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憎みあいながらも離れられない トランプ大統領とマスク氏が奇妙なダンス


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お金と欲望がすべてという独特の虚無主義に支配されたアメリカらしい政治風景なのかもしれない。トランプ大統領とマスク氏がSNSを舞台に奇妙なダンスを披露している。二人はお互いに憎しみ合っているがとはいえ共存関係にあり離れることができない。

発端はマスク氏が「一つの大きくて美しい法案」について反旗を翻したことから始まっている。SNSで罵り合っているうちに歯止めが効かなくなりついに個人攻撃に発展した。

SNSではよく見るありふれた光景だ。

マスク氏は「自分が支援しなければトランプ氏は大統領になれなかった」と発言したことでついにレッドラインを越えた。トランプ大統領はマスク氏の企業に対する契約を見直すなどと発言しテスラ社の株は14%以上も下がってしまった。

マスク氏もトランプ氏がエプスタインリストに載っていたと主張し民主党を喜ばせている。性犯罪に加担し司法省がそれを隠蔽していたと言う意味合いになる。

だがマスク氏がNASAからの撤退を仄めかしたところで自体はトーンダウンしてゆく。彼らはお互いに憎み合いながら共存関係にあると悟ったのだ。マスク氏もトランプ氏もカードを持っているため「プレイ」を続けることは可能だが、お互いに自滅する可能性がある。

SNSでの無邪気な罵り合いではなくカードをぶつけ合う消耗戦のレベルに達したことでお互いに「あれ、これはまずいぞ」と気がついた。

Axiosはトランプ大統領の側近がマスク氏が推薦するNASA長官候補を下ろしたことも問題の背景にあるのではないかと見ているようだ。

トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対して「お前はカードを持っていないだろう」と絶叫していた。トランプ大統領にとって外交もカード遊びに過ぎない。しかしこれはトランプ大統領だけの認識ではなく、アメリカのビジネス界に広く蔓延する価値観なのだろう。

石破政権はトランプ政権に対して「日本の自動車の貢献度を点数化して関税を軽減してもらえる」ように懇願するそうだが、おそらくなんの意味もない。石破政権も密室であれこれ考えているのだろうが、アメリカの政治の本質的変化には意識が向いていないようだ。

彼らが住んでいる世界はお金を使って殺すか殺されるかという殺伐とした競争社会であり、そもそも共存など望んでいない。福祉的要素のある健康保険の廃止について聞かれたある上院議員は「どっちみちみんな死ぬ(We are all going to die)」と言い放った。

お互いに自滅すると悟った時でなければ妥協が成立しない。同じように憎しみ合いながら離れられない関係は中国との間にも生まれつつある。アメリカは盛んに経済つぶしあいゲーム(これが彼らが面白く遊べる唯一のゲームだ)をやりたがっているが中国が応じないため「融和路線」に転じつつあるのだ。

こうした世界観に基づけば同盟と言えどもお互いには潜在的な敵であり潰れるか潰されるかということになるが、ナイーブな日本人はそんな同盟関係には耐えられないだろう。

アメリカ合衆国は民主主義の基盤となる中間所得者の没落という問題に直面している。本来ならば過激化するビジネス慣行を見直しアメリカを製造業が稼げる真面目な国家に戻さなければならないはずだ。

しかしアメリカ人はお金儲けで社会階梯を昇ることに強いあこがれを持っており外から見れば異常に見える「ヤツが潰れるが自分が潰されるかだ」という状況を改善できていない。

トランプ大統領はどうしていいかわからなくなったようでマスク氏は錯乱してしまったので私はもうこの問題に興味はないと目を背け始めているそうだ。

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