トランプ大統領の追加相互関税が数時間で撤回された。トランプ大統領の事実上の敗北宣言だった。一体この背景に何があったのかの分析が進むに従って「日本が戦わずして関税を撤回させた」ことがわかってきた。未曾有の国難にカミカゼが吹いたのだ。今後日本政府はこのカミカゼを有効に活用する必要があると言えるだろう。
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ABCニュースが「中国と日本が国債をダンピングした」と報じた。橋本龍太郎総理大臣が「売りたい衝動に駆られることがある」と発言し大騒ぎになったことから日本が国債を武器化することなどないだろうと思っていたので大変違和感のある表現に感じられた。
しかしREUTERSや時事通信などを読むと東京時間に国債が売られたのは確かなようだ。
追証を求められた機関投資家が泣く泣く手放したという説の他に、邦銀が売ったのではないかという説を唱える人もいる。また外国の投資家に課税する案が出ているため徐々に手放す投資家が現れたという説も紹介されている。橋本龍太郎のトラウマがあるため日本のメディアは「日本の投資家や政府が売った」という説は報じない傾向にあるのも興味深い。決してアメリカ合衆国を刺激してはいけないという強い自己規制が働くのだろう。久保田博幸氏の「邦銀が売った」説はその意味では一歩踏み込んだ説ともいえる。
アメリカ合衆国連邦政府は債務の増加に悩んでいる。このためアメリカ合衆国を再び稼げる国にしなければならないという問題意識があり「ドル安を通じて製造業国に戻そうとしている」と見る人が多い。ベッセント財務長官は基本的にこの戦略に従って日本に数々のディールを突きつけてくるものと考えられていて、円安阻止の為替介入にも好意的だとされている。
ところが今回はこの修正を急ぎすぎたため大元の債務問題に火がついてしまった、そこでベッセント財務長官が直接トランプ大統領を説得したようだ。
つまり、日本政府は意図しない形で国内勢の国債売りに助けられた形となった。ヨーロッパも報復関税の実施を一時見合わせしており協調してアメリカ合衆国に交渉を持ちかけることができる機会が生まれている。おそらく組織的な国債売りはないのだろうが「まるで何かに突き動かされたように」アメリカの財務状況に不安を与えた。国債金利は住宅・消費・車のローンなどと連動しており借金で生活するアメリカ人の懐を直撃する可能性がある。株や住宅などの資産価値の減少よりも借金が増えることの方がトランプ支持のアメリカ人にとっては脅威だったのだ。
昭和の日本人は懸命に働きその結果を貯金や米国債の形で蓄えている。今回これが意図せぬ形で崩れたことが日本政府にとって追い風となった。つまり日本人の勤勉さが日本政府を救った形になる。
今後日本に厳しい交渉課題を突きつけてくるとされるベッセント財務長官だが、実は債務上限問題というもっと大きな敵と戦わなければならない。議会交渉がうまくまとまっていないため5月から6月にも「財政危険領域」に突入するとされている。
アメリカ合衆国ではこれまで何度もこうした局面があったが瀬戸際に政府閉鎖やデフォルトが回避されてきたという経緯がある。しかしながら今回のベッセント財務長官はトランプ大統領という本質的に経済を理解していない大統領を処理しなければならない。アメリカ合衆国にとって本当の敵は中国でも日本の非関税障壁でもない。トランプ大統領なのだ。
このような背景があり株安が債権高を意味しなくなっている。株が高くなれば債権が売られ、安くなっても債権が売られるという「勝ち目がない相場」だ。つまり金融市場では「アメリカ売り」が起きている。