トランプ大統領が大好きなプロレスから学んだ手法なのかもしれない。

【解説】 トランプ氏が待ち望んでいた政治的な戦い 米ロサンゼルス抗議デモに介入(BBC)

トランプ大統領はアメリカ国内を「親アメリカ」と「反アメリカ」に分断しようとしている。今週末にはトランプ大統領の生誕を支える大規模な軍事パレードも予定されており、トランプ大統領の権威強化が行われることになっている。

だが、返り咲き後は同じ姿勢を取ることを拒否。中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領といった強権的な指導者が好んで使う演出に傾倒する姿勢を示している。中ロ両国とも、戦車や弾道ミサイル、兵士による軍事パレードで武力を誇示することで知られており、歴代の米大統領はこうした行為を不要に好戦的だとして距離を置いてきた。

力の誇示に傾くトランプ氏、悲願の軍事パレードも開催-歯止め役不在(Bloomberg)

BBCは「トランプ政権はこのような機会を伺っていた」と分析しているが、その背景事情もわかってきた。「勝てる試合」を積極的に作り政治利用しようとしているようだ。

Quoraのコメント欄にて2020年にABCが主催したタウンホールミーティングの記事を参照し「トランプ大統領が2020年に言っていたことと今言っていることが違う」と指摘した人がいる。

実際に記事を読んでみた。

ブラックライブズマター運動が収拾不能になるとトランプ大統領は「州兵を導入すれば問題はすぐに片付くが民主党系の知事はやるべきことをやらない」と言っている。このときに「ではトランプ大統領が州兵を派遣するのか」と聞かれ「いや、それは法律的にできない」と答えている。

今回は「民主党系の知事がやることをやらなかったから州兵を連邦の管轄下に置いた」としている。そして事態はコントールされたと宣言した。

これが「前回と今回では言っていることが違う」という批判につながっているのだというのがコメント欄の指摘だ。

では前回との決定的な違いはなにか。前回は自体が収拾できそうにないから「民主党が放置している」と言っていた。であれば、収拾可能な事態を自分で作ってしまえばいいのである。

そもそも今回の事案は「ありもしない摘発の噂」が発端になっている。また地元警察は「警察が事態を抑えられないほどの規模ではなかった」としている。

メディアではあたかもロスアンゼルス全体が燃えているような印象になっているが、地元紙のロスアンゼルスタイムズは「騒ぎが起きているのはダウンタウンとパラマウントのごく一部である」としている。また、ロスアンゼルス市長とカリフォルニア州知事も政治的宣伝であると憤っている。

そもそも政治宣伝(法案の推進と政敵の抹殺)のためのある程度管理されたショーケースだと考えたほうが良さそうである。ただしこれが全米に燃え広がると困るので反乱法の適用は見送られている。

今回のニュースではオーストラリアの記者がゴム弾に被弾する様子が象徴的に切り取られている。治安当局がジャーナリストを狙っているという「極めてアメリカらしくない」フッテージが出回る結果だ。アメリカ合衆国の言論の自由は大きく損なわれている。

またウェイモの自動運転車が放火され炎上するという「自動運転車の武器化」も確認されたそうである。ウェイモは付近での配車をブロックしたそうだ。

トランプ大統領生誕軍事パレードは権威主義的な国家(ロシア、中国、北朝鮮などが引き合いに出されることが多い)の常套手段であり、政敵の排除も中南米やトルコなどの中進国によく見られる手段だ。

トランプ大統領に代わったのはわずか半年前だがアメリカの民主主義は目に見えて混乱を続けている。

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