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関税交渉行き詰まりも補正予算なしも 実は石破総理にとって有利な展開へ

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トランプ大統領が赤沢経済性担当大臣との会談に急遽出席することになった。また自民党幹部たちの抵抗により補正予算の提出も行われないことが決まり「石破総理にとって不利な環境」が生まれている。おそらく学校や職場で話をするときにはこのラインで話を合わせるべきだろう。

だがよく考えると石破総理に有利な展開になっているのではないかと感じる。あとは石破総理個人がどの程度政権にしがみつく覚悟があるかどうかということになる。

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政府・自民党は補正予算の提出を断念したと伝えられている。この結果、現金・ポイント給付案は一旦立ち消えになった。参議院自民党では不満が渦巻いているそうだが、政権・政党幹部に多い財政再建派はばらまきに懸念を示している。

そもそも自民党・公明党単独で補正予算を成立させることはできず国民民主党や維新などの勢力と交渉をする必要がある。もともと政権基盤が脆弱な石破総理が党内をまとめ維新や国民民主党の要求を受け入れることは難しいだろう。「求心力が低下した」と言われかねない。

参議院選挙で負けてしまうとおそらく旧安倍派とタカ派を中心に選挙前に封印されていた「石破おろし」が加速することは間違いがない。また参議院選挙で負けなくても自民党・公明党が少数与党であるという現実は変わらない。

補正予算が封印されたことにより有権者の間には消費税減税の渇望がさらに高まる展開となると予想される。また関税交渉が不調に終われば日本の景気後退入りの確率も高まることだろう。

だが、危機が高まれば高まるほど石破総理にとって有利な展開が生まれる。「自分はどうしても消費税減税をやりたいが勢力が足りない」と主張することができるからだ。

先日ご紹介したように石破総理は消費税減税をやりたがっている。

おそらく現在の政治状況で「消費税解散」の可能性があるなどと言っても、学校や職場で笑われるだけだだ。だから、周りには言わないでいただきたいのだが、実際にこの線で探すと「週刊誌レベル」の記事が見つかる。

「石破さんはかつての石破さんではない。消費減税はインフレ促進となる可能性もあり、物価高に効くかどうか疑問だけど、これだけ支持率が低いと政策的にどうこうじゃなくて、政権にしがみつくことだけ。その意味では消費減税をやると思う。官邸には『ミスター財政再建』矢野康治元財務次官の一橋大の後輩・中島朗洋首相秘書官(54歳)もいるが、優等生タイプで真っ向から戦うこともないでしょう」

財務省ももう止められないと「あきらめムード」に…石破総理が目論む「消費減税」という秘策!(現代ビジネス)

最後は財務省と自民党税制調査会が反対するのではないかと思ったのだが、この記事には次のような言及がある。「財務省陰謀論派」の人は意外に思うのではないか。

「宮沢さんは内々の意見交換で『税制上は消費税を守るよりも、法人税を上げるほうが重要』『10%から5%の引き下げは実務上難しい。廃止にするほうが簡単』と話している。消費減税とバーターで、法人税などを引き上げる手は、充分あり得る。森山𥙿幹事長(80歳)も旧森山派出身の城内実経済安保相(59歳)が減税論を巡り、粘り強く説得中です」(前出・自民中堅)

財務省ももう止められないと「あきらめムード」に…石破総理が目論む「消費減税」という秘策!(現代ビジネス)

この記事を検証するにあたってはいくつかのポイントがある。

以前ご紹介したReHacQのインタビューを見る限り宮沢税調会長はカンや経験で周囲から寄せられるリクエストに対して的確な返答をしている。本人はかなり思い切った着想も持っているのだが「周りが追いついていない」のが現状のようだ。以前宮沢氏について「知識が古びており外的変化に対応できないのではないか」と書いたが、実際に対応できていないのは宮沢さんの周りにいる人たちだったようである。

さらにReHacQでは重要な指摘も出ている。自民党税調には地方に人を流したい宮沢さんのような人と都市に基盤を持つ甘利明氏のような人がいる。甘利明氏は法人税減税には反対で消費税増税も検討すべきという立場だった。また中小企業は新陳代謝すべきで税制もそれに対応すべきだとの考えを持っている。ただ、甘利明氏は現在は落選中だ。

現代ビジネスのこの記事と合わせると「宮沢さんが本音では法人から税金を徴収し税制全体を地方が有利なように作り替えたいと考えている」が「本人は無理に押し通すつもりはなく、機会が醸成されるのを待っている」ことが窺える。ちなみにReHacQにおいて宮沢氏は人口減少は政治が解決できる問題ではないと主張してている。つまり地方だけが衰退することを避けたいと考えているのである。

このまま石破総理が何も手を打たず、関税交渉もアメリカに打たれっぱなしということになれば国内では「どうしても減税をしてほしい」という要求が高まるだろう。ここで石破総理が「私は今までの自民党をぶっ壊して消費税減税を実現したい」と主張し「賛同する人は他の政党の所属でもいいから選挙でその旨を訴えてほしい」と呼びかけたとする。

各候補は「消費税減税はポピュリズムである」と主張し続けるか、あるいは「自分ももともと消費税減税賛成派だった」と主張するかの二択を迫られる。周りの候補者たちと議論をする時間もなく自分で決めなければならない。水は低きに流れるだろう。

ただこの戦略はおそらく自民党を崩壊させることになるだろう。また金融市場は「日本のポピュリズム化」を懸念し長期金利の高騰につながることになる。さらにこの選択は結果的に「地方だけが感じている痛みを都市にも背負わせる」ことにしかならない。

最終的には石破総理が自民党と共にずるずると地盤沈下し石破おろしを招くか、あるいは自民党を崩壊してでも権力にしがみつきたいのかという「私利私欲」が問題になるということが言えそうだ。

日本人は戦略的な意思決定をしない。空気に流されてしまうのである。

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