時事通信が「参院選後に「玉木首相」? 本人にずばり聞いた◆支持率急上昇の国民民主はどう動くのか【解説委員室から】」という記事を出している。ゴールデンウィークで国内政治の記事があまりないので読んでみることにした。
要旨は概ね次のようになる。要するにSNSというニッチを選択した結果「当たった」というような内容だ。政治的には未開の大地だったのだろう。
- 主要世論調査が「視力検査」状態だったので頑張ろうと思った。SNSをうまく使っているねと言われるが仕方ない選択だった。
- 今の政治はシルバー民主主義だがこのセオリーに逆らって若者にターゲットを絞ったので選挙を重ねるごとに見つけてくれる人が増えた。
- SNSは何かのきっかけで注目されるようになる。選挙直前に準備するのではなく地道に頑張るべきだ。政策については「一定の整合性」を意識している。
- 消費税の再値上げが難しいというなら「政令」でできるようにすれば良い。
- 参議院選挙ではできるだけ空白区をなくし積極的に候補者を立てて行きたい。立憲民主党とは調整していない。
- 個人献金は善で企業献金は悪と思わないが政党法はきっちりと整備すべきだ。
- 内閣不信任案を出すなら立憲民主党は具体的な首班指名の覚悟を持つべきだ。
- 首班指名については意識せず選挙で勝つことを最優先に掲げたい。
直接論評せず補助線的に記事を参照したい。
現在政治と有権者の距離が乖離しつつある。この結果生まれたのが少数与党状態だ。結果的に立憲民主党の不信任案が通ってしまいかねない(つまり民主党系の総理大臣がうまれかねない)状況になっている。
自民党は派閥内で政争を繰り返してきたが民主党系には派閥のような構造が作られなかった。結果的に野田佳彦、枝野幸男、江田憲司、前原誠司、玉木雄一郎氏らが世論に直接訴えるような構造が作られている。この中で唯一SNSによって成功したのが玉木雄一郎氏である。
これまでは不信任案が通ることはなかったので立憲民主党は安心して不信任案を出すことができていた。ところが少数与党状態になると「事情によっては不信任案が通る」可能性が生まれている。
国民民主党は自民党・公明党に厳しくあたる政党という立ち位置を維持しており「立憲民主党が不信任案を出さないのはなぜなのか?」と問うている。一方で不信任案に賛成するとも言っていない。
今政権をとってしまうと「結果責任」を問われるかもしれない。このため「野党の首相候補」になることには慎重で態度を明らかにしなかった。現在の政治状況では結果に責任を取らず外側から批判している方が楽なのだろう。
一方、公明党のように「総理大臣を担いで権力側にいるメリットを最大限に享受したい」という政党はある。公明党にも玉木雄一郎待望論があるそうだ。だがこれも考えようによっては「失敗すれば使い捨て」にされるだけだ。
ライバルを抑えて組織のトップに登りつめたいという人は多く政権交代の可能性も生まれているが、実は誰も総理大臣になって責任は取りたくないのだ。経済成長の芽も見えずアメリカ合衆国との関係も悪化しつつある。
一方で有権者の側にも不思議な状況が生まれている。
国民民主党は中高年と現役世代を分断することによって議席を伸ばした政党だ。しかしヤフーニュースのコメントの中に「氷河期世代がZ世代を敵視するコメントが増えている」との表現があった。
実際に。TBSは「「参院選前のパフォーマンス」玉木代表の肝入り?「若者減税法案」に波紋 国民民主党内からも反発の声あがり火消しに躍起【edge23】」という記事を出している。
「「いいね」で変わる政策 連合、玉木氏らに不満「SNSばかり見て」」と連合の幹部たちが苛立つように玉木雄一郎氏はポピュリスト(いいねで政策が変わる政治家)だが、世界的には中間層が没落し「自分達はもっと政治的に重要視されてもいいはずだ」と苛立つ人は増えている。つまり「ポピュリスト」が悪いわけでも珍しいわけでもない。
しかしながら玉木雄一郎氏の情報発信は現役世代のさらに細分化に進んでおり「ポピュリスト」としても成功しているとは言えない。
しかし、それでもそもそもSNS世代に向けて直接働きかけるメジャー政治家が玉木雄一郎氏しかいないのも確かだ。玉木雄一郎氏に期待する人は何に期待するのか是非聞いてみたいところだと感じる。
Comments
“あなたはどう思う? 玉木雄一郎総理大臣待望論” への4件のフィードバック
トランプ大統領みたいな滅茶苦茶な存在を見ていると、やけくそ的に玉木雄一郎氏を総理大臣にと待望しても仕方ないんじゃないかなと思ってしまいます。ポピュリズムによって排除される可能性がある属性の人からすればたまったもんじゃないと思いますが。
SNSを使った草の根運動自体は、若い世代や直接話を聞きに行っても本音を話せない人たちが何を望んでいるかを理解するのに役に立つとは思います。しかし、陰謀論者に遭遇した時に、どういう対応をすればいいのかが分かりません。下手に陰謀論者を利用して支持票を集めようとすれば、さらに分断が深まってしまうなと思います。
最近、玉木さんのYouTubeを見ていないんですけど、個人的には陰謀論にまでは踏み込んでいないように思えるんですけどね。実際どうなんでしょうね。
陰謀論にまで踏み込んでいたら、ここまで支持されるとは思わないですね(思いたくもありませんが)。ただ、うまくいかないと陰謀論に手を出す可能性は否めません(玉木氏に限ったことではないですが)。そういう陰謀論に踏み込んでいるのは立花氏あたりでしょう。玉木氏が彼との距離感をどうするのかも少し気になります。
陰謀論は(多分)メインストリームを諦めた人たちの居場所になっていますが「自分はメインストリームだ」と思いたい有権者の人の方が多いはずです。その意味ではまだ日本の有権者は穏健だと言えますよね。