69名の自民党議員の嘆願を受けて、石破総理が自民党幹部と会談し「消費税減税を行わない」と宣言した。このエントリーでは消費税減税の是非ではなく「日本人が議論ができない」問題を扱う。
まず消費税減税について考えを述べる。必要があれば下げればよいと思う。だが、そのためには「全体の中にうまく位置付けなければならない」。では「全体とはなんなのか?」ということになる。この時点で「消費税減税は絶対だ!」と考えている人は落胆して読むのをやめてしまうのではないか。
一方で「なぜかこの問題はもやもやが残る」と考える人もいるはずである。丁寧に分析してゆきたい。
石破総理は森山幹事長ら幹部と会談し「消費税の減税には、プラスとマイナスの面がある。やるべき政策なのか」と発言した。くわえてデメリットとしてシステム改修と財源の問題を挙げた。
もちろん、トランプ関税のように大統領の主観一つで税率を上げ下げすべきだとは思わないが、システム改修は「景気動向に合わせて」税率を調整するということにばれば市場原理に従ってシステム改修は進むはずである。つまり「財源の調整がつきませんでした」と自白しているに等しい。
だが「違和感を感じたポイント(もやもや)」は別のところにあった。野田佳彦代表が「なぜ物価高対策をやらないのか!」と発言している。ここで「そもそもなぜ物価高対策が必要なのか?」と感じた。
「気でも狂ったのか?」と思われかねない。だが政府は長い期間「インフレ誘導」を名目に日銀主導の金融緩和をおこなってきた。つまり現在の状況は政府の政策誘導の結果である。
「インフレと物価高は違うだろう」と指摘する人もいるだろうが、ぜひ一度辞書をひいてみることをお勧めする。物価が継続的に上がることをインフレという。
しかし日経新聞が「物価上昇「3%」の衝撃 政府・与党、日銀利上げ容認へ変心」という記事を出しているように、日本経済は現在の物価高に「衝撃」を受けている。
もともと安倍総理がアベノミクスをきちんと理解していたのかも今となっては大変に疑問だ。単なる財政ファイナンスの道具として「インフレ目標」を掲げたのではないかと思う。しかしながら今となっては安倍総理の認識などどうでもいい。
政策が実現した結果不都合が出たらどうするのか?という点を全く議論しないままに話を進めてしまっているために後戻りできない状況になっている。このため石破総理は「デフレ」か「インフレ」か、石破首相と植田総裁の現状認識に齟齬とBloombergが書くように「現在の状況が何なのか」が説明できない。
このように全体像があやふやなまま議論が次第に複雑化してしまい後戻りができなくなっているのが今の状態といえるが、それでも議論に参加している人たちが現状認識を語ることはない。
にもかかわらず「物価が上昇しているのだから絶対に消費税減税しかない」とか「この先の財源に不安があるから絶対に消費税減税はできない」という議論が交わされている。
おそらく背景にあるのはこのさき数十年を支える日本の「稼ぎ方」がみつからない、すなわち「次の成長戦略が見えてこない」という問題なのだろう。その意味では宮沢税調会長がReHacQの中でつぶやいた「先進国はどこも衰退するのではないだろうか」という発言は気になるところだ。
このように縷々説明をしたがおそらくこれを読んだ後で一瞬頭が空白になり「いややっぱり」と元の主観に戻ってしまうという人は多いのかもしれない。
石破総理が現状を説明できないため、もともと主観に支配されがちな日本の世論はどんどん「やっぱり消費税減税しかない」という方向に流れつつある。このままの状況が続くならば夏の参議院選挙はかなり厳しいことになりそうだが、石破総理は「地方が楽しくなれば自ずと経済成長につながるはずだ」という根拠の明確でない見通しを繰り返すばかりだ。