アメリカ合衆国で再び国家デフォルトのXデー問題が再浮上した。議会政治に慣れていないベッセント財務長官はこの問題を扱いかねておりアメリカ合衆国と世界経済のリスク要因になっている。
日本との貿易交渉はすでに破綻しているが、石破総理は「議論を継続している限りは失敗はしない」といういつもの手法で誤魔化そうとしている。
石破総理が「日本はギリシャより悪い」と発言し一部で反発された。しかしこの問題はそれほど大きなインパクトを与えなかった。事実と異なるからだ。日本は世界第二位の債権国(ついこの前までは第一位だった)でありギリシャは債務国。また日本は独自財政戦略を立てられるがギリシャはEUに主権を委譲しており自由度が低い。
ベッセント財務長官がアメリカ合衆国がデフォルトに陥ることはないと発言した。石破総理の発言と違い「実際にアメリカ合衆国がデフォルトに陥る可能性が出てきた」ことになる。
トランプ政権は議会共和党と協力し「一つの大きくて美しい法案」を通そうとしているが、上院共和党の一部から激しく抵抗されている。このため債務上限引き上げの目処が立っていない。
そこでベッセント財務長官はこのままではXデーが来ますと主張し議会に問題の早期解決を迫っている。ベッセント財務長官の考える理想の期限は7月4日の独立記念日とされている。
ところが実際にXデーの可能性が出てきた。テレビインタビュに答えたが支離滅裂なことを言っている。Xデーというのは交渉の道具であり実際に壁にぶつかることは「絶対に有り得ない」というのだ。
仮に「絶対に有り得ない」なら上院共和党の一部は妥協する必要はないため警告を発する必要もない。論理破綻したベッセント財務長官はその期限を明確に示さなかった。というより示せなかったのだろう。
トランプ大統領は高関税を仄めかし中国にディールを迫った。
高関税がアメリカ経済を破壊しウォールストリートのためにならないと考えるベッセント財務長官は「関税は交渉の武器であり実際にはこれほど高い関税が課されることはない」と主張している。そして実際に「チキン野郎」トランプ大統領も関税戦争の激化には耐えられそうにない。
同じ論法を議会に対しても主張しようとしたのだろうが、結果的に焦りと手詰まり感を感じさせるだけだった。
こうしたあやふやな対応は日本にも大きな影響を与えている。赤沢経済再生担当大臣は記者たちの質問に答えて「鉄鋼関税の推移を注視する」と他人事で論評し、ベッセント財務長官から関税の話は出なかったと主張した。
仮に赤沢大臣の主張が正しければベッセント財務長官の頭越しでトランプ大統領の意思決定が行われたことになる。しがみつき欲求のある日本は別にしても、誰もこんな人とは真剣に交渉はしないだろう。
したがってベッセント財務長官が議会を抑えることはできない。このまま不測の事態に陥ればアメリカ合衆国のXデー到達も可能性もまったくないとは言えなくなった。
日本には当事者能力はなくトランプ大統領の様子を注視するしかないのが現状。石破総理はこれまでのように交渉を続けると言っている。北方領土問題や拉致被害者の帰還問題と同じように「働きかけている間は破綻していない」という論理なのだろう。
