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「すわ核戦争」からアメリカ合衆国介入までの経緯 印パ対立が「停戦完全合意」

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インドが管理する領域での観光客殺害をきっかけにエスカレートしていたインド・パキスタン対立がアメリカ合衆国の介入によって「停戦完全合意」を迎えた。これまでのQuoraでのコメントやIMF有志などの話題を紹介しながら経緯を見てゆく。

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インドが管理するカシミヤ領域で観光客が殺害されこれをきっかけに両者の間で戦闘が続いていた。

この時にパキスタン側が核兵器の使用を協議しているのではないかとのテレビ報道があり国防大臣がこれを否定するという騒ぎになっている。

朝日新聞は一時期「核兵器使用を協議か」と報じていたがのちに見出しは変更されている。時事通信にも同じように情報が錯綜していたとする記述がある。

軍施設への攻撃で脅威のレベルが高まったことを受け、パキスタン国営テレビは10日、シャリフ首相が核兵器の運用も担う政府と軍の意思決定機関「国家司令本部(NCA)」を招集したと報じた。その後、ハワジャ国防相が地元Geoテレビに、NCAの開催予定はないと否定した。

インドとパキスタンが即時停戦合意を確認 攻撃応酬で一時緊張高まる(朝日新聞)

トランプ大統領は問題に関心を示さず、バンス副大統領は「自分達の戦争ではないから好きにすればいい」と表明していた。

結果的に動いたのはルビオ国務長官だったようだ。パキスタンの軍のトップと電話会談をしている。両国とも核兵器保有国であり事態の放置によって取り返しがつかない問題が生じることを恐れたのだろうと考えられる。ただしこの時にどのような約束があったのかは伝わっていない。

トランプ大統領がトゥルースソーシャルで「完全合意に達した」と表明した。その時点では「トランプ大統領の発言を信頼していいものか」と考える人もいたようだが、結果的にインド・パキスタン両国が合意を認めた。トランプ大統領はこれを自身の行動の結果だと宣伝するのではないかと思う。

Bloombergはインド・パキスタン双方とも勝利を宣言するであろうから実際に何があったのかはわからないままだろうとしている。

異なる民族がイスラム教で結びついたパキスタンでは議会制民主主義がうまく機能しないため結果的に軍の力が大きくなる。軍と政治は深く結びついており、一時はナワズ・シャリフ首相を追い落とし全ての公職につけないような司法判断が下されている。後継のイムラン・カーン氏はクリケットの人気選手で国民人気はあったが次第に軍との関係は悪化していった。最終的にカーン氏とPTIは選挙に出ることを禁じられた。既得権益層が選んだのはナワズ・シャリフ氏の弟のシャバズ・シャリフ氏だったが、もっとも議席を多く獲得したのは元PTIの「無所属」議員たちだ。つまり今でも国民と既得権益層の間には根深い意見の隔たりがある。と同時にナワズ・シャリフ首相の政治的基盤は必ずしも盤石とは言えない。

Quoraではパキスタンはアメリカの気をひくためにわざと騒ぎを起こしてきた歴史があると指摘する人がいた。もともと政治が軍を抑えられない背景があることを考えると単に軍隊が落とし所を見つけられなくなっていたのかもしれない。

さらにQuoraでは「パキスタン軍は弾薬が足りないため全面戦争は望んでいないだろう」とする声があった。確かにインドもパキスタンも全面戦争は望んでおらず「抑制的に対処している」とする報道が多かったのは確かだ。

時事通信は気になることを書いている。通常兵器で勝ち目がないからこそ追い詰められた側が「一発逆転」を狙うことは十分に考えられる。

パキスタンは通常戦力ではインドに遠く及ばない。しかし、全米科学者連盟によると、核弾頭保有数ではインドの推定180発に対し、同170発とほぼ拮抗(きっこう)している。

インドに反撃、パキスタン首相「核会合開催」 軍事施設標的で緊張激化(時事通信)

「何か動機はないか」と探していたところIMF融資について因果関係抜きに投稿している専門家がいた。

パキスタンの経済は破綻寸前だが、5月9日にIMFからの融資が承認されていた。この時にインドが棄権しておりアメリカ合衆国の強いバックアップを必要としているという事情がある。つまり、パキスタンが「テロ支援」を名目に融資を妨害したインドに対して恨みを募らせていたと考えることもできる。なお伊藤氏は協議がすぐに始まるという話ではなく「単にエスカレーションを防ぎたかっただけなのではないか」とも投稿している。

ルビオ国務長官は、こうした複雑な情勢を読み解き、事態を穏便に解決したものとみられる。トランプ大統領とバンス副大統領が介入に積極的に反対しなかったことも幸いしたのかもしれない。トランプ大統領、ナバロ顧問、バンス副大統領などが事態に関心を持ったとしても事態を複雑化させるだけだ。

むしろルビオ国務長官の足を引っ張り更なる事態悪化に繋がっていたのかもしれない。パキスタンは政治・財政が不安定。またインドも「反イスラム」を通じて国内多数派をまとめているという事情がある。

仮にルビオ国務長官がアメリカの政府からいなくなってしまうと(偶発的なのか意図的なのかは別にして)世界情勢はさらに不安定化しそうだ。

と同時に世界には放置されている紛争が多数ある。個人的には核兵器は廃絶されるべきだと思うのだが「核兵器があるからこそアメリカ合衆国の気持ちを引き付けることができた」のも事実だ。経済的に破綻寸前の国が核兵器を持っているという現実は重く受け止められる必要があるだろう。

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