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石破総理がアメリカ合衆国と関税交渉をしても無駄な理由

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赤澤担当大臣からの報告を受けて石破総理は「関税に関しては譲歩も妥協もせず例外措置を求めてゆく」と宣言した。これは事実上「私は何もしません」という宣言になっている。

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共同通信が「【独自】米政権、相互関税の撤廃拒否 交渉を上乗せ幅縮小に限定」という記事を出している。政府に都合が悪いことは「独自」という形でマスコミに担わせるといういつものやり方だ。政権は都合の悪い事実から逃げ会見が必要ないリークに頼っている。

この記事のヤフーニュースコメントに「関税はアメリカ経済に極めて悪い影響を与えるのだからトランプ大統領は関税撤廃に追い込まれる可能性が高い」と指摘している人がいる。確かにそう思いたくなるがおそらくこれは正しくない。

映画関税についての記事で次のようにまとめた。

トランプ大統領はもともと通商拡大法(TEA)第232条に基づいた処理を考えていたが「各国がアメリカ合衆国の製品を差別している」と立証する必要があるため、は国家非常事態法(NEA)と国際緊急経済権限法(IEEPA)を使った。アメリカ合衆国は外国全般から攻撃を受けており大統領の緊急的保護が必要だという理屈づけになっている。

では日本ににだけ例外措置を認めるとどうなるか。アメリカ合衆国は世界から攻撃を受けているが「日本だけは例外である」と法的に示さなければならなくなる。

そもそも日本はアメリカ合衆国を狙い撃ちにした報復は行っていないのだから、それが終わったと証明することもできない。したがって法的に日本を例外とみなすことは技術的にできないのである。

識者は「トランプ関税はアメリカの経済に壊滅的な打撃を与えるから関税政策を撤廃せざるを得なくなる」と書いているが、技術的に関税の撤廃は不可能だ。

ここで「外務省や経済産業省はこの背景事実を理解しなかったのか?」という疑問が湧く。おそらく彼らはそれを理解しているのではないかと思う。

ここで残る問題は石破総理がこれを理解していたかどうかである。石破総理がこれを理解せず(あるいは外務省や経済産業省の忠告を聞き入れず)に実現不可能な目標を設定してしまった可能性はある。「日本は交渉の先頭に立っている」とベッセント財務長官に指摘されその気になってしまったのかもしれない。

また最近では身内との会食を盛んに設定しているという報道もある。石破総理の交友関係は極めて限られており、外務省や経済産業省などと広く情報収集をしていない可能性もある。

おそらく野党が石破総理に聞くべきなのは「どうやって交渉するか」ではない。現実的にできもしない目標設定の妥当性を問うことだ。

なお、このアメリカ合衆国は世界から攻撃されているというトランプ関税の前提はウォール・ストリートの既得権を破壊している。ウォール・ストリート代表のベッセント財務長官は「ベッセント財務長官、米国は世界資本にとって「最優先の投資先」」と強がって見せたが、実際には例外的に好調なアメリカ合衆国の投資市場を破壊する共犯者になっている。

ハイテク企業のトップたちも盛んにトランプ大統領を支援し就任式では最前列で新しい大統領の誕生を祝ったがその結果多額の資金を失っている。

確かに関税はアメリカ合衆国にはメリットはない。あえてメリットを挙げるとするならば「アメリカの中間層が「ウォール・ストリートざまあみろ」と感じることができる」点くらいだろう。そもそもアメリカ合衆国の繁栄を享受しているアメリカ人がそれほど多くなかったということだ。

映画関税に関しても「民主党地域を攻撃しているのではないか」という指摘が出ている。確たる根拠はないがハリス候補をアメリカのセレブたちが支援していた時期から「普通のアメリカ人のセレブに対する嫉妬」は始まっていた。

つまりアメリカ経済が滅茶苦茶になってもそれでトランプ大統領の関税政策が変更されると考えるてもあまり意味がない。むしろ持っている人が悔しがれば悔しがるほど喜びを感じてしまう人が多いからだ。

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