アメリカ合衆国の白人の多くは、本音では「有色人種が支配するアメリカ合衆国などまっぴらゴメンだ」と考えている。ところがこのときに変な理屈をつけて合理化を進めるため話が複雑化する。トランプ大統領はこれまで国境の南からくる人間はすべて精神異常者か犯罪者でペットを食うなどと言ってきた。この度南アフリカの白人だけを受け入れ「南アフリカ政府が農夫を殺しておりそれがたまたま白人だった」と言っている。
本来なら「人種差別をやめるべきだ」と言いたいところなのだが、それは無理なようだ。であれば変な理屈はつけずに「アメリカ合衆国は有色人種を差別している」と言ってくれたほうがいい。
アメリカ合衆国の人口動態は白人優位からヒスパニック優位に変わりつつある。現在の政権が様々な理由をつけてヒスパニックを追放しているのはそのためだ。もともと有色人種に対する差別を「政治的正しさ」で抑え込んできた歴史があるので一度タガが外れると急激な揺り戻しが起きる。
そんな中、トランプ政権が南アフリカからの白人を「難民」として受け入れた。おそらく、かなり陰謀論者の影響を受けておりこのように主張したという。
トランプ氏はこの日、申請が素早く処理された理由を記者から問われると、南アフリカで「ジェノサイド（集団虐殺）」が起きており、中でも「白人農家」が標的にされていると主張。
南アフリカの白人グループがアメリカに到着、トランプ政権が難民認定へ（BBC）
長年「政治的正しさ」で本音を押さえつけてきた歴史がある。その揺り戻しが急激に起きており「本音を合理化するためなら事実を軽視しても構わない」と考える人が増えていることがわかる。
この問題が深刻な点はリベラル系メディアも内なる差別意識を直視できないと言う点にあるのかもしれない。リベラル系メディアはアメリカ合衆国は保護を必要としている人々に救いの手を差し伸べるべきだがそれができていないという「べき論」を展開している。
- 南アフリカの白人、トランプ米政権が難民認定 第１陣の５９人が米国に到着（CNN）
- Trump administration welcomed white Afrikaners while ending Afghan protections（AXIOS）
アメリカ合衆国には通常の医療保険に加入できない人が受けるメディケイドという支援プログラムの加盟者が7000万人もいるそうだ。社会の困窮化と中流階級の崩壊が起きている。このような貧困化が進む中で「外国の弱者をまず優先すべきだ」と主張すればおそらく「まずは自分たちが救済されるべきだ」と考える人も増えるだろう。
アメリカ合衆国が人種差別的な動機を隠しきれなくなり不可逆的な変化を起こしていると考えることも重要だが、その背景には「善意」を顕示したがる人たちの言動が「偽善」と反発されてきたという歴史があることも忘れてはならない。
Comments
“アメリカ合衆国が南アフリカからの「難民」を受け入れ ただし白人のみ” への2件のフィードバック
この手の人達が開き直って差別の肯定を公言する事は現時点ではまず無いでしょう。
まず自分達が悪く思われる事にすごく敏感ですし何より自分達は何も悪くない!!悪いのは全部向こうの方だ!!という他責志向と被害者意識が一緒くたになってる
感情があるでしょうから。
あと日本の自称保守でも差別を区別と言い換えて自分は差別主義者じゃないと
主張する人達が既にいてましたしね。この辺は序列意識から来てるんでしょうけど。
ただアパルトヘイトがアメリカの地で蘇るとか以前挙げられてたテクネート・
オブ・アメリカが成し遂げられてしまうとかであの人達だけの世界が確立
されてしまったら平気で開き直れるでしょうね。タリバン支配下のアフガニスタン
の様にこの国の掟だと…。
勿論こう言う感情を抱いてる要因として建前を掲げてきてたリベラルの人達が
追い詰め過ぎたのは多分にあるでしょう。だから自分達の言い分を聞いてくれないと
頑なになって一切心を開かなくなると。
匿名で他人を叩きたい人が多いから、表立って彼らを代表する人が密かにもてはやされたりするのかもしれないですねえ。