自民党の森山幹事長が「消費税減税は亡国の議論である」との前提ののもと「政治生命を賭けて消費税を守る」と宣言した。定見のある立派な政治家だと考える人もいるだろうが、自民党は森山氏に抱きつかれて沈むであろうと感じた。
例によって機能的非識字のために箇条書きにしたうえで森山氏の主張をご紹介する。
- 森山氏が「政治生命を賭けて消費税を守る」と宣言した。この発言は次のように解釈されるであろう。
- ポピュリズムに流されない立派な政治家だ
- 国民の要望が全く見えていない無能な政治家だ
- 評価するためには現在の経済状況を分析しなければならない。自民党・公明党政権はアベノミクスによって改革を先延ばししてきたが内外価格差が開きいよいよ日本にも悪性インフレ時代がやってきたと考えるべきだろう。
- 現在の政治課題を当ブログは次のように整理した。
- 政治の重要課題は構造的変化にどう対処するかであり
- 生産性の向上=IT化と複雑さの排除であり人員整理につながる
- 合理化によって生まれた余剰人員を次世代型の探求に切り替える
- 物価高によって苦しくなった国民生活を一時的に救済するという矮小化された議論であるべきではない。
- 政治の重要課題は構造的変化にどう対処するかであり
- しかしながら、コメの問題でもわかるように森山裕幹事長はもはや「次世代型の探索」に気持ちを切り替えることは出来ないだろう。次世代の政治家に道を譲るべきだ。
- コメの問題は中間流通経路の問題だと判明しつつあり「中抜き排除」が有効な選択肢として浮上しつつあるが
- 森山氏は輸入拡大反対と農協保護で頭がいっぱいになっている。
- むしろ森山氏の発言は改革の邪魔になっている。
- 高市早苗氏は早々と敗北宣言を行った。議論に責任を持たず課題から自身を遠ざけようととしているのだろう。
- 自民党が消費税減税に反対すればするほど野党はこの問題が選挙で有利になると考えそれ以上の対策に頭が向かなくなる。変化できない自民党を攻撃するほうが楽なのだ。
- 変化に対応しきれない森山幹事長の政治的キャリアは終りを迎えつつあるが、自分だけが退場することを良しとせず自民党の片足を引っ張り道連れにしようとしていると評価して良い。
- 円の価値の破壊運動によって国民生活はインフレに悩まされているが問題はまだ始まったばかりだ。
- 金利が上がると国の利払いが増える。野党の一部がかねてより主張してきた「アベノミクスの出口戦略不在」がいよいよ表面化する。
- さらにパナソニックや日産などこれまで日本の経済を引っ張ってきた企業のリストラが始まる。日産は神奈川県にある二拠点の閉鎖を検討している。
- 森山氏は自民党の足を引っ張るだけでなく日本を泥沼に引きずり込もうとしている。これらの構造的問題は消費税減税程度では解決しないが一度火がついた国民世論は森山氏に抵抗されればされるほど躍起になって消費税減税を求めるだろう。
森山幹事長が地元で公演し次のように発言したと時事通信が伝えている。評価は分かれるだろうが「自民党の足を引っ張り泥沼に沈めようとしている」と感じた。森山氏は自民党内の抵抗勢力として機能しており変化できない自民党の象徴的存在になっている。
自民党の森山裕幹事長は17日、鹿児島県屋久島町で講演し、野党などが掲げる消費税率引き下げ論について「政治生命を懸けて、この問題に対応したい」とけん制した。森山氏は財政規律派として、税率引き下げには慎重な姿勢を示してきた。
消費減税論をけん制 森山自民幹事長「政治生命懸ける」(時事通信)
問題は消費税を減税するかしないかではない。
現在の状況を分析したところアベノミクスの影響で円の力が弱くなっていることに加え構造改革を先送りしてきたツケがいたるところに現れている。仮にこの不調が景気後退であればやがて回復することもあるだろう。しかし、構造的変化であれば黙っていても復調することはなく、むしろ悪くなってゆくだけである。
皮肉なことに農水族の森山幹事長の足元の変化がこれを証明している。
コメの価格が高騰したのは中間業者が儲けを蓄えているからだということがわかった。次世代型の産業が作られないため「簡単な仕事」で稼がざるを得なくなっている。つまり1つの仕事に多くの人が集まることによって効率が悪い社会が作られているのである。
このため政府は中間業者を介さずに小売が直接一次業者と取引ができるような市場づくりを始めた。あくまでも集荷業者対策であるためAmazonのような透明化された市場は作られないだろうが「一歩前進」ではある。選挙を前にして「お尻に火がついた」ことで物価高の一因は効率の悪い市場のある事がわかった。同時に「コメを右から左に流すことしか出来ない」大勢の人たちが排除される。政府が本気で問題に対処しようとすると各地で同じようなことが起きるだろう。
しかしながら森山幹事長が消費税死守にこだわればこだわるほど野党は消費税減税を求めることになる。そして彼らが消費税減税を求めている間は「痛みを伴う構造改革」に付いて話し合いをすることはなくなるだろう。野党も選挙に勝つための最小限の努力しかしないからだ。
自民党の議員たちも問題から距離を置くことが出来さえすれば後はどうなっても構わないと考えているようだ。高市早苗氏がいち早く「敗北宣言」を出して問題から逃げてしまった。保守の政治家はよく逃げる。
消費税減税を訴える自民党の高市早苗前経済安全保障担当相は17日、否定的な見解を示した石破茂首相の国会答弁を受け「私たちの敗北かなと思っている」と札幌市の講演で語った。
減税訴えの高市氏が敗北宣言 税調勉強会には「がっかり」(共同通信)
森山幹事長は「自分は次世代のことを考えている」と気持ちよくなっているのかもしれないが、そもそも自民党は出口戦略を提示することなくアベノミクスで問題を先送りしてきた。内外価格差が開きインフレが表面化してきているが、今後は金利の高止まりによる財政の圧迫が予想される。
さらに次世代型産業を育ててこなかったツケも大きかったようだ。パナソニックや日産が相次いでリストラを発表している。トランプ関税の影響により工場がアメリカに移転すればさらにこの傾向は部品工場などを巻き込むことになるだろう。日産は神奈川県にある工場の閉鎖を検討し始めたとのことである。
しかしながら森山幹事長の現状認識は極めて甘いものだ。「仮に必要があれば景気対策は行ってやるから、夏の参議院選挙は黙って自民党に投票しろ」と言っている。
自民党の森山裕幹事長は15日、党所属議員の会合で、秋に想定される臨時国会での2025年度補正予算案の編成について「必要があれば、秋には補正予算を組まなければいけない。状況を検証しながら景気対策をやることは当然だ」と述べた。
秋の補正「景気対策は当然」 森山自民幹事長(時事通信)
