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ドレスコード無視 トランプ大統領がブルーのスーツでローマ教皇の葬儀に参列

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ローマ教皇フランシスコの葬儀が行われ各国の要人が参加した。ローマ教皇庁はドレスコードを設定したと言われているが、日本やヨーロッパの伝統に従うならば黒い喪服を着ることは「常識」だ。

トランプ大統領はそこにブルーの背広で乗り込み星条旗のピンもつけていた。教皇に対する敬意に欠ける行動で世界から顰蹙を買っても仕方がない。

しかし、アメリカ合衆国ではそうは見なされなかったようだ。アメリカの常識は世界の非常識といったところなのだろう。

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通夜は「死を予期していない=何も準備していない」ことを示すために失礼のない範囲での平服着用が認められる。しかし、葬儀に黒以外の服装で出かけると「非常識な人だ」と見なされるのではないか。

日本の喪服はもともと白だったそうだが明治天皇の葬儀に集まった外国人弔問客に合わせて「喪服は黒」という常識が浸透していったと説明されることがある。もともと日本には死を畏れる文化がありヨーロッパの黒い喪服の伝統も容易に理解されたということなのだろう。

ところがアメリカ合衆国には葬儀に服装を合わせるという習慣がない。

時事通信の「トランプ氏、服装規定従わず 教皇葬儀に青いスーツ姿」という記事を読んだ日本人はおそらく「トランプ大統領には常識がないなあ」と考えたと思うのだが、アメリカの論評はそうなっていない。

時事通信はThe New York Timesの記事を参照しているが「一体どういうつもりでそう書いているのか」と戸惑った人もいるかもしれない。

米紙ニューヨーク・タイムズは「トランプ氏の服装は確実に一線を越えていた」と指摘。「『誰のルールにも従わない』という彼のメッセージを明確に伝えるものだった」と分析した。

トランプ氏、服装規定従わず 教皇葬儀に青いスーツ姿(時事通信)

では、他の記事はトランプ大統領の非常識ぶりを批判しているのだろうか。今回は2つの記事を読んだ。

FORTUNEの記事は「トランプ大統領は聴衆の中で目立っていた」と書いている。日本とヨーロッパの常識では葬儀の主役は故人であって聴衆を引き立たせるのが目的ではない。しかしアメリカ人の中には「世界中から要人が集まる中で、アメリカの大統領が目立つのはいいことだ」と考える人もいたのだろう。トランプ大統領は星条旗のピンをつけて参列しており、葬儀ではなく葬儀を利用した弔問外交で「アメリカ合衆国が一際引き立つ」ことを重要視していたのかもしれない。

根深い「アメリカ第一主義」「アメリカ例外主義」を感じる。

さらに「ドレスコードを守らなかったのはトランプ大統領だけではなかった」ということを示すために戦時下という特殊な状況にあるゼレンスキー大統領とバイデン前大統領(ネクタイが青かったそうだ)を引き合いに出している。つまり共和党と民主党の対立という図式に落とし込んでしまっており、ヨーロッパがトランプ大統領をどう見たかという目線は欠落している。

日本ではトランプ大統領というのは「(悪い意味で)特殊な大統領である」と理解する人がほとんどだと思うのだが、おそらくアメリカ合衆国には「アメリカは特別な国であり続けなければならなず」「どんな時でもアメリカ第一主義を貫くのが良い大統領なのだと考える人が多いのだろう。

こうした自分第一主義は、当然国内でも「自分達の考え方こそが優先されるべきだ」という万人闘争状態を生み出すだろう。誰も相手のことを考えなくなり、自分達が目立つこと・優先されることばかりを考えてしまうからである。

USA. TODAYはメラニア夫人について言及している。

ヨーロッパ(スロベニア)出身で自身もカトリックのようだ。当然ヨーロッパ人として常識を持ち合わせていたと分析するべきなのだろうが、そもそもUSA TODAY(空港などで置かれている忙しいビジネスマン御用達の全国紙)がその常識を持ち合わせていないために「メラニア・トランプさんのファッションは常に論争の的だった」という的外れの論評に接続している。人々はつねにメラニア夫人の服装から「隠れたメッセージ」を読み取ろうとしてきたというのだ。

アメリカ人は世界からの移民が集まっていることを論拠に「自分達こそ世界標準である」と主張することがある。だが、彼らが考える「世界標準」は実はアメリカのローカルコードに過ぎないことも多い。

トランプ大統領が常識を持ち合わせておらず、アメリカ国務省(外交を担当する)も外交儀礼を教えるスタッフがいないということがよくわかるが、そればかりではなく、アメリカ人全体が常識を持ち合わせておらず、なおかつ「世界のコードに従わないことで自分達の優位性を誇示したい」という傲慢な例外主義に支配されていることがよくわかる。

トランプ大統領の世界戦略を聞いていると「肥大化した自己愛で満ちている一方で他者に対する目線が徹底的に欠けている」と感じるが、ある程度はアメリカ合衆国の中に存在する「自分達は特別であり例外だ」という気持ちを代表しているのだろう。

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