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トランプ大統領がパウエル議長の解任を示唆?


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トランプ大統領がFRB議長の後任について近く発表すると記者たちに答え一部でニュースになった。ただ市場関係者はこの発言を余り深刻に受けとておらずトランプ大統領の影響力が後退していることがうかがえる。

では一体このニュースは何がポイントで、日本にはどんな意味があるのか。

アメリカ合衆国の国内政治報道は「一つの大きくて美しい法案」と「マスクVSトランプ」に夢中になっている。その中で少し気になる報道があった。トランプ大統領が次期FRB議長について「近く」「考え」を公表するというのだ。

トランプ大統領とパウエル議長の間には確執がある。トランプ大統領はインフレなどありえないと主張し今すぐ利下げをするように求めているがパウエル議長は応じていない。つまり今回の発表は「パウエル議長の早期解任」につながる可能性がある。

しかしこのニュースは市場ではあまり大きな話題にならなかった。そもそもこのニュースの日本国内での解像度はピンボケ気味だ。

極めて近いうちに公表するとトランプ大統領は言っているが、ベッセント財務長官は秋に発表すると言っている。そしてパウエル議長の任期は2026年5月に切れるとしている。

事実を羅列しているだけ。

実はBloombergのニュース構成は全く異なっている。

トランプ大統領はパウエル議長に対して利下げを要求し利下げをすれば「ロケット燃料」になると主張している。しかしパウエル議長はこれに応じていない。そこでトランプ大統領は近く後任人事について発表するとした。

ところがBloombergはここで「トランプ大統領が高金利の維持は連邦政府の負担になっていると問題視した」と接続している。インフレとは関係がない。

つまりトランプ大統領が本当に気にしているのは国内の経済問題ではなく連邦予算にかかる利払いの増加なのだとわかる。

時事通信はおそらくこの背景状況を読めなかったのだろう。余り国際情勢に興味がないのかもしれない。

ではアメリカ経済の現況はどんな感じなのだろうか。

経済は減速傾向だが依然底堅い。アメリカは何らかの理由で根強いインフレ圧力にさらされている。富裕層や資産形成層には良いニュースだがアメリカの民主主義を支える中間所得者のさらなる没落と疲弊を予期させるニュースだ。

経済成長=インフレはほぼ同じ意味で少なくともFRBがすぐに利下げに踏み切る材料にはならない。

5月21日にはアメリカの資産がトリプルになっているというニュースがあった。20年国債の入札が不調だったためだ。共和党とトランプ政権が進めている「一つの大きくて美しい法案」でアメリカの債務が積み増されると考えられているため米国債の信任は最高レベルではなくなった。

そもそもトランプ大統領はアメリカの経済を考えて利下げを要求しているわけではない。アメリカ株式会社の経営者として借り入れコストの増大を心配している。そしてそのためにFRBに対してなんとかするように求めている。だが実際に投資家が懸念しているのはアメリカ株式会社の経営者であるトランプ大統領の放漫経営ぶりなのである。

トランプ大統領はアメリカ合衆国に対する積極的な投資を呼びかけている。これは企業や政府プロジェクトの借金なのだがトランプ大統領はそれに気がついてない。そして連邦政府の借金だけを問題視している。「投資」と「負債」という本来同じものを別々に捉えているのである。

そもそも債務上限到達問題を抱えるベッセント財務長官は日本と「関税引き下げ交渉ごっこ」をやっている余裕はない。さらに常にトランプ大統領の動向に目を光らせて置かなければ夜中の2時に「パウエル、お前はクビだ!」となりかねない。おそらく金融市場は大パニックだろう。

世界から資金が流れ込んでくる限りアメリカの経済はインフレが続くだろう。インフレは(政府がそれを均さない限りにおいては)格差の拡大を招きアメリカの中流層にとっては許容しがたい状態が生まれる。

この中間層の怒りは矛先は移民、グローバリズム、知的エリートに向かい、アメリカの民主主義の基盤を侵食しつつある。

経済について基本的な理解すらおぼつかないトランプ大統領のもとではグローバリズム修正の動きは避けられず「アメリカが市場を解放し日本に稼がせてあげる」とい「やさしい」構造はもはや持続可能性がないと考えるべきだという結論が得られる。

すでにアメリカでは地震が起きておりその余波は何らかの形で日本に到達することになるだろう。その意味では対米関税交渉などもはや大した問題ではないのかもしれない。

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