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ドイツ政府がドイツのための選択肢(AfD)を極右指定

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ドイツ政府が最大野党「ドイツのための選択肢(AfD)」を極右指定した。通信傍受などが可能になる。なぜかルビオ国務長官がこれに反発しておりドイツ外務省が反発している。イギリスでも地方選挙が行われリフォームUKが躍進した。トランプ政権を筆頭にして中間所得者層の不満を背景にした移民排斥の動きが各地で起きており「極右思想」と指定するだけでは収まらなくなっている。

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急速な経済の落ち込みを経験したドイツでは既存政党への反発が強まっている。この受け皿になったのがドイツのための選択肢である。イスラム系などの新しい市民を「二級ドイツ人」の地位に止める政治的な主張を持っていると当局は見ている。

また、イスラム系移民の出自を持つドイツ国民を平等な市民とみなしていないとも主張。こうした姿勢を受けて個人や集団が「中傷され、悪者扱いされて」おり「非合理な恐怖や敵意」を煽っていると指摘した。

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定(Reuters)

この決定にルビオ国務長官が反発している。トランプ政権は排外主義を強めており出生地主義の廃止や「移民の血」が入っているアメリカ市民の追い出しなどの排外主義政策を既に始めておりAfDの主張と重なるところがある。

ルビオ国務長官ももともとはヒスパニックの出身だが、こうした出自ゆえにヨーロッパ系やトランプ政権に対する忠誠心を殊更強調する必要があるのか、あるいは心から排外主義に傾倒しているのかなどはよくわからない。いずれにせよAxiosはルビオ国務長官は急速にトランプ大統領の信任を得ているようだとしている。

ただしこうした傾向に傾いているのはアメリカ合衆国とドイツだけではないようだ。イギリスで多くの地方選が行われたがリフォームUKが躍進した。かつて保守党支持者だった人たちがリフォームUKに乗り換えているとBBCは伝えている。おそらく極端な排外主義者ではなく普通のイギリス人がリフォームUKに乗り換えているのではないか。いずれにせよ労働党は保守党離反者の受け皿になれていないが、これは自民党に置き換えても同じようなエピソードが作れそうだ。

「戸別訪問先ではどこでも一緒だった。冬の暖房費と個人自立手当(PIP、障害者給付の意味)の話題ばかりだった」と、この労働党関係者は話した。

ファラージ氏率いる野党「リフォームUK」が大躍進 英下院補選と地方選(BBC)

2025年の総選挙でドイツのための選択肢が第1党になった地域は主に旧東ドイツ地域だった。アメリカ合衆国でトランプ大統領を支援した地域は内陸部である。また地方選でリフォームUKに流れたのも都市近郊地域である。このように先進的な地域に置いてゆかれているという相対的な喪失感がなぜか移民排斥に向かっているという特徴がある。

一方でオーストラリアでは左派与党労働党が過半数を獲得した。中国の景気低迷に伴う経済不調が当時の与党のせいにされその信頼を回復できていないことがわかる。カナダでも与党が政権を維持したが背景にあったのはトランプ大統領の脅威だった。

このように先進国では軒並み中間所得者の不満が溜まっており外に敵が設定できなければ「移民」などの弱者に苛立ちが向かうことがわかる。

と同時に「日本でも同じ図式が成り立つのか」という疑問が生じる。

確かにクルド人問題など一部激しい排斥主義の動きがあり自民党は過去の問題発言で知られる杉田水脈氏を選挙で優遇しようとしている。移民の数が少ないためにこうした動きが一般レベルに広がることはないだろうが自分達は優遇されていないという苛立ちを募らせる「普通の日本人」は多い。

さらに長引く景気低迷はインフレを伴ったスタグフレーションに発展しようとしている。この不満をいち早く感じ取ったのが国民民主党のポピュリスト玉木雄一郎代表だった。

しかし彼のポピュリズム戦略は2つの問題を抱える。第一に日本は戦時体制の残滓とも言える手厚い年金・健康保険制度がある。この国家社会主義的な制度に「守れられている」と考える人も少なくない。消費税は医療福祉の原資と言われてしまうと既得権益者は改革を躊躇する。

TBSが「「参院選前のパフォーマンス」玉木代表の肝入り?「若者減税法案」に波紋 国民民主党内からも反発の声あがり火消しに躍起【edge23】」という記事を出している。

この記事の要旨は現役世代も実は若者と氷河期世代という分断があるというものだ。

つまり日本には中間層というまとまったセグメントはなく、中高年・氷河期世代・30代以下の若者という年齢による分断がある。これが結果的にポピュリズムの台頭を防いでいる。

一方でジェンダーによる分断もある。おそらく女性たちは政治に期待することを諦めており静かに社会体制から離反している。自民党も野党も「家族の一体感や戸籍の大切さ」を訴えるが、実際には「家の墓に入りたくない」と考える女性は多く「大手小町」では人気のコンテンツになっている。また地方の息苦しさを逃れて都市に逃れる女性も多い。

彼女たちは決して自分の意見を政治にぶつけることはないが、少子高齢化の加速という意味ではおそらく最も重要なドライバーとなっていると言えるだろう。

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Comments

“ドイツ政府がドイツのための選択肢(AfD)を極右指定” への8件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    日本のジェンダーによる分断はネット上(特にサブカルチャー系)を見ると強く感じますね。日本では自己主張することに対してハードルが高い傾向がありますが、女性だとそれが顕著な感じがしますね。女性の抱える社会問題に対して問題提起すると、私を認めろと強い感情を剥き出しにして攻撃していると感じる人もいて、それに対して平伏させたいと思う人もいて驚きます(思うだけでなく実際に嫌がらせをして実行する人もいます)。こういうことに負けずに活動する女性もいますが、大半の女性はこういうの現実を見てしまったら口をつぐんで静かに脱出してしまうんだろうなと思いました。

    選択的夫婦別氏制度も1996年に法制審議会が導入を答申しているらしいようですが、いまだに決まりそうもないですね。夫婦別姓を望む人はほとんどいないと言っている人がいました、私の推測だとむしろ導入したら別姓を選ぶ家庭が結構いると思っているからこそ、保守派が反対しているんじゃないかなと思いました。おそらく彼らも肌感覚で、別姓を望む家庭が増えてると感じ取っているのでしょう。

    1. そうですか。普段自己主張しない分だけ、誰か(他の人)にスポットライトが当たると足を引っ張りあってしまうんですかね。

      1. 細長の野望のアバター
        細長の野望

        それもあるとは思いますが、社会問題を提起する人を平伏すると、YoutubeやSNSで再生数や閲覧数やコメント数が稼げることで、日常生活で満たせない承認欲求が満たせてしまうことも理由なのかなと思いました。

        1. 匿名を希望のアバター
          匿名を希望

          昔から不満の代弁者として振舞ってる人が絶大な支持を得たりしてましたからね。
          ちやほやされたくてたまらない人がやったら抜け出せなくなるでしょう。

          1. どんどんエスカレートしちゃうんですよね。

        2. そういえば、議論=負けを認めさせることみたいな前提の質問をQuoraでよく見る気がします。アレ、なんでそうなっちゃったのかをよく考えるんですけど、結局よくわからないんですよね。

          1. 匿名を希望のアバター
            匿名を希望

            その辺は謝ったら負けと一緒でしょう。誤りを認めるなり相手の言い分を
            認めるなりする事は自分が優位に立てなくなる=自分が弱者になるとか
            思い込んでいるんじゃないかと。
            あとは人を屈服させた時に得られる優越感の中毒になってるとか。
            とにかく自分が全ての主導権を握りたいんでしょうね。

          2. なるほど