各メディアが四半期のGDPが年率換算・実質で0.7%減少したと伝えている。まずは機能的非識字対策としての箇条書きをまとめたうえで、その意味するところや夏の参議院選挙への影響を考える。仮に国債依存の消費税減税以上の対策が出ないのであれば、どの政党に投票してもあまり意味はない。個人的な防衛にシフトすべきだ。
機能的非識字者のためのまとめ
- 各メディアが日本の2025年1〜3月期のGDPが年率換算・実質で0.7%減少したと伝えている。
- その意味するところはメディアによって異なる。
- Bloombergは金融正常化が難しくなったと見る。つまり日本の金利は低く据え置かれ金利差は拡大したままとなるだろう。
- NHKは輸出が落ち込んだが個人消費が振るわかなったことを問題視している。とはいえ「どうすればいいのか」には言及していない。
- 共通して心配している問題もある。
- トランプ関税の影響が見通せず特に日本の産業を牽引する自動車産業への影響が懸念される。
- ここでドルベースのGDPを観察すると別の視点が得られる。
- ドルベースのGDPのピークは民主党政権時代でアベノミクスの結果下落傾向にあった。
- 考えられる要因は2つある。
- 東日本大震災
- アベノミクスそのもの
- 東日本大震災でサプライチェーンが破壊されたままこれが国内回帰しなかったのではないか。つまり東日本大震災はきっかけに過ぎなかった。
- さらにコロナ禍の行き過ぎたインフレの修正からアメリカの金利が高止まりすると日米の金利差が意識されドル高・円安の傾向でさらにドルベースGDPが下がった。原因は2つに分解されるがコロナ禍はきっかけに過ぎないことになる。
- コロナ禍
- 金利差の固定
- このことから今回のインフレがアベノミクスの結果であることがわかる。
- アベノミクスは実質的な日銀の財政ファイナンスにより問題を先送りする政策だった。
- 結果として円の価値が毀損された。
- 「痛み止め」を打っているうちに構造的な改革を行うべきだったが安倍政権は構造改革を行わなかった。
- これまでは「デフレ(厳密には低成長)」だったため問題が顕在化しなかった。
- しかし多くの物資を輸入に頼る日本は内外価格差に耐えられなくなりつつある。
- つまりこれは構造的な悪性インフレ(コストプッシュ型のインフレ)と考えられる。
- 与党の一部や野党は「まず消費を立て直して経済状況が回復するまで国債を発行して消費税を減免すべき」と言っている。
- 今回の減少を周期的ではなく構造的なインフレなのだと考えると、国債発行は単に日本の財政悪化を通じて円安に寄与するだけとなる。
- 円安の結果として更に悪性インフレが加速することになるだろう。
- 遅れた構造改革を実施するためには次のようなやり方が考えられる。
- 当座の利潤は少なくなるのだから国内の複雑な産業構造(IT化の遅れや複雑な流通販路)を整理する。
- しかしこれは人員削減を意味する。削減された人員が次世代の産業を模索できるように対策する。有効なプログラムの一例を挙げるが他にも「お金で解決できる問題」は多い。
- ベーシックインカムなどの政府補助
- 民間のファンドやプログラム
- ただし探索型に切り替えることができない人は出てくるだろう。特に引退する(つまり次世代型に転換できない)世代に対しては次のような対策が考えられる。
- 何らかの社会福祉的手当を行う。
- 効率化しきれない分野で活躍してもらう。
- 日本の政治はこの状況を総括できていないため構造的な転換は(ほぼ)不可能だろう。
- 自民党は安倍政権の政策を否定できない。さらに構造的な問題把握を行わず「カン」に頼った政府運営を続けている。
- とはいえ野党がこの問題に対して構造的なアプローチをしているようには見えない。
- したがって防衛的な選択肢は次のようになる。
- 円で持っている預貯金の毀損をいかに防ぐか
- 今持っている資産を使って自律的に稼ぐ手段をどう確保してゆくか
- つまり自発的に探索型の行動を取るしか道はない。
日本の四半期ベースGDPが0.7%の実質マイナス成長に陥ったと各社が伝えている。輸出の落ち込みのほうが数字としては大きいのだが各社ともむしろ個人消費の伸び悩みを懸念している。
