ルーマニアで二回目の「大統領選第一回投票」が行われ極右「ルーマニア人統一同盟」を率いるシミオン氏が40%の得票を得た。これを受けてチョラク首相が辞意を表明している。中欧・東欧地域にもじわじわとポピュリズムが広がっている。
ルーマニアでは2024年11月に大統領選挙の第一回目投票が行われた。ここで無名のジョルジェスク氏が首位に立ったためルーマニア政界は色めき立ち、憲法裁判所が大統領選挙の無効を宣言した。外国勢力(ロシア)の干渉の疑いを排除できないというのが理由だった。
ところがこの宣言は却ってルーマニアの有権者を刺激したようだ。既得権が民意を無視していると捉えられたのだろう。
このほど二回目の「大統領選挙第一回投票」が行われたが、ジョルジェスク氏の後継を自認するシミオン氏が40%の得票を獲得した。
これを受けてチョラク首相は失敗を認めざるを得なくなり首相の退任を宣言し連立政権からの撤退も表明した。
シミオン氏はドナルド・トランプ大統領を称賛しており、EUの官僚主義に反対している。EUは主権国家同士の緩やかなつながりに改変されるべきだと考える「EU懐疑派」だ。
またBBCはシミオン氏は大ルーマニア主義者であると書いている。ルーマニアはかつてのモルドバやウクライナの一部にも版図を持っていた。
中欧地域では既にハンガリーが反EU色を強く打ち出している。東ドイツでは極右「ドイツのための選択肢」が勢力を伸ばし、オーストリアでも極右自由党(FPO)が躍進した。オーストリアではFPO中心の政権はまとまらず閣外協力に留まっている。ポーランドももともと反EU色が強かったがロシアのウクライナ侵略で今は沈静化している状態だ。またオランダも第一党は極右自由党(PVV)。ウィルダース党首は内閣には入らず首相は議員資格を持たない無所属のディック・シューフ氏が務める。
規制政党は極右の台頭をあの手この手で押さえ込もうとしているが、却って逆効果になることが多い。ルーマニアの事例はその最新の一例ということになる。
アメリカ合衆国ではトランプ大統領が連邦の官僚主義に反発する民意を代表し権限を州に戻そうとしている。同じような動きがヨーロッパの中心部に広がっている。