この記事は「トランプ大統領がアメリカ合衆国を守るために立ち上がった」という記事のカウンターになっている。
国家的危機のはずなのにトランプ大統領はプロレス観戦を楽しんでいる。最初から「民主党は何もしなかった」と喧伝しており政治的宣伝が目的だったことは明らかだ。
一方でトランプ大統領は自分の誕生日にあわせて大規模な軍事パレードを行う予定になっている。全米で軍事パレードに反対する「王様は要らない」というデモが計画されておりデモの行く末と政権の対応が一つの焦点となる。
この軍事パレードが終わった後、カナダでG7サミットが行われるという流れである。
ロスアンゼルス郊外パラマウント市で起きた「暴動」がどの程度のものだったのかはわからない。トランプ大統領とホワイトハウスはまず民主党を攻め立てて連邦(ヘグセス国防長官)の州兵管理を含む大統領覚書に署名した。ABCの識者によればトランプ政権はこの瞬間を待ち構えていたようだ。
レビット氏は声明で「ICE職員らの(不法移民の)強制送還作戦の実施中に、暴徒が襲撃する事件が発生した」と指摘。その上で「カリフォルニア州の無責任な(ニューサム知事ら)民主党指導部は市民を守る責任を完全に放棄した」と非難した。トランプ氏はこれに先立ち、ニューサム氏らに対して「自らの仕事を果たせないのなら、連邦政府が介入し、問題解決に当たる」と自身のSNSで主張していた。
トランプ氏、抗議鎮圧に州兵動員 不法移民の強制送還巡り―米(時事通信)
トランプ政権はかねてより連邦は権限を縮小し州の裁量を増やすとしているのだが、この問題に関しては逆に州の権限を奪っている。介入の目的は明らかに民主党系の政権に対する報復である。政治的報復と見ることもできるが個人的な怨恨のほうが動機としては大きいのではないか。
仮にこれが本当に国家的な危機であればトランプ大統領はシチュエーションルームで動向を見守っていたはずだ。しかし実際にはプロレス観戦が話題になっている。
ニュージャージー州でプロレスのチャンピオンシップが行われている。トランプ大統領の支持者たちはプロレスが好きな人が多い。トランプ大統領にとっては支持者たちにアピールできる絶好の機会なのだ。
このことからトランプ大統領の狙いがアメリカの分断にあることがわかる。アメリカ合衆国を「正義と悪」の2つに分けることでプロレス的な対立構造を作る。このところ予算案や外交交渉で行き詰まりを見せていたトランプ政権にとっては政権支持率回復のための有効な手段なのだ。
この手法は「悪」と名指しされた一部のアメリカ人たちの強烈な反発を招くだろうが、中流階級が没落し民主主義に基盤が揺らいでいるアメリカ合衆国で国民を一つにまとめるためにはもはやこのような手段しかないのかもしれない。
ロシアンゼルス市長はICEが化学物質を使い暴徒を攻撃したことでロスアンゼルス警察が介入できなかったとしている。またカリフォルニア州知事は州兵の導入は事態のエスカレートを招くだけだと危機感をあらわにする。
- National Guard troops arrive in Los Angeles after immigration protests turn violent(ABCニュース)
- LA immigration protests live updates: 300 National Guard members in Los Angeles, says Gov. Newsom(ABCニュース)
しかしながら、これは危ない地域で起きている「ヒスパニック」のいざこざであって、自分たちアメリカ人にとってはなんの関係もないことだと感じる人も多いはずだ。
ロスアンゼルスについて知らない人にとってはテレビの向こうで起きている遠い街のいざこざだが、ロスアンゼルス市に住んでいる人たちの中にも「南の方の危ない地域で何かが起きた」程度の認識を持っている人がいるかも知れない。ロスアンゼルスの東部と南部にはコンプトンなどの危ない地域があり地元の人でも近づかないことが多い。トランプ支持者たちはプロレスチャンピオンシップに興奮しながらテレビの向こうの暴動を他人事として眺めているということだ。
日本のメディアの報道を見ていても「ロスアンゼルスでなにか危ないことがおきており政府がそれに対応している」と感じる人が多いかもしれないと感じる。
BBCはトランプ大統領の反応も伝えているがカリフォルニア州の民主党政権の「無能ぶり」が強調されていた。
トランプ大統領は6月14日に誕生日を迎える。側近たちにとっては忠誠心をアピールする良い機会で、誕生日に合わせて大規模な軍事パレードが行われることになっている。
これに合わせて全米では大規模な「王様は要らない」抗議運動が行われるそうだがこの抗議運動に対してトランプ政権がどのように対応するかに注目が集まる。
州兵の導入に政治的意図があることは明らかなので抗議者たちは平和な抗議運動を行っているようだ。また「王様は要らない」デモも平和的なものであると主催者たちは強調している。
アメリカ合衆国ではすでにトランプ大統領に抗議する人たちに対する無言の締付けも始まっているようだ。企業も個人も外国の戦争に対して発言することはあっても内政に関しては余り発言しなくなっている。政府から弾圧されることを恐れているのかもしれないしトランプ支持者たちに狙われることを恐れているのかもしれない。
そんななか、ABCのテリー・モラン記者がトランプ大統領の側近のスティーブン・ミラー氏を「ワールドクラスの嫌われ者」と個人攻撃したとして即時停職処分になっている。ABCニュースはトランプ大統領の政治姿勢に反発することが多いメディアだが弾圧のきっかけを与えることと恐れており報道姿勢も抑圧的なものになっているようだ。トランプ政権のメディア・企業・個人に対する抑圧は次第にその効果を表し始めている。
かつて言論の自由を守る国として知られたアメリカ合衆国の言論は「忖度と自粛による危機」を迎えている。言論の自由を憲法に書き込んだところで大した意味はない。言論の自由を守る意志こそが重要だが、アメリカ合衆国からはその機運は消えかけている。