加えて、今後予想されるトランプ関税の悪影響を懸念しているようだ。
Bloombergは金融メディアらしく「日銀の金融正常化は難しくなるだろう」と予測するが、NHKのまとめを見ても「何をどのように対策していいのか」が見えてこない。さらに両者共「トランプ関税の影響で自動車産業などに影響が出るだろう」としている。すでに家電産業が失われつつある日本では自動車が産業の最後の担い手だった事を考えると先行きはあまり明るくなさそうだ。
そもそも日本経済の基本的構造は海外で稼いだカネや仕事をできるだけ国内で分配するというものだった。そう考えると、そもそも輸出産業と個人消費を分解して考えることには無理があるように思える。
ここでドルベースのGDPのグラフを見た。別の視点が得られることがわかった。日本のGDPのピークは民主党政権時代だったが安倍政権になって坂を転がり落ちるように下ってゆく。
考えられる点は2つある。東日本大震災のサプライチェーンの破壊とアベノミクスによる改革の先送りだ。東日本大震災の影響があったとしてもそれはきっかけに過ぎなかったのではないか。
また、コロナ禍でもGDPが落ち込んでいる。バイデン政権の財政拡大がインフレを招いたため、パウエル議長が高金利政策を実施しインフレの引き締めを行った。この結果金利差が拡大しドル高・円安の方向に作用したのではないだろうか。これもコロナ禍はきっかけに過ぎなかった。
つまり、何かの社会変化をきっかけにして状況が悪化し続けているのだ。
これまでは低成長だったためアベノミクスで起きた矛盾が表面化することはなかったが内外価格差に耐えられなくなり生活必需品ほど一度値上がりが起きると急激な値上がりが起きる。
ガソリンなどはわかりやすい例だが、国内ですべての需要を賄っているはずのコメも1年で2倍に値上がりした。生活必需品には価格の下方硬直性があるものと考えられているため、おそらくコメの価格が元の水準に下落することはないだろう。
仮にこれがアベノミクスの結果おきた構造的な悪性インフレと考えると「そのうちに沈静化する」とは考えにくいのだが、政治はこの問題の答えを出すことができていない。
すでに歴史的使命を終えた自民党が対応できない理由はわかる。これまでカンと経験に頼った政策運営を行っており、なおかつ安倍政権時代の政策を否定できない。問題はむしろ野党の側にあるのかもしれない。消費税減税の大合唱が野党と自民党の党内野党から起きているが「景気悪化は周期的変化である」という暗黙の前提をおき「そのうち良くなるだろうから今は国債で対応すべきだ」と言っている。
この問題がアベノミクスの結果であるならばさらなる財政ファイナンスは円の価値を弱体化さ、ますます悪性インフレを加速させることになるだろう。
では具体的にどうすればいいのだろうか?
まず日本は稼ぐ力は失っているが過去からの資本的蓄積が「死蔵」されている状態にある。稼ぐ力を失っているのだから当然効率化を通じて今の産業の生産性を上げる必要がある。具体的には流通経路の簡素化とIT化が重要だ。しかしながら、これはすなわち「人員の整理」を意味する。
この余った人員は2つに分けられる。
新しく効率化した産業について行けない人たちと新しい産業を模索するために自由な時間を求めている人たちだ。新しい社会に付いて行けない人はあまり効率化しない分野の労働力として割り当てたうえで社会保障給付を充実化させる必要がある。一方、新しい産業を模索するために自由時間を必要としている人にはベーシックインカムや民間企業からのファンドなどが有効かもしれない。不幸中の幸いというべきか日本は過去の蓄積を死蔵しており「お金で解決できる問題」が多い。
仮に今度の参議院選挙が単純な「国債発行による消費税減税」に傾くのであれば、おそらく円の価値の毀損が進むことになる。こうなると対策は価値が毀損する円を逃避し資産を防衛し、産業構造が壊れても良いように少しで稼げる手段を確保してゆくことになるのではないか。
仮に「政治は何もしてくれない」と考えるならば自発的に「探索型」の人間になるしかない。厳しい時代である。