何かを必死に獲得しようとしている人を安全なお茶の間から笑いながら見守るというのがリアリティショーの面白さだ。例えばアメリカ市民権を賭けて泥沼の闘いを繰り広げる人々を生まれながらにアメリカ市民権を持っている人たちが眺めるのはさぞかし爽快なことだろう。国土安全保障省がそんなリアリティ番組を構想していると報道されている。当局は報道を否定しているが企画を持ち込んだプロデューサは「国土安全保障省は乗り気だった」と言っている。確かにトランプ政権ならやりかねないという気もする。
AFPが「移民が米市民権かけて争うリアリティー番組 国土安全保障省が検討」という記事を出している。当局は企画の存在を認めたうえで何も決定されていないとしているが、トランプ大統領の熱心な信者であるクリスティ・ノーム氏ならやりかねないなあという気がする。
確かに既得権を持っている人が後から入ってくる必死な人たちを眺めるのはさぞかし楽しいだろうなあという気がする。
AFPはウォール・ストリート・ジャーナルの検証について書いているが、どうやらプロデューサが企画の存在を触れ回っているようだ。CNNによると民主党時代から企画を持ち込んでいたがトランプ政権になってから「好感触を得た」と主張している。ただしノーム長官は関与していないとのこと。プロデュサーのワーソフ氏は報道が広がったことで自分に注目が集まり喜んでいるのではないかと思う。TIMEも同じような報道をしている。
確かにアメリカ合衆国は魅力がある国で永住権や市民権が欲しいという人は大勢いるだろう。魅力はなんといっても「自由」と「豊かさ」だ。
ただし自由の国アメリカ合衆国という構図は次第に過去のものになりつつある。
トランプ大統領は選挙の敗北を受け入れられず議会襲撃を仄めかしたとされているが最高裁判所の助けもあり「無罪放免」となった。一方で8647というメッセージを掲げたコーミー元FBI長官は「トランプ大統領を脅迫した」という疑いで捜査対象になっている。「暴力を先導した」と主張しており「どの口が言うのだ?」と感じてしまう。
歌手のブルース・スプリングスティーン氏はトランプ大統領を批判した。するとトランプ大統領はSNSを使って敵意を剥き出しにする投稿を行っている。こうした投稿はその後「犬笛」となって個人に襲いかかることになる。
さらに、トランプ大統領は関税の影響で値上げを検討しているウォルマートにも「値上げ率を吸収するように」と要求した。
自分たちは何をやってもいいが批判は絶対に許さないというトランプ政権の姿勢はすでに社会に重苦しい空気を作りつつある。おそらくSNSは監視されており(あるいは当事者たちは監視されていると感じており)トランプ大統領に対するあからさまな批判は聞かれなくなった。弁護士やジャーナリストなどが直接トランプ大統領を批判すると様々な不都合が生まれるからだ。
ニューヨーク大学でガザの戦争を批判した学生の卒業証書が「保留」になるという事件も起きている。大学が支援の打ち切りなどを恐れているのだろう。
このようにアメリカ合衆国の言論の自由はかなり制限されており、仮に自由な体制批判が行いたければ外国から情報発信するしかないという状況が生まれつつある。香港の民主化運動の担い手が香港脱出を余儀なくされたのと同じことが、今のアメリカ合衆国では起きているのだ。

Comments
“移民が市民権を賭けて争うリアリティ番組を国土安全保障省が検討” への6件のフィードバック
アメリカにおいて「86」がそういう意味を表すスラングであったことを知りませんでした。ただ、そのスラングがコック・バーテン業界で使われていたとWikipediaに書いてありましたが、そこまでアメリカにおいて広く知られているものなのかは分からないですし、「8647」と書いてトランプ大統領を脅迫したととらえ、捜査対象になるという事実がヤバいですね。
日本でも「8.6秒バズーカー」という芸人が、同じ目に合っていましたが、あくまで一部のネット民からの反応だったので、さらにアメリカの現状のヤバさが際立ちますね。
蛇足ですが、86というとトヨタ86が連想しますね。この車もトランプ大統領を脅かす存在なのでしょうかね(笑)
たしかに「86」ですね。気が付かなかった……
自分で書いていて気が付かなかったですが、「8.6秒バズーカー」も86ですね・・・。まぁ、彼らが攻撃されたのはアメリカのスラングの「86」ではないですが。
私はそもそも8.6秒バズーカーが攻撃されていた事自体を知りませんでした。
まぁ、今回のアメリカでの事例と比べたら、ごく少数の人たちが陰謀論的な言説を振りまいていたので、知らなくても当然だと思います。
日本のスラングでさえ、知らないのが多いのに、海外のスラングなんて全く分からないですね。スラングにまみれた会話ばかりしているSNSを見ると、解読するだけでも一苦労するので議論すらできそうにもありません。
かなり局所化が進んでいるんですね。私、Quora何かのトラブルも後から知ることが多いんですよ。「しまった見逃した!」と書くと親切にも経緯を教えてくれる人もいます。