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党首討論は解散総選挙の引き金になるか 自民党内部からも主戦論


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時事通信が「党首討論は解散総選挙の引き金になるか」という記事を書いてる。内容を読んで驚いた。仮に時事通信が取材に基づいて書いているとすれば永田町の外の出来事からはあまりにも乖離している。時事通信も特に危機感を感じていないようだ。国内の出来事はアメリカとは関係なく国内で完結すると彼らは信じているのだろう。

6月11日に党首討論の石破総理の対応次第では野党が不信任案を出すのではないかと時事通信は予想する。党首討論で総理大臣の認識を問い「これでは総理大臣は信頼できない」と話を運びたいのだろう。

しかし、立憲民主党の中からは「今選挙をやられると勝てない」が「厳しい態度で望まないと足元を見られかねない」という危機感が広がっているという。また野党の足並みは乱れておりまとまった行動も期待できないようだ。

一方で石破政権はこのところの小泉コメ担当大臣の活躍に沸き立っているようである。支持率は下げ止まり「微増」傾向にあるからだ。国民は安いコメには期待を寄せているが食料品物価高について与党を批判するつもりもないようだ。

野党の状況は囚人のジレンマで説明ができる。

協力すれば自民党に対する勝利という利得が得られるが、お互いに信頼できないため利得が得られない。玉木雄一郎代表はまず野田佳彦代表に不信任案を出してもらい世論の動向を見極めたいのだろう。ここで自民党側に寝返れば「小さな利得」が得られるという計算がある。

しかしながらもっと驚いたのはこのフレーズだった。「あっ」と一瞬言葉を失った。

首相はカナダで15~17日に行われる先進7カ国首脳会議(G7サミット)に出席する。これに合わせたトランプ米大統領との日米首脳会談で関税交渉が合意に至れば「衆院選も去年のようには負けない」(自民幹部)との読みも「主戦論」を支える。一方、世論の評価が不十分なら「石破首相を降ろす」(党中堅)との声が自民で広がりそうだ。首相が解散できず、退陣に追い込まれる展開も否定できない。

不信任・衆院解散で攻防 終盤国会、11日に党首討論―野党、同日選へ引き金か(時事通信)

アメリカ合衆国では「一つの大きくて美しい法案」の成立が極めて難しい状況。予算が成立せず債務上限が拡大しなければ大惨事につながりかねない。トランプ大統領はじわじわと進む国債の利上げに苛立ちを隠せずFRBのパウエル議長に対する攻撃を強めている。トランプ大統領の不規則発言でアメリカの金融市場を大混乱に陥る可能性もありベッセント財務長官にとっては気の抜けない状態が続いている。とても日本と関税交渉ごっこをやっている余裕はない。

また中国との会合がイギリスで予定されている。中国側はレアアースの輸出許可という妥協を準備しているようだが、アメリカが中国に対する敵対姿勢を改めない限り関税では妥協しないだろう。アメリカ経済は徐々にインフレの影響を受けつつある。

さらに最高裁判所がトランプ関税についてどのような判断を下すのかが見えていない。トランプ関税が阻止されれば政権は別の手段を取るのではないかとされているが、自動車・鉄鋼・アルミ関税は裁判所がブロックした関税に含まれていない。つまりトランプ政権がプランBに移行すると却って自動車・鉄鋼・アルミの関税に固執する可能性が出てくる。

さらにICEの取締はヒスパニック系の強い反発を招きつつあり対応を間違えれば国内で大規模な暴動も起こりかねない。こちらはトランプ大統領の生誕祭が一つの山場になる。トランプ大統領は今回の一件を民主党を攻撃するための材料としか見ておらず自身はプロレス観戦に興じている。仮に有事に発展した場合には有効な対策は打てないだろう。

おそらく自民党の主戦論者たちは「仮に石破政権の関税交渉がうまくゆけば自分たちに有利になるはずだ」という根拠のない楽観論から主戦論を喧伝しているのだろう。

自民党の議員たちが日米交渉に主体者としての意識を持っていないことがわかる。むしろ今話し合うべきなのは「危機にある日本の自動車産業を今後どうするのか」ということだが、彼らは選挙のことで頭がいっぱいだ。

時事通信の記事を読む限り自民党の中にもメディアの中にもそれほどの危機意識は感じられない。外国からのニュースをまともに読んでいないと説明する以外に合理的な説明はできそうにない。

とはいえ(どういうわけなのかはよくわからないが)野党にも有事に対する確固とした姿勢を期待するのは難しそうだ。

これまで通り変化が少ないある意味平和な停滞が続くという予想を持っている人が多いのかもしれない。

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