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今度はローマ教皇 肥大し続けるトランプ大統領の自己愛

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自己愛性パーソナリティ症は、優越感(誇大性)、賞賛されたいという欲求、および共感性のなさの広汎なパターンを特徴とする精神疾患です。

ネット検索するとこんな定義が出てきた。今はアメリが合衆国は国全体がこの症状に侵されているのかもしれないと感じる。トランプ大統領がローマ教皇の姿を投稿した。また自身の誕生日を祝うための壮大な軍事パレードも計画しているとされている。さらに退役軍人を労う祝日も「戦勝記念日」に変えたいようだ。

この自己愛を利用した人はトランプ政権では出世できる。その筆頭格がルビオ国務長官である。かつては選挙戦のライバルだったが今やトランプ大統領がもっとも信頼する閣僚になった。

ただし政権の肥大した自己愛はやがてアメリカ合衆国の国際的地位を大いに低下させることになる可能性があると感じる。

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トランプ大統領はかつてガザ地区を金ピカにした動画を投稿したことがあった。この時には反トランプ派の反対抗策なのではないかと言われた。生理的な嫌悪感を惹起するからである。

しかしトランプ大統領とその支持者たちはこれを「賞賛」と考えている。このように「トランプワールド」の住民たちの意識はその外側とは大きな乖離があるのが特徴だ。内部は極めて強い自己愛で満たされているが外から見ると醜悪で歪んだもののように見える。

トランプ大統領は過去に「次の教皇は自分がふさわしい」と言っていたがそれが叶わないのならばニューヨークの枢機卿(極めて保守色が強いと見做されている)がふさわしいとしている。カナダの総選挙でも自分への投票を呼びかけておりトランプ大統領の自意識は一貫している。世界は全て自分の価値観で満たされるべきだと考えているのだ。

事実The Atlanticのインタビューでは「私は国と世界を動かしている」と語っている。原語はRUNだが「経営する、支配する」という含みを持つ。

この延長として軍関係にも目立った動きがある。

まず自身の誕生日に合わせて壮大なパレードを計画している。陸軍創立250周年と同じ日なのだそうだが、AFPは自身の誕生日に合わせたパレードのついでに250周年を祝うという見出しにしている。マクロン大統領のパレードを見て「自分もこういうものがやってみたい」と考えたのがきっかけだったようだ。時事通信は誕生祝いがメインで「ついでに」陸軍記念日も祝うとの見出しを掲げている。

トランプ氏は1期目に仏パリでフランス革命記念日の軍事パレードを参観し、自国でも首都ワシントンで軍事パレードを開催する案を提示していたが、国防総省が、9200万ドル(現在の為替レートで約133億円)の費用がかかり、戦車をはじめ、重量級の軍用車両の走行で道路が損傷する可能性があるとの懸念を示したため、実現しなかった。

米、6月14日に軍事パレード実施 トランプ氏誕生日(AFP)

また2つの戦勝記念日を作る構想が進められている。1つが第一次世界大戦の戦勝記念日で、もう1つが第二次世界大戦の戦勝記念日だ。

日本では5月8日にはまだ日本は降伏していないと「歴史認識」を問う記事が出ているがトランプ大統領は特に日本のことは気にしていないようだ。

ただしインパクトとしては退役軍人記念日を「第一次世界大戦戦勝記念日」に戻す動きの方が大きいようである。

トランプ大統領は過去の戦没者や負傷兵を軽んじる発言を繰り返してきたとされる。トランプ大統領は自身の美しい世界を飾る勝利は大好きだ。しかし、そのために犠牲になったものは「惨めな敗残者」であり視界から消え去るべきだと考えている。これもガザを所有しリビエラのようにしたいという構想に似ている。ガザの難民は周辺国に追い出してガザをリゾート地に変えたい。

他者への配慮と共感を欠いた過剰な自己愛的感覚といえるだろう。

日本ではトランプ政権は低所得のアメリカ人に支えられているのだろうと考える人もまだまだ少なくないが、選挙キャンペーン中の動向を見るとむしろ中間所得者層の救世主と見做されている。主に移民排斥とアメリカへの製造業回帰を望んでいるような「普通の」アメリカ人たちだ。

今回のトランプ大統領の予算教書がそのまま実行されると低所得者にはかなり重要なインパクトを与えるが、中間所得者は「努力が足りない人が困っているだけ」と考えてそのままトランプ大統領を支援し続けるかもしれない。

現在のアメリカ合衆国のマジョリティは自分達だけは特別であるべきだという自意識とその特別であるべき自分達が優先されてこなかったという苛立ちを併せ持った状態になっていると考えられる。これが自己愛の肥大したトランプ大統領と奇妙な共鳴関係を作り出しているようだ。

こうした流れに乗ったものがトランプ政権では生き残る。その筆頭格がルビオ国務長官とヘグセス国防長官だ。ルビオ国務長官は排外主義に賛同しドイツのAfDの極指定を厳しく糾弾してみせた。かつてトランプ候補と激しくやりやっていたが今では個人的な会話も交わすほどの中になっているとAxiosは伝えている。

ヘグセス国防長官は機密情報の取り扱いについてマスコミから糾弾されている。しかし壮大な誕生日のお祝いを企画してトランプ大統領に提案することによって強い忠誠心を示すことができる。

自己愛を守ることは極めて重要なのだが周囲と軋轢を生じ始めると「疾患」と見做されるようになる。そもそもこの症状に陥りつつあるのがトランプ大統領とトランプ政権なのか、あるいはアメリカ人なのかという問題がある。さらにこれが単なる「大国のエゴ」なのかアメリカ合衆国の国際的地位の凋落につながるのかはまだまだ議論が分かれるところなのかもしれない。

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