8,900人と考え議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


「つじつまが合わない」 自民党は消費税減税に後ろ向き


イイネと思ったら、Xでこの投稿をシェアしてください

カテゴリー:

石破総理がテレビに出演し「消費税減税で国家財政はどうなる」と訴えた。また森山幹事長も「消費税を諦めるなら他の財源がなければ辻褄があわない」と主張している。この問題をどう扱おうかと考えたのだが結論は決めずに、あえて積み上げ型で行ってみようと思う。

森山幹事長は「辻褄が合わなくなるから消費税減税はやらない」と主張しているが、辻褄が合わなくなったのは自民党の存在そのものだ。日米同盟を基礎とした政党としての役割はすでに終わっているのである。

バブルが弾けた時に国民も自民党政権も問題を総括しなかった。

金融機関は自分たちを守るために企業への貸付を縮小させた。バブル期の企業は従業員をアメリカに派遣するMBAがブームだったが財テクで本業以上の儲けが出せていたことやそもそも既存経営者が科学的経営に不慣れだったこともありMBAホルダーを活かすことができなかった。

結果的に企業はコストカットに走ることになった。リストラ(再構築)がクビ切りと理解されるようになったのはこの頃だ。「再構築された」では意味が通じないが日本語として「解雇された」という意味で用いられている。

個人消費が冷え込み「氷河期世代」はそもそも長期的な見込みを立ててライフ・プランを組み立てられなくなった。結果的に防衛的なマインド(これをデフレマインドという)が企業にも個人にも定着した。

状況を整理する。

  • 政府はどうせ何もしてくれないだろう
  • 自分たちでなんとかするしかない
  • 個人でできることは限られておりそれはたいてい支出の削減を意味する
  • 結果的に日本は成長しなくなった

改めて考えてみたのだが、40歳代の人はそもそも「日本がなぜこうなったのか」がよくわからないのではないかと感じた。社会人になったときにはすでにこうなっていたからだ。

いずれにせよ

  • 政府が何もしてくれないと信じているから国民は縮小を選択する

ということになり

  • これからも政府が何もしてくれないと信じる限り国民経済は成長しない

ということになる。

あえて面倒な「積み上げ」をした。積み上げなければ石破総理の発言のどこがおかしいのかが見えてこないからだ。

石破総理は消費税を下げない理由について次のように言っている。

一方、国内対策として消費税減税を求める声が与党内にくすぶっていることに関しては「国の財政はどうなるのか。困っている人も困っていない人も一緒(の減税)でいいのか。困っている人に厚い支援として他にやり方はないか」と疑問を呈した。

石破首相、自動車関税「あくまで撤廃要求」 米英合意は一つのモデル―消費減税に慎重姿勢(時事通信)

改めて「本来どうあるべきか」を考えてみよう。

  • 国民の一人ひとりの行動が成長を志向する
  • その結果として財政にゆとりが生まれる
  • ゆとりを「困った人」に向ける
  • そのためには政府の対策を国民が信じる必要がある
  • だが石破総理はそれが打ち出せていない
  • だから困った人が助けられない

つまり「政府の政策転換の結果として国民が成長を志向するようになってはじめて困った人を助けることができるようになるし、志向しなければ消費税を取ったとところで困った人を十分に助けることはできない」ということになる。石破総理は党内の財政再建派に押され思考停止に陥っているに過ぎない。更につけ食われれば消費税は問題に関係がない。

ではそもそも現在の物価高はいけないことなのだろうか。言い換えれば物価高は対策しなければならないのか。立憲民主党の野田佳彦代表はそう考えている。

立憲民主党の野田佳彦代表は11日、自民党が経済対策で消費税減税を見送る方向となったのを受け「給付もしない、減税もしないとは、何もやらないということだ。無策が参院選の争点になる」と批判した。札幌市で記者団に述べた。

自民の「無策」が争点に 立民代表、減税見送り批判(共同通信)

しかしながら、自民党・公明党政権は長い間インフレを目指してきた。特に安倍政権ではその姿勢は顕著だった。そのインフレが実現したのだから、石破総理はシャンペンを開けて自民党でお祝いを開催しなければならないのではないか。

これも順番に説明してゆこう。

  • 安倍政権のインフレ誘導策の本当の狙いは実質的な政府への財政ファイナンスの正当化だった
  • 安倍政権はむしろ「インフレ」など起きるはずはないと考えていたのではないか。野党の再三の追求にも関わらず、安倍総理も麻生財務大臣も「出口論」には触れてこなかった。
  • 結果的にインフレは起きた。しかしそれは賃金上昇のない物価高に過ぎなかった。
  • 現象を説明しようとすると石破総理はそもそもアベノミクスの何が間違っていたのかを説明しなければならなくなるためそれができない。
  • そこで野党が入ってきて「インフレ」を「成長」と「物価高」に分解して話を複雑にしている。

内容は異なるのだが、実はこれはバブル崩壊後と同じ状況である。政府が何もしないと人々が確信しているため結果的に縮小が選択されることになる。

  • 失敗が総括できないことで現状認識ができない
  • 現状認識ができないため有効な対策が打ち出せない
  • そもそも国民は政府の対策など期待していない
  • そのため縮小が選択される
    • 消費を縮小する
    • 減税を要求する

仮に政府が減税に応じなければ「消費の縮小」が選択になるがかといって減税を選択してもおそらくそれが経済成長に結びつくことはなく困った人が助けられない状況が続く。

コメの値段すら満足に統制できないこともあり、国民はどうせ政府は何もできないだろうと確信している。

森山幹事長に至っては「代替財源が見つからなければ辻褄が合わない」と言っている。議論を主導し国民に訴えることができないため、財政の辻褄が合いさえすれば国民経済がどうなっても構わないと言っていることになる。控えめに言って「狂っている」以外の感想はない。

だがそもそも自民党はアメリカの国際政策で出た「余剰」を国民に分配するだけの政党だった。アメリカは国際政策を転換させつつありそもそも自民党が辻褄が合わない政党になりつつある。

自民党の役割はすでに終わったのだ、と総括することができる。

自民党の森山幹事長は、きのう鹿児島市で講演し、消費税を引き下げるなら代わりの財源を示さないと「つじつまが合わない」と指摘、減税に否定的な考えを重ねて示しました。

自民・森山幹事長、消費税減税を重ねて否定 代わる財源がなければ「つじつまが合わない」(TBS Newsdig)

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで