9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


「何もしていないわけじゃない」と石破総理が激昂

9〜14分

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このところ国内ニュースを探しているのだが、ほとんど重要な動きがない。立憲民主党が「物価高に何も対策を講じていない」と総理大臣を批判し、総理大臣が「何もしていないわけじゃない」と色をなして反論したというのがメインニュースだ。

そもそもこれは何を目指した議論なのか。さっぱりわからない。

第一になぜ物価高対策が必要なのかがわからない。こう主張すると「この人は頭がオカシイのではないか」と言われそうだ。しかし冷静に考えてほしい。安倍政権は「デフレ」(厳密には停滞経済)を悪と決めつけ「インフレ」を目指してきた。実際にインフレが起きているのだからシャンペンを開けてお祝いしモチでも配らなければなければならない。

厳密に言えば対策が必要なのは物価高ではない。物価上昇に賃金上昇が伴っていないことが問題だろう。そもそも賃金が上昇しても年金世帯には全く恩恵がない。この人口動態の変化にも対応しなければならない。

心配性の人たちにこのようなことを申し上げるのは酷なような気がするがこの後に「アベノミクスの出口戦略」の問題が控えている。インフレによって金利が高騰し政府財政が圧迫される問題だ。野党の中で金融に詳しい人達が麻生財務大臣に出口戦略について執拗に質問してきたが、麻生財務大臣は一貫して議論をはぐらかしてきた。

この無責任極まりない政権が「将来にツケを残さない」と言っている。噴飯ものの主張だ。

岸田総理大臣も石破総理大臣もアベノミクスの総括がてきておらず未だに日本はデフレから脱却したと宣言できずにいる。しかしこれはあくまでも自民党の党内事情だ。「勝手に処理してください」と言う他ない。

石破総理が国民経済を総括できないことで議論が錯綜している。

立憲民主党はインフレと物価高という言葉を使い分けており「マイルドなインフレは望ましいが物価高は容認できない」と言っている。そしてそれに対して「対策が必要だ」と決めつけ「何もしていないから石破総理が悪い」と言っている。

これを辻元清美氏のような人に「無策5連発だ」と発言させご満悦だ。

しかしながら今回の問題についての議論を見ていると経済の基礎的な概念がほとんど理解されていないことがわかる。Quoraでは消費税が下がると物価が下がるのですか?という質問を見つけた。一体どこからそんな主張を仕入れてきたのかと思う。

経済に対する理解のなさは様々な議論にきわめて深刻な影響を与えている。これまで企業は消費者の離反を恐れて商品価格を上げてこなかった。ところが様々な品薄をきっかけにしてモノの値段がじわじわと上がりつつある。

最初に上がったのはコーヒーやチョコレートなどの海外の農産品だ。気象変動の影響を受けており中国などの新興経済国との間に取り合いが始まっている。しかし、これはあくまでも嗜好品だった。ところが何らかの原因でコメが品薄となったことで一気に価格が二倍に上昇している。コメは(少なくとも一部の家庭では)生活必需品であり、一度価格が上がると容易に下がらないことが予想される。

よく企業が「基礎となる固定費を下げられない」ことがある。これを固定費の下方硬直性などという。経済学を勉強した人なら一度は聞いたことがあるはずだ。同じようなことが家計にも起きている。一度固定費に当たるものが値上がりするとなかなか下がらない。コメなどの食料品、ガソリンなどのエネルギー価格がそれに当たる。加えて今後は携帯電話の利用料金が上がってゆくものと考えられている。

価格が上昇すると需要が縮む。これを価格弾力性というそうだ。価格弾力性は品物によって異なるのだが、これまでの停滞経済ではそもそも価格が動かないため、それぞれの価格弾力性の数値が得られなかった。

現在は「経済の正常化」に伴って価格弾力性の社会実験が行われている状況と言える。

コメに関してNHKが興味深い記事を書いている。

  • 政府の備蓄米放出でコメの価格が18週ぶりにわずかに下がった。
  • しかしそれでも去年に比べると2倍の水準を維持している。
  • しかし一部地域のスーパー(大阪市阿倍野区の事例が出ている)ではコメが足りない状況が続いている。大手スーパーも「在庫不足」を懸念している。
  • 学校給食ではコメを減らす動きも起きている。
  • 麺類にシフトする家庭も出てきているようだ。
  • 別の産経新聞の記事によると「パン屋の倒産」が大幅に減っている。

価格の下方硬直性の問題に加え、価格弾力性(高止まりしたことでパンや麺類にシフトしている)の問題も出てきている。これまで動いていなかったメカニズムがきしみ音を立てながら再び動き出しているのだ。

経済学を勉強した人は「壮大な社会実験だ」と感じるだろうし、座学でインフレについて勉強しただけで「実際のインフレを見たことがない」という人もいるはずだ。

確かに立憲民主党の指摘はいかにも経済を知らない人たちが騒いでいるという感じなのだがその原因は議論のアジェンダセッティングに失敗した石破政権にある。

「色々やっています」の中身を見ても根本原因が整理されておらず石破総理は「地方が楽しくなれば自ずと問題は解決するだろう」程度の中身のない発言しか行っていない。おそらくもはや自民党が政権を維持し続けることは不可能なのだろうし政権が立憲民主党に変わったところで問題は解決しないだろう。

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