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交渉下手な日本と交渉上手な中国 対米関税交渉で

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切り取られて怒られそうなタイトルを付けてみた。日本の対米関税交渉が難航している。背景にあるのが日本の交渉スタイルである。中国はおそらくかなりここから学んでいると見られ対米交渉を「考えても良い」と態度を軟化させている。

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日本人は表立った対立を嫌い関係性構築を通じた付き合いを求める傾向がある。このため利害関係や価値観が異なる相手との共存が難しい。大陸という性質上異文化との接触や衝突が多かった中国とは歴史的背景が異なる。

赤沢大臣は記者団を前に「交渉がパッケージだというのがお作法なので」と謎の理論を展開した。

これを聞いてこの人は一体何を言っているのだろうか?と感じたが徐々に「関係者の話」として、自動車と鉄鋼・アルミが交渉対象から外れるという情報が出てきた。

対立を嫌う日本人は実名ではアメリカ合衆国と良い関係を築きつつ匿名ではこれは飲めないディールだと表現したかったのだろう。

結果的に石破総理はこの報道を受ける形で現在のディールはとても飲めるものではないので「ゆっくり急ぐ」と主張している。

石破総理の狙いは「石破政権は何もやっていない」という野党の批判回避であり実際には自動車と鉄鋼・アルミ関税の回避については真剣に考えていなかったのだろう。

党内では農業関係者などから「製造業のために農業を犠牲にすべきではない」という声が上がっており党内意見はまとまっていない。時事通信の別の記事を読むと自民党・公明党とも「アメリカに妥協するのがトクなのか、安易な妥協はソンなのか」で頭が一杯になっているようだ。損得勘定で頭がいっぱいになり結果的に何も決断しないという「日本病」が発症する可能性が高い。基本的な国家戦略がないため「変化は得なのか損なのか」と考えてしまい結果的に何も決められなくなってしまうのである。

一方で中国は対応を軟化させた。これまで交渉に応じる予定はないとしてきたが一転して検討してもいいといっている。さらに関税の一部品目を適応除外する。この適応除外は「発表しない形」で行われるようだ。

中国は先発組からかなり学んでいるようだ。すでにご承知の方も多いだろうがベッセント財務長官ら交渉団には最終決定権がない。特にUSTRは単にディールを引き出すだけの装置であり交渉をしても無駄な相手である。中国はここから学んでいて「支持を得た=決定権のある」代表としか交渉しないと言っている。

だが、依然としてハードルは残っている。中国側は、トランプ大統領の支持を得た人物を、米国側の交渉窓口として指名することを求めており、この交渉担当者が最終的にトランプ大統領と習近平国家主席が首脳会談で署名できるような合意の準備を主導する道筋を描いている。

米中に雪解けの兆し、通商協議始動へ期待高まる-進展にはなお障害(Bloomberg)

極めて興味深いことだが、日本は同盟国ではあるがアメリカとの関係改善は特に望んでおらず、むしろ中国の方が関係改善を望んでいる。米中の経済的な結びつきが強くなっていることがわかる。さらに日中とも「表向きの発表」と「裏向けの発表」を使い分けているがその極性は真逆だ。

老害化したSNSユーザーは「日本は交渉が下手」という一文に血が昇り不快な気分になることだろう。一方で新しい情報を学べる人は「相手の機嫌を損ねない」というスタイルは少なくとも対米交渉ではあまり意味がないと学ぶことだろう。新しく学べる人は変化に対応できる人だ。

年齢にかかわらず老害化するかしないかは「様々な情報からどれだけ学びを得るか」という貪欲さに関わっているのかもしれない。老害化した人は自分の価値観に合わない文章を見ると自動的に相手に対する攻撃プランを発動させてしまうが、学ぶ姿勢のある人は同じ情報から教訓を抜きとり行動指針を柔軟に更新してゆくのだ。

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Comments

“交渉下手な日本と交渉上手な中国 対米関税交渉で” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    「日本は同盟国ではあるがアメリカとの関係改善は特に望んでおらず」と書いてあるところを読み、個人的にはアメリカとの条約が解消されたわけでもないし(日米安全保障条約に不満を持っているみたいですが)、現在アメリカとの間に生じている問題は、トランプ大統領個人によるものが大きいと思っているからなのかなと思いました。トランプ大統領がやめたら元に戻るだろうと思うのでしょう(まるで災害みたいですね)。こういう風に考えてしまうのは、正常性バイアスが強く働いているんだなと自分でも思います。

    1. 左派に対する反発を除けば、日米同盟を選択する理由って「最も安上がりだから」ということだと思うんですよね。