本業の不振により投資家などから圧力がかかっていたイーロン・マスク氏が連邦政府の仕事から手を引く準備を始めた。当初約束されていた成果が出ていないことを認め、今後は週に1〜2度程度の関与になると言っている。
この中でマスク氏は自らをブッダに喩えている。天才の考えることはわからないものだと感じる。なにか偉大なことを成し遂げるかもしれないし、そのままアメリカ合衆国を崩壊させてしまうかもしれない。全ては結果論であり、彼が天才なのか狂人なのかはまさに「紙一重」と言ったところだろう。
イーロン・マスク氏が連邦政府の仕事にかかりきりになってからテスラの業績はかなり落ち込んでいた。不買運動などの影響で利益率が前年同月比70%の落ち込みなどと報道されていたが、そもそもテスラ・トラックの品質にも懸念が指摘されていたようである。マスク氏は否定しているがテスラのCEOを退任すべきだと言う声もあったようだ。取締役会が後任CEO探しを人材紹介会社に依頼したとされており、アメリカ合衆国ではCEOも人材紹介会社が探すのだなと感心させられる。
マスク氏はインタビューの中で、DOGEプロジェクトは当初期待されていたほどの成果を出していないと認めている。ただし「成果を上げるためには2年では足りない」とも言っており単に失敗を認めたのかプロジェクトの延長を求めているのかはわからない。
いずれにせよ多くのトランプ政権閣僚と違って失敗を恥ずかしいことだとは思っていないようだ。むしろ、挑戦を諦めることを恥ずかしいことだと感じているのだろう。
マスク氏はインタビューで興味深い喩えを使っている。仏教はブッダの死後にも宗教として継続している。つまり創始者がいなくなっても宗教としての精神は残っているというわけだ。この喩えからマスク氏はDOGEに宗教的な使命感を感じているということがわかると同時に、自分は全てを達観したブッダのような特別な存在だと考えていることになる。
“DOGE is a way of life, like Buddhism,” he said. “Buddha isn’t alive anymore. You wouldn’t ask the question: ‘Who would lead Buddhism?’”
Interview: Musk says DOGE may be here to stay(Axios)
Asked again whether someone would replace him at DOGE when he steps back, Musk replied, “Is Buddha needed for Buddhism?”
Musk says DOGE has made progress but ‘not as effective as I’d like’ after first 100 days(ABC News)
トランプ大統領は「自己愛」の人でありその狂気を合理的に理解するのはさほど難しくない。トランプ大統領の取り巻きたちにも他人の痛みに共感性がない狂った発言をする人が多いが結局は自分がいい思いをしたいだけなのだろうと思う。
一方、それとは明らかに異なっている人達がいる。1人は今も陰謀論に固執し「自閉症の発生源」を突き止めようとしているロバート・ケネディJr 保健福祉長官だ。
天才か狂人かわからない人を「紙一重」と言ったりするが、マスク氏はまさにそんなカテゴリーで他の政権幹部や保健福祉長官とも異なる。使いようによっては世界を変えるほどの偉業を成し遂げるかもしれないしあるいは世界を滅ぼしてしまうのかもしれない。