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小泉・生活応援米に殺到する人々

11〜17分

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雨の土曜日にもかかわらず多くの人が政府備蓄米に殺到した。中には徹夜で並んだ人もいるそうである。ここでは政治的に正しい表現として「生活応援米」と呼ぶことにする。

メディアの取材に対して人々は安くコメが買えた喜びを表現。試食した家族は白くてうまいコメだと主張した。

雨の土曜日にも関わらず松戸市のユニディには多くの人が詰めかけた。中には徹夜の人もいたそうだ。お目当ては税抜き2,000円で販売される政府備蓄米である。ここでは政治的正しさの観点から「生活応援米」と呼ぶことにする。くれぐれも「エサ寸前米」などと言ってはいけない。

生活応援米を買えた人は喜びをあらわにし、買えなかった人は自分の読みの甘さを嘆いた。カメラに向かって感想を求められた家族は「白いコメだ」と主張している。

このニュースを見ると千葉県松戸市ではよほどコメが足りていないのであろうと思われる。個人的にひとり市場調査を実施したが千葉県千葉市近郊のスーパーにはコメが山積みされていた。他の人にも市場調査を呼びかけてみたが応じる人はほとんどいなかった。

画像を見るといかにも多くのコメが並んでいるように見えるがユニディが用意したのは65袋だったそうである。

この短いニュースからいろいろなことがわかる。

第一にコメの流通の目詰まりはないことがわかった。その気になれば数日で店舗に並べることができる。仮に売り物のコメがないならばこれまでの政府備蓄米(江藤米)も積極的に売られていたはず。おそらく既存流通はコメが足りていると考えておりことさら政府備蓄米を放出するインセンティブはなかったのだろう。もともとそのまま返納するつもりでいたのではないか。こうなると死蔵されていたコメがどんな管理状況下に置かれていたのかにも興味がわく。管理の悪い状況に置かれ返納を待っていた可能性もあるからだ。

Quoraの議論を見ていると「需要と供給のバランスが崩れたことでコメの価格が値上がりした」と考える人が多い。これはもともと農水省が主張していた「コメは誰かが死蔵しているに違いなくその数量は21万トンである」という主張に引っ張られている。ニュースは日々アップデートされているが上書きができていないのだろう。

加えて目の前の市場調査にも興味がない人が多い。与えられた情報が上書きされることはなく古い状況を元にあれこれと想像たくましく「誰かが投機のためにコメを買い占めているに違いない」などと言う不毛な議論が交わされているようだ。

今回の生活応援米(小泉米)に徹夜で並ぶ人も出たことからSNSやテレビの情報に浮足立ってしまう人も多いことがわかった。「日本人はすぐこれだから」と言いたくなるのだがこのような指摘をすると「じゃあ外国人はどうなんだ」と話がややこしくなってしまいそうなので日本人一般に議論を拡大するのは控え「一部のうっかりさん」と表現したい。ポリコレも大変だ。

実はこの一部のうっかりさんの特性がコメの値段を上昇させるきっかけになったことはもうすでにわかっている。

2024年8月8日に宮崎県で震度6弱の地震がおきた。この自身をきっかけに南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発令される。お盆前の書き入れ時に被害を受けたビーチがあるとして話題になっていたので時期を記憶している人も多いのではないか。

人々は地震=備蓄と単純に考えてしまう。

ではどれくらいの人が行動したのか。下の文章を読む前に割合を予想してほしい。

原因は複合的ではないかと私は見ています。実は総務省の家計調査を見ると、コメ不足や価格高騰が騒動となった去年8月以降の4か月に、前年比で14%ほど多くのコメが買われています。1世帯あたり3.1キロになるんですね。この増えた分のコメの多くは消費されずに家庭でストックに回されていると考えられ、日本全体では11万トンほどになります。しかも、これは2人以上世帯を対象にした調査なので、単身世帯は計算に含めていません。

“消えたコメ21万トン”はどこに? 価格高騰の課題と対策は?(NHK)

実は14%程度コメが多く買われている。「たかが14%」と思った人も多かったのではないか。

  • コメは需要の先細りから実質的な生産調整が行われている
  • これまで余り動かない商品だったため年間の出荷スケジュールが決まっている
  • しかし、流されやすい一部の人々がコメを買い漁ったため一時的な窮乏状態が生まれそれが4ヶ月ほど続いた。
  • おそらくこのコメの多くは世帯に死蔵されている。

ただし一度コメの値段が上昇を始めると

  • 価格弾力性が低い(高くなっても書い続ける人は買い続ける)性質があり
  • 生活余力がある高齢者にとってコメが必需品である可能性が高く
  • 他のコメに切り替えるスイッチングコストが高い

という事情からそのまま高値で取引されるようになってしまったのだ。

つまりそもそも需要・供給問題ではないのだから供給を増やしてもコメの価格が下る根拠にはならないとわかる。

人々は生活情報について意見交換せず、目の前の状況を確認するようなこともない。テレビやSNSで何らかの情報を見ると自動的に脳内で様々な補完をしてしまう。結果的に目の前の情報について自分の目や頭で考えることはなく情報に流されてしまうのだ。

さらに経済的には2つの事情があるように思えてならない。

  • 失われた30年で自己責任意識・生活防衛意識が過剰に働いていて、ちょっとした情報に敏感に反応する人が増えている。
  • 悪性インフレの影響は生活困窮者に多くかかってくるが人々は自分たちが「中の中か中の下」くらいにいると思いたがっている。

こうした様々な事情があり政府の困窮対策米に殺到することになったのだろう。玉木雄一郎国民民主党代表はこれを「エサ寸前のコメだ」と主張し人々から猛烈にバッシングされた。事実誤認でバッシングされたのではない。無意識のうちにズバリ確信をついてしまったことが問題だった。

政治的正しさの観点からこれは生活者に対するエールであると表現しなければならない。

今回のコメの問題を見て「おそらく強い生活防衛意識を持つ人達は今持っている貯蓄を崩して積極的に消費をするようなことはないだろうな」と感じた。日本人はコストプッシュ型のインフレに対して極めて防衛的な態度でのぞむだろうとかんがえるならば日本経済の見通しは極めて暗いだろうと予想することができる。

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