カナダでは現在総選挙が行われている。当初保守党が政権を奪還するのではないかと言われていたのだがトランプ大統領の登場で自由党にやや有利な状態が続いているそうだ。投票が締め切られるのは日本時間で29日の午前11時ごろになるという。
そんななかトランプ大統領がカナダの総選挙に介入した。誰か意中の候補を支援したのかと思ったのだがそうではなかった。「自分に投票しろ」と言っている。
もとからおかしな人だとは思っていたが「ここまでだったとは」という線が毎週のように更新されている。
カナダの総選挙は28日投開票。日本との間には時差がある上に東西に広い国なのでブリティッシュコロンビア州で投票が締め切られるのは日本時間の29日午前11日になるそうだ。タイムゾーンの数は6あるという。
もともとはカナダ版トランプという評価もあった保守党のポワリエーヴル氏が優位とされてきたが、最新の世論調査ではトランプ大統領への強い態度を打ち出した自由党カーニー首相への支持がやや高い状態になっているという。トランプ関税の影響などで対米感情が悪化したことで自由党に有利な展開になっている。
そんななかトランプ大統領が自身への投票を呼びかけたとABCニュースが伝えている。
北朝鮮風に加工すると次のような感じになる。
偉大なるトランプ大統領閣下はカナダが51番目の州になるための寛大な計画を表明なさった。大統領に投票すればカナダは世界でも特別な国の一部になることができる。
トランプ大統領はカナダが51番目の州になれば世界で最も強力な軍隊の庇護を得ることができる上、所得税も半分になり、カナダの産業はますます栄えるであろうとカナダ市民にとって寛大な計画を打ち出した。
もちろんABCニュースはこのような書き方はしておらず「そもそも選挙に出ていないトランプ大統領にカナダ人が投票することなど不可能だ」と言っている。またトランプ大統領の関税政策はインフレを招くという了解があり「アメリカを混乱に陥れている大統領がカナダを救えるはずがない」という含みもあるかもしれない。しかし、トランプ大統領の目線に立てばこれは慈悲深く寛大な独裁者の思し召しということなのだろう。
またこの中でトランプ大統領は独自の経済理論も示している。
貿易不均衡は「カナダへの補助金」にあたる。しかしカナダはアメリカの一部ではないので「補助金」は意味がない。
北朝鮮のような独裁国家では
トランプ大統領閣下は独自の経済方針を示された。我々はトランプ大統領の意志を汲み取りこの独自の経済方針の理論化を推進しなければならない。
と表現されるのだろう。
トランプ大統領は「モノ」だけに着目した貿易不均衡を損・得で捉えており、連邦補助金は調整金であるという前提を置いている。現在の経済学では受け入れられるはずもない理論だが、現在のトランプ政権ではトランプ大統領がこうだと言ったものが「真実」になる。
経済理論を熟知しているベッセント財務長官もこの狂気を元に自身の理論を再構築せざるを得ない。日米財務相会談では為替については議論されなかったと打ち出された。仮に日本が為替について要求があったとうっかり示唆すると「アメリカ合衆国は基軸通貨であるドルの価値を毀損しようとしている」との風評が広がりかねない状況だったことから、加藤財務大臣はベッセント氏とドルの信用を救ったことになる。
ただ、日本はトランプ大統領とアメリカの防衛に期待し続けるのであればトランプ大統領の方針を学び「理論」として精緻化した上で関税交渉に臨まなければならないということになってしまう。
「そんな無茶苦茶な」と思うかもしれないが、日本の外交と安全保障はもともと国連中心主義が立ち上がりつつある中で基地権益をアメリカが独占するために歪められたという経緯がある。
戦後80年になるが、日本はこれまでも「ご無理ごもっとも」でアメリカ合衆国に対峙してきた。実は日本もこの狂気に巻き込まれるか距離を置くのかというギリギリの選択を迫られているのだ。