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トランプ関税が最後の一押し 自民党時代の終わり

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石破政権はトランプ関税の恫喝に応じベッセント財務長官との交渉に入った。日本が終わったなとは思わないが「自民党政権は終わったな」と感じた。ベッセント財務長官が補助金(自民党が支持母体をつなぎとめるための資金)を問題視しているからだ。

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自民党はすでに現役世代から見放されつつある。企業と家計を通じた分配構造が崩れつつあるからだ。こうした分配構造からはじき出された人たち(無党派層と呼ばれる)は自民党政治に意味を見出すことができなくなりつつあり、維新や国民民主党などの政党に期待を寄せている。

自民党が生き残るためには地方と企業をこれまで以上に強力につなぎ止めておく必要がある。ベッセント財務長官は「非関税障壁としての補助金」が問題であるとして政府に改革を突きつけることにしている。

本来であれば自民党はシンクタンクを通じて「自分たちの政党を維持するための新しい戦略」を作る必要がある。霞が関は自民党のためのシンクタンクではなく政権政党のためのシンクタンクだし、そもそも国益より省益を優先し、専門外の市場動向も把握していない。

ではシンクタンクなしでも国家経営が破綻しなかったのはどうしてなのだろうか。宮沢自民党税調会長がReHacQに登場し日本の税制がどのように管理されているのかを視聴者に説明している。

宮沢税調会長は大蔵省の出身で宮沢内閣で首席秘書官を勤めていた経歴がある。その後自民党の税制調査会の会長になった。その意思決定の仕組は極めて日本的である。

まず様々な利害関係者たちが宮沢氏らにプレゼンテーションをする。そして平場での議論が行われる。宮沢氏はこれを聞いて「これまでのカンと経験」に基づいて最終決定を下す。とはいえ宮沢氏も「個人的にこれは違うなあ」と思うものはあるそうだ。

このやり方は極めて日本的だ。利害関係者は「言いたいことは言った」が最終的には宮沢さんが決めるので「あなたが決めたからこうなったではないか!」と批判されない。つまり責任回避ができる。

このような構造を中空構造と原局主義いう。天皇はこの中空構造が生み出した独特の権力者で利害から超越した裁定者という位置づけになる。

ここでふと疑問が生じる。宮沢氏は確かにこれまで裁定者として機能してきた。そしてその拠り所は言語化できない(西村博之氏が言語的な説明を求めているが宮沢氏は応じていない)曖昧なものである。

つまり「これまでのカンと経験が役に立たないほど環境が激変すると何が起きるのか」という疑問が生じるのだ。

玉木雄一郎氏は「宮沢税調会長の枠組みでは新しい状況に対応できない」と指摘している。たしかにそれはそのとおりだ。しかしながらそれでも現状維持を求める自民党支持者たちの心を揺らすことはできなかった。

しかしながら、ここに新しい状況が生まれつつある。これがベッセント財務長官である。アメリカ合衆国は中国をある種日本の見せしめにしながら強い交渉を迫ってくるだろう。中には通貨や政府補助金などが含まれている。

ベッセント米財務長官は7日、トランプ米政権の一連の関税政策を巡る対日交渉を主導すると表明した。Xに投稿した。関税だけでなく、通貨問題や政府補助金なども議論する意向を示した。日本は、他国に先駆けて交渉開始の約束を取り付けたが、米政権は非関税障壁を問題視しており、厳しい交渉になりそうだ。

対日交渉、通貨問題も議論 財務長官が主導―米政権(時事通信)

確かに宮沢内閣は1985年に激変するプラザ合意に対応した内閣だった。1974年大蔵省入省の宮沢洋一氏も「これを乗り越えている」ということになる。だが現在の宮沢氏は74歳で4月21日には75歳になる。

問題はおそらく宮沢後ということになる。周りにいる人達は総合的判断ができない。言語化されたマニュアルがないからだ。残るのは支持母体に言われたことを一方的に主張すれば「後は誰かがまとめてくれる」と考えている人たちだけということになり、おそらく新しい環境には適応できない。

官僚もこれまでは「中空的存在がみんなをまとめてくれる」と期待していた。財務省悪玉論が唱えられつつも財務省がなくならないのはそのためだ。財務省と自民党税調は宮沢氏を中心とした責任を取らない中空構造を形成している。一方で各省庁は「誰かが全体をまとめてくれるだろう」と考えて省益しか気にしない。これを原局主義と言っている。アメリカにも似たようなbureaucratic turf warsという概念が存在するようだが、官僚トップは大統領のアポイントメントにより大胆に上書きされる。

ReHacQを見ると、すでに宮沢氏は少数与党状態にかなり苦労していたようだ。自分の頭越しに幹事長合意を結ばれ当惑していたと語っている。公明党が連立に参加し20年ほどで「徐々に安定してきた」誰も責任を取らないという意思決定を新しい環境に合わせて再構築することはおそらく(野党も含めて)誰にもできないだろう。残るのは党の利益・省の利益・支持者の利益だけを考える「源局主義者」だけだからである。

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