ルビオ国務長官が「このまま数日以内にウクライナ情勢に進展が見られないのならアメリカは前に進む用意がある」と表明した。和平交渉の打ち切りを示唆したものと見られているが支援を打ち切るかどうかについては明言しなかった。ただしトランプ大統領の発言を見るとロシアの「力による現状変更」を容認し支援を打ち切る可能性が強く滲んでいるように思える。
トランプ大統領はウクライナの戦争を「バイデンの戦争」と位置付けておりこれがトランプの戦争になることを避けたいようだ。このため和平交渉を急いでいる。ウクライナとの間に極めて曖昧な鉱物資源ディールを結ぼうとしたがゼレンスキー大統領との間で口論が勃発し、その後鉱物資源ディールは結ばれていない。
ルビオ国務長官の発言は膠着状態に対するトランプ大統領の苛立ちをそのまま伝えたものと考えられるが、短期ディールに熱中し成果が出ないと放り出してしまうトランプ大統領の性格を考え合わせると本当に和平交渉から離脱する可能性は否定できない。
さらにこれがアメリカ合衆国の支援打ち切りに発展する可能性も捨てきれない。ルビオ国務長官はウクライナからの撤退は示唆していないがCNNは「トランプ大統領は支援を打ち切りヨーロッパが負担すべきだ」と考えているようだ。
If there’s no movement, the US official said, the administration will have to make significant policy decisions. Trump has threatened secondary sanctions and tariffs on Russia. But he has also said the US won’t continue to fund Ukraine indefinitely and that Europe needs to step up, the official noted.
US will abandon Ukraine peace efforts ‘within days’ if no progress made, Rubio warns(CNN)
関税問題において、ベッセント財務長官は表向きはトランプ大統領の発言を伝えつつ裏では「私的な」働きかけを通じて関税戦争の激化を抑えようとしていると伝わっている。
一方でルビオ国務長官が外交関係でどのような考え方を持っているのかはよくわからない。バンス副大統領の発言に対して天を仰ぐような表情を見せたとする報道もあるが表向きは完全にトランプ大統領の代弁者になってしまっている。
さらに断片的に「鉱物ディールが来週にも結ばれる」という話がある。ウクライナにはあるかないかもよくわからない鉱物資源をエサにアメリカの関心を惹きつけておきたいという気持ちはあるだろうが、アメリカ合衆国側のメリットはよくわからない。
加えて、アメリカ合衆国の「力による現状変更」に対してヨーロッパがどのように対応するかも未知数だ。
メローニ首相がホワイトハウスを訪れた。メローニ首相はトランプ大統領の文化戦争政策を賞賛しトランプ大統領は終始ご機嫌だったようだ。イタリアだけ関税を免除してもらうというディールを期待しているのではないかと思ったのだが、BBCによると、メローニ首相はヨーロッパで唯一トランプ大統領と話ができる地位を確保したいようだ。ヨーロッパにも抜け駆けを通じて利益を得たいという指導者がいることになる。
日本人は、アメリカ合衆国はディールを優先し同盟国・支援国を守ってくれないという教訓を「他山の石」とすべきだとは思う。だが、日本人が自分達が持っている信念体系(常識)を容易に変えることはないだろう。
ウクライナの事例はむしろ「対岸の火事」と認識されるのではないかと思う。トランプ大統領が対中国包囲網やウクライナディールに夢中になっている間は日本に対する風当たりはそれほど強くならない事もまた事実だ。メローニ首相とご機嫌な対話を終えた後「日本やイタリアとのディールは慌てて成立させる必要はない」と話したそうである。
ただしABCニュースを見ると「習近平は電話をとってくれないではないか」などと激しく詰問した記者に対して「中国との対話は進んでいる」などと主張していた。緊迫した記者とのやりとりの中で対中国包囲網という文脈がありその場しのぎの発言に終始している印象がある。
このため一つひとつの発言に注目してもあまり意味はないのではないかと感じる。