トランプ大統領が中東訪問を目前にして「大きな発表を行う」と宣言した。これに先立ち「フーシ派が降伏を宣言したのでアメリカは攻撃を止める」と宣言している。オマーンが仲介しているものとみられオマーンも「合意」を発表した。
一方でイスラエルはフーシ派とイランに対する敵対姿勢を強調しており、イエメンの空港への報復攻撃も行った。フーシ派もイスラエルの脅威が続く限り攻撃はやめないとしている。
トランプ大統領のあいまいな外交姿勢は地域に新たな緊張をもたらす可能性がある。
「アメリカは世界から攻撃されている」とのありもしない認識のもとにトランプ大統領は一方的な関税政策を乱発した。大統領の言動から「議会承認を必要としない手軽な課税」と認識している可能性がある。ところがこの関税政策は大きなハレーションを引き起こすと、トランプ大統領は一転して「これは相手からディールを引き出すための高等戦術である」と説明を変えた。
一時は日本などがすぐさま「降伏」するものと見られていた。しかしアメリカ合衆国が「自動車、鉄鋼、アルミに例外措置は認めない」と宣言したことで石破総理が強硬姿勢に転じ交渉は暗礁に乗り上げている。中国は「協議を検討する」と態度を軟化させこそしたが決裁権のある人物とでなければ交渉しないという姿勢。韓国はそもそも大統領が決まっておらず、誰が有力な候補者になるのかもまだ明らかになっていない。
こうなるとトランプ大統領は成果を出すために新しい交渉相手が必要となる。サウジアラビア・カタール・UAを歴訪する前に「重大な発表を行う」とした。ただしその内容は明らかになっていない。
トランプ政権はイスラエルに引っ張られる形でフーシ派の攻撃をおこなっていた。
シグナル・アプリの通信記録からはヴァンス副大統領が「ヨーロッパのための軍事行動でありアメリカのためにならない」と反対していたことがわかっている。バンス副大統領は「自分はただ、また欧州を救うことになるのが気に入らないだけだ」と仲間達に表明していた。また漏洩した会話の中には「後日費用はヨーロッパに請求しろ」とトランプ大統領が支持していたという内容も含まれる。
今回の「和平」がどのようなものかはわからないが、そもそもトランプ政権はフーシ派の攻撃に乗り気ではなかったことがわかる。トランプ大統領としては「自分のおかげで海の安全が守られた」と強調し早く問題を片付けてしまいたいのだろう。
トランプ大統領は記者会見を起点に政策を考える傾向があり今は「経済政策のでの成果」を強調したがっている。このため、イスラエルの頭越しにイランに対する強硬姿勢を軟化させ、サウジアラビア・カタール・UAEと勝手にディールを結んでしまう可能性もある。
イスラエルは何とかしてアメリカ合衆国を戦争に引き摺り込む必要がある。「偶然」にもイスラエルはフーシ派からのミサイル防御に失敗し、報復としてイエメン首都の空港を空爆した。
今回の一方的な「ディール」は世界の株価や石油価格に大きな影響を与えるだろう。当然Bloombergはフーシ派に「本当ですか?」と確認している。
だが、トランプ氏のこの発言があった後、フーシ派の最高政治評議会メンバーであるムハンマド・ブハイティ氏はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで「ガザ侵攻とガザの人々の封鎖が終わるまで、結果にかかわらず」紅海とイスラエルでの作戦は「停止しない」と明言。
フーシ派「降伏した」、米国は攻撃停止するとトランプ氏主張(Bloomberg)
トランプ大統領はありもしない「安全保障上の脅威」を振りかざし関税を乱発した。さらにありもしない中国との対話をでっち上げ中国を呆れさせていた。今回もフーシ派は「我々は降伏などしておらず、攻撃を止めるつもりはない」と言っている。